第34話
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夜間は眠る。毎日クタクタになっていた。朝は午前五時に目が覚め、起き出してから、キッチンへと向かう。コーヒーを一杯淹れて飲みながら、食事を作った。食べ終わり、片付けなどを済ませてから、洗面所へ入っていく。歯を磨き、顔を洗って髭を剃り、身だしなみを整えた。そして書斎へ行き、パソコンを立ち上げる。
ネットニュースを読み、社会情勢などを一通りチェックした。つまらないことだと思えるのだが、本来的には大事だ。ニュースを読み終えて、いつも見るサイトを一巡してから、ドキュメントを開く。ネット小説に加筆していった。
今城はメールでいろいろ言ってくる。連載中の小説自体、アクセス数が多いようだ。俺も確認している。キーを叩き、原稿を作っていく。単調なのだが、やるしかない。もう十年以上続けているから、すっかり慣れていた。
朝は能率がいい。執筆がはかどる。まあ、いろいろあっても、愚直にやっていた。確かに小説を書くのは難しいことではあるのだが……。それに東部出版だけでなく、他の出版社や雑誌社との仕事もあった。目立って金にはならないのだが、多角的に仕事する。書評も書くのだし……。
食事は基本的に自炊していた。健康には気を遣うのだ。俺自身、まかり間違っても酒に溺れて死ぬようなことはしたくない。オヤジの例がある。まさに最悪だった。落ちようがないのだし……。アルコールを一滴も飲まないのは、飲むと拒絶反応が出るからである。
人間、何が幸せか分からないのだし、俺も仕事面での不幸は気にしてなかった。いくら作品を書いても、同じ文壇の人間たちとタメでやり合うことが出来ない。それが自分にとっては涙ぐましいことだった。
だが、売れないことが案外いいと思えることもある。知名度のある売れっ子の書き手が地獄のように忙しいのは知っていた。そこまでして金儲けしたくない。以前からずっと思っていることなのだが……。
自分のペースで原稿を綴っていく。パソコンのキーを叩きながら……。悩み事は多いのだが、いろいろ考えながらやっていた。絶えず時間が流れていく。もちろん、無駄なこともあった。それも含めて積み上げが人生だ。気の利いたことを書けずに、了の字を入れる作品も多い。だが、それも作家の仕事だ。そう思い、進んでいく。未だに手探りの状態もあるのだけれど……。(以下次号)




