第173話
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午後三時過ぎには外出から帰ってきて、しばらくゆっくりしてから、シャワーを浴びる。そして夕食を取り、午後九時前には眠った。疲れていて、すぐに寝付く。明け方に目が覚めて、一度トイレに立つ。そして午前五時には起き出し、ベッドを出て、キッチンへと向かった。カフェオレを一杯淹れて飲む。
朝食を準備して取った後、洗面して書斎に入った。パソコンを立ち上げて、キーを叩き始める。原稿は出来ていった。常に何かを綴るのだ。ミステリーが本職なのだが、エッセーや書評なども手掛けている。とにかく任された原稿だけは必ず打つ。生活が懸かっているのだし……。
合間にコーヒーを淹れて飲みながら、気分転換する。多少疲れがあっても、原稿は書いていた。別に執筆に苦痛はない。苦痛があったら、文芸作品なんか書けない。いつも頭の中で考えたことをそのまま、パソコンのディスプレイ上に文字として映し出す。作家など、妄想が高じないと出来ない仕事である。もちろん、過度の妄想は危険だったが……。
俺自身、現実から逃げない。確かに目の前の現実は酷だったが、生きている人間は皆そうだろう。真剣に考えれば考えるほど、頭痛の種は増える。だから、受け流す必要があった。俺にはそれが出来ている。考え過ぎないようにしていた。いろいろあるのだから……。
午前中の時間、執筆し、正午前にはパソコンを閉じてゆっくりし始める。また散歩がいいようだった。雨も降ってないのだし、外は暖かい。軽めのリュックに、飲み水を入れた小型のペットボトルを仕舞い込み、担いで歩きながら……。(以下次号)




