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本を書く仕事  作者: 竹仲法順
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第1話

     1

 毎日、午前五時には起きて、キッチンでコーヒーを淹れる。飲んでから、身支度を整えて、書斎へと入っていく。パソコンを立ち上げて、変わらずに原稿の執筆だ。疲れてしまうのだが、ずっとこの仕事を続けていた。

 売れない作家は辛い。部数が出ないからである。印税など、生活費の足しにしかならない。物書きになったのは十一年前だ。中央の出版社主催のミステリーの新人賞を獲り、プロデビューを果たした。だが、現実はきつい。四十代前半で、文壇でも中堅としてやっているのだが、正直なところ、本は売れない。文芸雑誌に連載などを月締めで三本ほど持っていて、ギャラは少ないのだ。

 地方の三十万都市にいて、書斎で仕事する。心労はあった。いろんなことが重なって、だ。もちろん、ここ数日間も変わらずに仕事をこなしていた。夏の暑さも引き、だいぶ涼しい。思う。今ぐらいの生活を維持するなら、これでもいいかなと。

 その日も昼過ぎにキッチンで食事を作って取り、午後からもパソコンに向かった。独り暮らしには慣れている。自炊しているので、月に使う生活費は四万円弱で済んでいた。贅沢などしない。小金を上手く使うことを考えている。

 仕事依頼は電話かメールだ。最近、編集者とのゲラのやり取りは主にネットでやる。以前は郵便だったが、今はメールに添付して送ってもらい、こっちが画面上で弄って送り返す。その繰り返しで小説作品が出来ていた。

 アイスコーヒーの入ったグラスは、中で氷が揺れる。飲みながらパソコンに向かい、キーを叩いていた。普通の会社勤めの四十代などと違い、一際健康的で、一日の仕事を済ませれば、後はテレビか読書になる。そして午後十時過ぎには眠るのだ。朝から昼に掛けて仕事し、余暇は好きなことに打ち込む。そのリズムが続いていた。いつも午後三時前には書き物が終わるのだ。

 新宿歌舞伎町などを舞台に据えたミステリーやハードボイルドを書く。想像力を膨らませて。地方在住だが、書く材料には事欠かない。頭脳をシャープに使い、作品を仕上げていく。その繰り返しが俺のこの十年ほどの積み上げだ。単行本なら初版五千部で、売り切れずに初版止まりのこともある。まあ、俺のような作家ならそんなものだと思いながら……。(以下次号)


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