第119話
119
その日も午後はゆっくりし続けた。午後五時過ぎに夕食を食べて、その後入浴し、午後九時前にベッドに潜り込む。すぐに眠りに就き、午前五時まで睡眠を取る。熟睡できなくても定時に起きて、一日を始めた。
冷え込むキッチンでカフェオレを一杯淹れて飲む。そして朝食の準備をした。ずっと健康志向だ。特に食事は粗食にしている。美味しいものは何かと味付けが濃く、体に悪い。だから、極力控えていた。食事が済むと、洗面所で洗面し、書斎に入る。年中同じことを続けていた。執筆は仕事であり、習慣だ。四十代に入り、尚更それを強く意識し始めた。
確かに普通の人なら、正月の三箇日ぐらい寝ていてもいいと思うだろう。だが、俺にはそれが出来ない。第一、八時間睡眠が定着している。それ以上眠れない。それに毎日同じことを愚直にこなし続けるのが、人生を成功させ、有意義にするための秘訣だと思っていた。
サラリーマンや公務員などと違い、作家は自由業である。時間の管理は徹底していた。分刻みで動く。常に俺の頭の中には時計があった。無為な時間を過ごさないよう、気を付けている。もちろん、人間はどんなに綿密なスケジュールを立てても、どこかで時間を無駄にするものなのだが……。
執筆は進む。ネット小説も月刊雑誌の連載原稿も書き続けていた。パソコンのキーを叩き、綴っていく。疲れていても、やることはやる。強靭な意志があった。元々初志貫徹型で、一度決めたことは必ず実行する。仕事依頼も引き受けられるだけ、引き受けて。
昼になり、仕事を終えてパソコンを閉じ、キッチンで昼食を作った。そして独りで取る。それから軽く昼寝し、午後の予定をこなす。読む本もたくさんあった。山積み状態で。(以下次号)




