第51話
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最近、毎晩よく眠れている。明け方に目が覚めるのだが、二度寝すると、ちょうど午前五時になるのだ。起き出し、キッチンへと向かう。コーヒーを一杯淹れて飲んだ後、食事の準備をする。食べ終わって、洗面所で歯を磨き、顔を洗って支度した。
書斎でパソコンを立ち上げて、キーを叩き出す。いつものことだった。書き物屋だから、原稿を書くのが仕事である。マンネリでもいいから、とにかく事件モノを綴っていく。
月刊誌の連載も並行してやっていて、余裕で書けていた。売れない書き手でも仕事はあるのだ。特に雑誌はいろんな作家が連載などをやっている。個性が集まって面白い。毎月発売されるごとに雑誌社から一冊献本されてくるのだが、捲ると、たくさんの書き手が寄稿しているのが目に留まる。
ネット小説ははかどっていた。一気に三回分ぐらい書く。昔ほどの筆量はないのだが、作品は出来がよくなってきていた。しっかりと力を付けてきている。
一つは俺自身、頑張り屋なのである。注目されてなくても、毎日必ず執筆する。文壇で出世してやろうなどと、あからさまな野望はよもやないのだが、世に作品を送り出し続けている。ある意味、血の滲むような努力だった。ほんの一部の、俺を贔屓にしてくれるファンぐらいにしか分からない事実なのだが……。
文章を書く仕事は慣れれば楽しい。もちろん、他作家の作品と自作は売れ行きが断然違うのだが、気にも留めてない。単にファン層が買っていくだけで、それでも十分ありがたかった。そんなことがずっと続いている。報酬は原稿料ばかりだった。印税はほとんど入ってこなくて……。
昼まで原稿を打った後、パソコンを閉じて、昼食の支度をする。出来上がった料理を食べながら、ゆっくりし始めた。これも人生だ。肝心の運ってものが、俺にはあまりないのだけれど……。(以下次号)




