第163話
163
散歩から帰り、早めに夕食を取って入浴も済ませた。そして午後九時前には寝付く。すぐに眠りに落ち、翌朝も午前五時には目が覚めた。起き出し、キッチンで牛乳を温め、粉末のコーヒーと砂糖でカフェオレを一杯作る。飲んだ後、朝食を作って食べた。洗面などを済ませて書斎に入る。
パソコンを立ち上げて、作りかけの原稿を開き、キーを叩き出す。何かと疲れていたのだが、通常通り仕事をした。思う。時が経つのが早いと。二月ももうそろそろ終わりで、やがて三月になる。俺も曜日の感覚などはあまりないのだが、時間は管理していた。別に自宅マンションに終日いても、用があるのは大家など、極わずかな人間だけだ。気にしていることは全くない。
それに作家業などという肩書は極力伏せていた。数年前にこの部屋を借りた時も、著述などをやっていると言って、家賃などもきちんと払える旨、事前に説明したら、大家はすぐに貸してくれた。持っていたパソコンやプリンターなどに加え、家財道具一式を入れて、住み始めたのだ。
実家はアル中のオヤジがいて、どうせヘルパーなどを雇っていると思っていたので、あえて何も言わない。俺にとって、所詮家族はどうでもいい代物だったのだ。一切縁がなくて。
昼まで執筆し、原稿を書き終えて、作っていたデータを保存した。パソコンを閉じる。そして自炊し、食事を取った。手や足腰などが痛かったが、傘を差し、午後から散歩に出かける。俺の日常は変わらないのだ。よほど何かが刺し迫らない限り。どうせいずれは少ない金を上手く使って生きていくしかなくなるのだし……。(以下次号)




