第228話
228
外を歩いた後、自宅マンションに戻り、シャワーを浴びてゆっくりする。夕食を済ませて、録っていたテレビドラマを見たり、読書したりして過ごす。午後九時を回ると、眠気が差してきた。そのままベッドに入る。すぐに寝付き、午前五時には自然と目が覚めた。起き出し、キッチンへと向かう。
コーヒーを一杯淹れて飲み、朝食を作った。朝はしっかり食べる。一日が始まる時だからだ。食事後、歯を磨き、洗顔して書斎へ入っていく。そしてパソコンを立ち上げ、キーを叩き始めた。ネット小説の原稿を執筆する。別に変わったことはない、いつもの朝だ。
誰とも話をしない生活に慣れている。面倒なので、関わりたくないのだ。ずっと独りでいる。何を言うこともなく……。
アル中オヤジのお蔭で、家族は残らず離散した。正直なところ、今更実家に戻るつもりはない。あのボケ老人の相手をすることも、もうないのだ。単にこの部屋で頼まれた原稿を書きながら、細々と暮らすつもりでいる。全ての元凶はアル中オヤジだ。酒を浴びるほど飲み、散々好き放題した輩が家族をぶち壊し、不幸のどん底へと叩き落とした。
時折パソコンから離れ、窓辺から外を見る。頭は疲れていたのだが、神経は冴え渡る。ミステリーはやはり登場人物の息遣いから始まると思う。どれだけ巧緻に人間像を作れるかが、勝負だ。個人的にそう思っていた。
午前中でネット小説の三回分の原稿を書き終え、パソコンを閉じてゆっくりし始める。昼食を食べて、軽く休憩し、散歩に出かけた。外は暖かい。いつものコースを歩く。別に何を考えることもなく、淡々と……。(以下次号)




