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心霊怪談百鬼夜行  作者: 八月季七日
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ケース2 村の風習

 これは私の実家のあるS県T市のとある農村で、昔からある風習の話です。


 それはその村の女の子は10歳の誕生日に髪の毛を丸坊主にして、切った髪の毛を桐の箱に入れてとある場所に納めるというものです。


 こういった風習は田舎の村などにはよくあることですが、この風習は少し様子が違います。


 まず、納める場所は古い民家の廃屋。神社やお寺でもなく、もともとは普通の民家のようなところなのです。その中にある居間に仏壇があり、そこには位牌の代わりに何故か草刈り鎌が一本あり、そこに髪の毛の入った桐箱を納めるのです。


 この風習を守らないと、厄災が降りかかると言われています。



 これは母から聞いた、母が子供の頃の話です。


 母の学校に都会から一人の少女が転校してきたそうです。仮にE子とします。


 E子は長く綺麗な黒髪をした少女で、いつも手入れのいき届いた髪を自慢していました。


 彼女が転校してきてから、数か月。彼女は10歳の誕生日を迎えました。村の風習です。


 村の老人たちは彼女に、髪を切るようにいいましたが、彼女はそれを酷く嫌がりました。

そのため、彼女の両親も「村の風習も大事なのはわかりますが、多感な年ごろの女の子です。時代とともに変わっていくべきでは」と、やんわりと風習を断りました。


 老人たちは何度も説得しようとしましたが、彼女たちはそれを受け入れることはありませんでした。



 彼女の誕生日からひと月程経った頃でしょうか。彼女は母に風習について聞いてきたそうです。


「ねぇ? どうしてこの村では坊主にするの? 嫌じゃないの?」

「嫌だけど……しょうがないよ」


 母がそう答えると、E子は不満そうな表情でしたが「何で髪の毛を納めるの?」と風習自体には興味があるのかそんな質問を繰り返したそうです。


 そしてそのうち「廃屋に行ってみたい」と言いだしました。何で髪を切るのか風習の原因について廃屋に何か秘密があると考えたようです。


 母も興味があったのか、クラスの何人かで例の廃屋へ行ってみることになりました。


 小屋へつくと、E子は「ボッロ!」と声に出して率直な感想を漏らします。


「行くわよっ」


 E子はそう言いながら、乱暴にドアを開き廃屋の中へと入って行きました。母たちも慌ててそれに続きます。

 村の大人たちから、風習の時以外はこの家に近づいてはいけないときつく禁止されていたので、母たちはおどおどとしながら民家の中を探索しました。


「あった」


 E子は居間へ入るとすぐに仏壇を見つけました。近寄ると、村の娘たちが納めたであろう桐の箱がたくさんありました。


「なんだ、箱があるだけじゃん」


 E子は適当な箱を手に取り観察しましたが、それは何の変哲もない箱でした。箱を開けると中から髪の毛がバラバラと落ちて床へ散らばりました。


「ぎゃっ」とE子は汚いものでも避けるように飛びのいて、気持ち悪がっています。



「あ、鎌がない」


 E子の後ろから覗き込んでいた母が言いました。


 仏壇には鎌があるはずでした。でも鎌はありません。母はまだ10歳になっていなかったので、他のクラスメイトに視線を向けましたが、他の子たちもここに来たことのある子はいなかったので、もともとなかったのかどうかはわかりませんでした。


 風習を終えた子たちはみんなE子の誘いを断っていましたから、ここに来たのはまだ風習を終えていない子たちだけです。



 ミシッ


 母が不思議がっていると、天井からそんな音がして、みんな上を見上げました。


 ミシッ……ミシッ……ミシッ……


 その音はどうやら二階で誰かが歩ている足音のようでした。


「ヤバいよ、誰かいるみたい」


 クラスメイトの一人が声を顰めてそう言いました。


「逃げよう」


 母たちは、怒られると慌てて家から出ましたが、E子はあまり危機感を感じていないようで、悠々と最後に玄関へと出てきました。


「あ~あ、つまらない、何もなかったじゃない」


 玄関の戸の前でガッカリした表情でそう言ったE子を、母たちは真っ青な表情で見ました。


 正確にはE子ではなく、その後ろ、少しだけ開いた戸から覗く、青白く、ガリガリの姿をした女。その女はボサボサの長い髪を巻き散らし、戸の隙間からにゅっと手を伸ばしてE子の長い髪を掴みました。


「きゃぁ! 痛いっ!」


 E子はそのまま引きずり倒され、あっと言う間に女に鎌で喉を掻き切られて死にました。


 血しぶきが周囲に撒き散り、ムワッとした濃厚な血の匂いが漂ってきています。


 母たちは我に返ると叫び声をあげてその場から逃げだしました。一番近くにあった村の家に飛び込み、このことを伝えましたが、その家の人はあまり驚いた様子を見せず。


「風習を守らんからだ」とただ一言言ってからどこかに電話をかけました。


 暫くの後、子供たちの親が迎えに来て、母たちは酷く叱られたそうです。E子のことを必死に伝えるも、親たちは困った顔をするだけで慌てるそぶりもありません。何かを諦めている。そんな感じだったそうです。


 翌日、学校に来てもE子はいませんでした。夢ではなかった。母はショックを受けて暫く学校を休んだそうです。


 数日後、E子の葬式が開かれたました。E子が何で死んだのかは大人たちの誰からも語られることはありませんでしたが、このことが事件として取り扱われることもありませんでした。



私が母から聞いた話はこれで終わりです。




 私も10歳のときに髪を丸坊主にして、あの民家へと納めました。


 今年は娘が10歳になります。正直私は母の話は風習を守らせるための作り話だと思っているので、娘に風習をやらせるか迷っています。娘は髪を坊主にするのを嫌がっていますし、私はどうしたらいいのでしょうか。可哀想で少し悩んでいます。





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