第136話
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その日も午後はゆっくり過ごし、早めに食事と入浴を済ませた。疲れはある。体の中に疲労がだいぶ溜まっていた。午後九時にはベッドに潜り込み、アラームをセットして眠る。寝付けない時も、目を瞑っていた。それでやっと眠れるのだ。
翌朝午前五時に起き出し、キッチンへと入っていく。だるかったが、気付けのカフェオレで目を覚まして食事を作った。普段から疲れやすい。心労があるのだ。でも、日中はそんなことを言ってられない。仕事をこなす。淡々と、だが……。
食事後、洗面して書斎に入った。パソコンを立ち上げて、キーを叩き出す。俺の仕事は拘束時間こそ少ないのだが、金にはなる。出版社も雑誌社も原稿を欲しがっているのは分かっていた。キーを叩き続ける。腱鞘炎は治まらない。職業病なのだ。常に腕を使うのだから……。
出版は全作企画で通っていた。自費出版の経験は一度もない。新人賞を獲り、この世界に入ってすぐから、企画出版で本を出し続けている。売れないのだが、わずかに知名度があって、規定の部数は市場に出ていた。
確かに売り上げは極少ない。だが、ミステリー一本で十年以上やってきて、それ相応に出世はしてきた。原稿の執筆依頼は絶えない。むしろここ最近ネット小説など、新たなジャンルでやっている。報酬は少なくても、俺には俺でニーズがあった。それなりに。
昼になると、仕事を終えてパソコンを閉じる。そして昼食を作り、キッチンのテーブルで取った。ゆっくりし始める。日常は回っていて、活動し続けた。食事を取って、書斎で読みかけていた本を手に取り、読み始める。外は寒い。年に一度ぐらいの寒波の影響で。(以下次号)




