第175話
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外を散歩してきた後、午後三時前には自宅マンションに帰り着き、シャワーを浴びた。そして早めの夕食を取り、ゆっくりし始める。疲れていて、午後九時にはベッドに潜り込んだ。すぐに眠りに就き、真夜中に一度目が覚めて、午前五時には寝床を出る。
キッチンでカフェオレを一杯淹れた。飲みながら、朝食を作る。食べながら、いろいろと考えていたのだが、一日の計画をざっと立てただけで、別に大したことでもない。食事後、洗面し、書斎でパソコンを立ち上げた。新着メールをチェックし、キーを叩いて原稿を作っていく。
いつものように、淡々と書いていった。特に気に掛けることもない。書き掛けの連載原稿に加筆していく。連日街は晴れていて、春の陽気で暖かい。執筆中は眠気が差すことはなかったのだが、疲労の類はある。時折コーヒーを淹れて飲みながら、意識を原稿へと向けた。
日常は変わらない。変わらない方がいいのだ。下手に周りが騒ぐと、プライバシーが喪失される。今ぐらいの量の仕事が来れば、十分食えるのだし、少ない金から貯蓄すら出来ていた。それでいいのである。作家はデリケートな生き物だ。変に逆立てないよう、編集者も気を遣ってくれる。
ネット小説も他の連載も、単行本の原稿の執筆も進む。やるべき仕事はやっていた。責任があるから、尚更大事だ。特に連載は絶対に穴など開けられない。そう思い、気を引き締めて書いていた。
その日も昼前には仕事が終わり、昼食を挟んで午後から散歩に出る。春の街を歩く。ゆっくりと。ペットボトルに入れて持ってきていた水は、時間と共に生温くなる。辺り一帯の気温が上がっている証拠だった。花粉も飛ぶのだし、アレルギーの俺には何かと辛かったのだが……。(以下次号)




