第30話
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午後十時になる前に眠気が来た。歯を磨き、顔を洗ってベッドに潜り込む。疲れていた。すぐに寝入る。夜間や明け方に目が覚めても、また眠った。毎日、疲れ気味である。体がだるい。だが、朝起きてコーヒーを一杯飲めば、目が覚める。
日曜だが、朝食を取った後、洗面を済ませて書斎に入った。パソコンを立ち上げる。そしてネット小説の原稿に取り掛かった。書き進めながら、時折トイレに立つ。十月なのだが、夏の名残は若干あった。少し暑かったので、扇風機を回す。
年中仕事だ。スランプこそなくて、常に原稿を書く。マシーンのキーを叩きながら、作品を打っていった。腱鞘炎などはある。体も重たくて、幾分苦痛があった。もちろん、慣れてはいるのだが、やはり休日は寝床でゆっくり眠っていたいという気になる。
書き物はリズム作りだ。いろいろあっても、とにかく執筆する。自宅だと、緊張感は抜けるのだが、別にいいのだ。パソコンのワードの画面を文字で埋め続ける。十年以上やっているから、作風も出来、だいぶ上達していた。
俺だってプロの書き手である。甘いことは言ってられない。特に締め切りが近付くと、焦りがちになる。普段からしっかり書いていても、油断せずに原稿を作っていく。まあ、いろいろあった。作家と編集者サイドの間で事情のようなものが……。
今城は俺に対し、特に発破は掛けてこないのだが、編集者は基本的に様々なことを作家に伝えてくる。原稿を作品として世に出す場合に、決して妥協し合わない。作家としても、いろいろと伝える。互いにけん制し合うことこそないのだが、意見を出し合う。
人間いろいろ考える。俺も葛藤などがあった。何でもないことでも悩む。それも作品に添えることがあった。人物描写などで反映させながら……。歪な登場人物や情景、背景なども、作家の個性が作り出すものである。そういったことは、分かり過ぎるぐらい十分に分かっていた。何せ場数を踏んでいるからだ。
昼前に執筆が終わり、パソコンを閉じて、ゆっくりし始めた。変わることなく、毎日流れていく。まあ、その変わらなさが俺にはいいのだけれども……。(以下次号)




