第23話
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日曜の朝も通常通り、午前五時には起き出して、キッチンへと向かう。コーヒーを一杯淹れて飲みながら、朝食を作った。いつも朝はしっかり食べる。一日のスタートだからだ。ご飯と汁物を中心にし、食べ終わってから、歯を磨き、洗面する。そして書斎でパソコンを立ち上げた。ネットニュースを読み、メールのチェックなどを済ませてから、作りかけのドキュメントに加筆していく。
連日疲れていた。体がきつい。朝起きれても、幾分疲労が残っている。だが、毎日原稿を書く。自分にそれを課していた。基本的にしっかりやっているのだ。現実逃避したい時もあるのだが、執筆も慣れれば苦にならない。キーを叩き、原稿を作る。その繰り返しだった。
アルコールは一滴も飲まない。鬱病の薬を服用しているからだ。いろいろあって、精神科にも掛かっている。ドクターからは「体はどこも悪くないから、心の方を安定させましょう」と常々言われていた。
秋の日が過ぎていく。午前中原稿を打った。ネット小説は進んでいる。プロだから、原稿を執筆するスピードは速い。ニーズはそうなくても、書くことは得意なのだ。首都圏を主舞台に据えた推理モノが、俺の作品のメインジャンルなのである。
仕事は増えないのだが、今ぐらいで十分だった。連載の仕事も、単行本の書き下ろしも、おまけに書評なども、今やってる分量ぐらいがちょうどいい。忙しすぎず、暇過ぎずで。
俺自身、多分長寿だろう。日頃から、そう思っていた。何せ体は健康なのだし、本を書いたり、読んだりする人間は自殺などしなければ、自ずと皆長く生きる。それに自分の仕事が認められない人間は、誰よりも業が深い。俺にもそういった要素は十分あった。健康で長寿――、何かと不運な俺の、せめてもの願望のようなものだ。
一病息災と言うだろう。一つぐらい病気を持っている人間が長く生きる。逆に持病もなくて、元気バリバリの人間は早くあの世へと行くのだ。当たり前といえば、当たり前の話なのだが……。
その日も昼前には仕事を終え、昼食を取り、ゆっくりした。疲れていて、軽く午睡した後、録っていたテレビ番組を見る。時間は流れていく。止まることなく。室内では扇風機を回して風を送っていた。まだ少しは夏の名残の熱が残っているのだし……。(以下次号)




