第115話
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その日、大掃除を終えて入浴し、夕食を作った。食べてから、早々と眠る準備をする。冬の夜は寒い。なるだけ早めに休もうと思っていた。早寝に慣れていて、午後九時には眠る。別に無理に起きておくこともない。それに午後八時を過ぎると、自然と辺り一帯が静かになるのだ。夜は寝る時間だった。
翌朝午前五時に起き出し、ベッドを出る。そしてキッチンでカフェオレを一杯淹れ、飲みながら、朝食の準備をした。別に出版社や雑誌社が休みでも、作家には関係ない。連載などがあると、欠かさず原稿を入稿する。穴を開けるわけにいかないからだ。
普通、作家の作品が載る月刊の商業誌などは、俺のように一定の名があっても、売れない輩も大勢いる。多数の書き手がいる中で、出版サイドがいろんな人間を選んでくるのだ。もちろん、俺だって何もせずに仕事を得られるわけじゃない。新人賞受賞経由で作家になった人間でも、自ずと声が掛かることはまずない。出版関係者に、書いた原稿を遠慮なしに読ませる。
食事が終わり、いつも通り午前中原稿を書く。キーを叩き、執筆する。年中変わらない。常に書斎から発信していく。パソコンがないと、入稿どころか、書くことすらできない。確かにIT機器があって仕事が成り立つ時代だ。痛感する。
ネット小説も書き進めていた。だいぶ先の方の分まで入稿しているので、現時点では大丈夫だ。もちろん、労力はだいぶ使うのだけれど……。
昼になると、仕事も終わり、昼食を作った。そしてテーブルで取る。ゆっくりし続けた。誰も出入りしない部屋だが、そこで毎日暮らしている。気にすることなど、何一つない。それに人間社会など、お互い嫌い合えば、自然と距離も開いていく。俺と実家のオヤジのように……。(以下次号)




