第18話
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夜間眠りながらも、中途で目が覚めることがある。幾分睡眠に影響するほど、疲労は溜まっていた。一日のリズムがある。朝から昼間に掛けて原稿を綴るから、夜になると、自ずと眠気が差す。まあ、疲れれば休むのだ。
月曜も午前五時に起きてベッドを出、キッチンへと歩いていく。コーヒーを一杯淹れて飲みながら、目を覚ました。だるいのだが、朝食を取って洗面を済ませたら、パソコンに向かうつもりだ。健康なのである。完全な朝型で。
洗面所で歯を磨き、髭を剃って洗顔した後、書斎へ入っていった。このマンションも住み始めて長い。不便はなかった。単に古い物件で、いくらか設備等が古いだけで……。思う。どこだって、住み慣れればいいところだと。
パソコンをネットに繋ぎ、ネットニュースを一通り見て、午前七時過ぎには執筆し始めた。ネット小説の原稿を綴る。三回分の十二枚はあっという間に書けた。基本的に不調などないのだ。常に書く。普通は作家など、好調やスランプなどの波が激しいのだが、俺自身、そんなことはない。淡々と綴っていく。縦横無尽に想像力を駆使しながら……。
特に気にすることもなく、日々過ぎていく。今になってやっと人生の安定期を得ているような気がする。四十代というのは、実社会で言えば中間管理層だ。何かと悩みがちである。俺だって悩むのだが、懊悩しながらも、上手く受け流せていた。そう気にしてない。案外楽観的なのだ。
昔から耐えるということをしてきた。今でもそれは若干ある。だが、辛いこともいつかは終わるのだ。永遠に続く業苦などない。そう思うと、目の前のことなど、乗り越えるのは容易い。鬱などの精神疾患も、人生を送るための一つの小道具みたいなものだ。深刻に考える必要はない。必ず乗り越えてみせる。そう思っていた。
絶えず創作しながらも、作家というのは今も昔もそう変わらないと思えてくる。皆病気がちで、精神を病みやすいという点で。俺だって稀に深読みし過ぎるところがあるのだ。妄想的で。それが作品に出るのかもしれない。俺の作中の刑事も犯罪者も例外なく、おかしな人間たちである。常軌を逸していて。それが作品の華となるのかもしれない。
ずっとキーを叩く。カツカツカツというキータッチ音だけが響いた。書斎の中で。また妄想が膨らむ。犯罪の街の様子が、鮮やかに脳裏に浮かんで。(以下次号)




