第44話
44
その日も一日のやることが終わり、午後九時過ぎには眠る。寝つきも、眠りの質もあまりよくない。だが、どうしても午前五時前には目が覚めてしまい、止む無く起き出す。キッチンでコーヒーを一杯淹れて飲み、朝食を作った。通常の朝だ。日曜ではあるのだが……。
食事を取って洗面所に行き、洗面する。顔を洗って髭を剃り、支度した。一日が始まるのが苦痛なのだけれど、やるしかない。書斎へと入っていき、パソコンを立ち上げて、キーを叩き出す。
独りでいることに慣れていた。連日心がモヤモヤして疲れる。だが、不思議と誰かを求めるということがない。原稿は書き綴るのだが、まるで毎日が消化試合だった。もちろん、今すぐ死ぬとかそういった重大事じゃないのだけれど、原稿を書くのも何となく億劫になっていた。
まあ、人間など運命は分からないものだ。常にそう思っている。何かを考える時間が欲しい。本来なら。だが、人は時に追われて生きる動物である。考え込む暇などほぼないと思えた。
その日もネット小説の原稿を三回分書き、メールで入稿する。書きながらも、何かしら気が面白くない。むしゃくしゃしていた。何でこんなに悩まないといけないのだろうと。最近ずっとそうだ。心が絶えず葛藤していて……。
果たして精神科医に俺の心の内が分かるだろうか?昔から思うのだが、医者とか看護師とか臨床心理士など、医学の教科書に書いてある通りにしか言えないので、基本的に無力だ。それに他人に心の内まで覗かれても、奥の奥までは分からない。医療機関にもその点で、限界がある。
気が晴れないまま、時間だけが流れていく。疲労が溜まるばかりだ。鬱状態が続いていて。執筆を切り上げたら、いったん休もう。そう思い、パソコンのキーを叩いていた。感情を整理できないで……。(以下次号)




