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本を書く仕事  作者: 竹仲法順
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第237話

     237

 ウオーキングから帰ってきて、冷水シャワーで汗を流す。入浴後、十分水分補給して、夕食を取った。そして眠る時間まで、録っていたテレビドラマを見、見る番組がなくなると、読書して過ごす。午後九時には眠りに就いた。

 夏の夜は蒸し暑い。扇風機で何とか風を送り、涼む。夜中目が覚めてトイレに行き、また眠った。朝は午前五時に目が覚める。幾分だるいのだが、起き出してキッチンでコーヒーを一杯淹れ、飲んだ。いつもと変わらない朝が訪れる。

 朝食を取って洗面を済ませ、書斎に入った。パソコンを立ち上げてメールボックスを見ると、新刊は無事発売され、今日から市場に出る旨が記されたメールが届いている。差し出された日付は昨日だった。読み終わってから、宣伝を頼む旨、返信文に一言書き添えて送り返した。そしてネット小説の原稿を書き足し始める。新たな仕事依頼が来るまで、この原稿を書くつもりでいた。

 確かに職業作家でも印税じゃ食べれない。芥川賞や直木賞などを受賞した作家で、知名度のある人間は印税収入も潤沢に入ってくるのだろうが、俺のように名の知れてない書き手は著作が売れない。どうしようもないのだ。ひたすら原稿料を稼ぐ。一枚当たり三千円ぐらいでも、一日十枚書けば三万円になる。もちろん、税金でだいぶ持っていかれるのだが、普通のサラリーマンと同じぐらいの収入にはなる。

 俺も地味な書き手は多数知っているのだ。彼ら・彼女らは大抵、昼間は会社に勤めたり、稼ぎのいいバイトなどをしながら、夜だけ書く。それで専業になった人間もいるにはいるのだけれど、結局、作家としては物にならずに終わる場合が多い。才能の問題なのである。苦労の度合いじゃなくて。いくら血の滲むような労苦を重ねても、とてつもない個人の才能には全く勝てない。当たり前といえば当たり前か?それで世の中回ってるからである。ほんの一部の人間の鬼才が業界をけん引するのは、いつでもどんな所でも同じだ。

 俺の新刊など、宣伝しても売れやしないだろうし、決定的な力を持っているわけじゃない。単なる努力の結果でいいのだ。そう思っていた。出版社もしばらくは新聞や雑誌、ネットなどで宣伝してくれるのだろうが、波及効果も一時的なもので、増刷も掛からずに絶版となる。新たな仕事が来るまで、またひと頑張りだった。

 午前中でその日の仕事が終わり、書いた原稿をメールで入稿する。パソコンを閉じて、昼食を取り、ゆっくりし始めた。休憩してから、散歩に出かける。自宅近辺を歩いた。夏の日差しが蒸すように暑い。時折立ち止まり、水を入れて持って来ていたペットボトルに口を付け、飲む。太陽は絶えず照り続けるのだし……。(以下次号)


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