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本を書く仕事  作者: 竹仲法順
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第3話

     3

 午後十時になると、自然と眠くなる。就寝まで本を読んでいても、時間になればページを閉じて、ベッドに潜り込んだ。そして午前五時まで、七時間ほど睡眠を取る。いつも続く、健康的なリズムだ。

 日曜の朝起きて、キッチンでコーヒーを一杯淹れ、飲む。まだアイスでもよかったが、秋も深まってくれば、ホットコーヒーになるだろう。琥珀色の液体はリラックス効果がある。ブラックで飲みながら、味わう。

 朝食を食べて洗面し、書斎でパソコンを立ち上げる。午前六時半過ぎ。今から仕事を始めるのだ。ネットでニュースなどを一通りチェックして、作りかけのドキュメントを開き、加筆していく。加田慎司が、俺の本名兼ペンネームだ。アマチュアの頃、奇天烈なペンネームを複数作り、使いながら活動していた。同人誌にいたことがあって、そこで作品を書いていたのである。今から二十年以上前のことだ。やっとワープロの操作を覚え、慣れない感じでキーを叩いていた。

 今でこそ、文章は全部ワープロ打ちなのだが、学生の頃の作文などは手書きだった。どうにも手書きは苦手である。下書きして、後で清書するからだ。それに悪筆で、どうにもよくない。

 その日も十枚ほど原稿を書き、軽く手直ししてデータを保存し、パソコンを閉じた。日々十枚から十五枚ぐらい原稿を綴る。以前と変わらない枚数だった。月三本ぐらいの雑誌連載、それに加え、単行本などの原稿を書く。

 同人誌時代は一日に四十枚ぐらい書いていた時期があった。相当なハイペースである。今はそんなこと、絶対にしない。俺自身、書き手として寡作で、ほとんど欲がないからだ。特にここ三年ぐらいは、書評の仕事などのため、本を読むことが多い。小説家としては目が出ないと思っている。大抵のミステリーは書き尽くしたのだし、後輩作家たちの方が直木賞や他の文学賞を獲って、文壇で出世していた。それはそれで構わない。

 いい意味での諦めも必要だ。所詮、俺の作品が多数の読者に読まれることはない。それに最近、大手出版社から「ネット小説を書きませんか?」といった依頼も来ている。いいと思えた。仮にアクセス数が多ければ、紙・電子問わず、書籍化なども有り得て、幾分金が入ってくる。いろんな手があった。この世界で生きるには。俺にも、もう功名心というのはほとんどないのだけれど……。(以下次号) 


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