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心霊怪談百鬼夜行  作者: 八月季七日
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ケース8 神社の木

 これは、私が小学生のころに体験した出来事です。

 私の家の近くには小さいですが、古くからある神社がありました。夏祭りなどを行うような神社ではなく。神主さんが一人だけいて敷地内を掃除しているくらいで、別にお守りとかも売ってない。そんな小さな神社でした。

 当時、私の学校では壁新聞を当番制で作っていて、私の番が回ってきていました。友人のPにどんな内容にしたらいいか相談した時に、その神社の話が出てきたのです。


「あの神社って、何を祭っているか知ってるか?」

「さぁ?」

「実は、誰も知らないらしいんだよ」


 Pは勿体ぶってそんな言い方をしていました。祭られているのが何かなんて知られていない神社は結構あるのではないでしょうか。僕はPが何を言いたいのか分からずに「はぁ? それで?」と返しました。


「物わかりの悪い奴だな。いいか? 何を祭っているかなんて、神主さんに聞けばわかる話だけど、誰も知らないってキャッチフレーズが大事なんだよ」

「つまり?」

「誰も知らないミステリーを調査して暴きました! ってな感じで壁新聞にするの! うけるぜこれは!」


 なるほどと思いました。Pは小学生にしては発想力のある奴で、彼の作る壁新聞はいつも人気でした。下らないないようでも、読んでいて面白いそんな新聞を作るのです。Pが言うには答えを得るのは簡単だけど、過程を苦労しましたって感じで作ると簡単に面白い話が作れるらしいです。


 私たちはさっそくその日の放課後に、例の神社へと行きました。学校が終わってから行ったので、時間はもう夕暮れ時でした。


「あれ~? 今日は誰もいないのかな?」


 私たちは狭い神社の境内をぐるりと回って探しましたが、その日は神主さんがいないようでした。


「どうする? 何を祭っているの聞けないけど?」

「しょうがない。それは明日にして、神社自体の取材を先にしようぜ」


 そう言うと、Pは自分のカバンから子供用のポラロイドカメラを取り出しました。玩具みたいな奴で、小さな写真がその場で作れるやつです。


 Pはそれで境内の中を色々取って回りました。しばらくした後、Pは神社の裏手で一本の木にカメラを向けて足を止めました。


「この木って御神木ってやつかな?」


 Pが指すその木には古くボロボロになって千切れかけているしめ縄のような物が巻きついていました。


「どうだろう? 手入れはされてないみたいだけど?」

「ちょっと調べてみようぜ」


 Pはそう言うと、その木をベタベタと触り始めました。


「やめようよ。怒られるよ」


私はそう言ってPを止めようとしましたが、Pは私の言葉など聞こえないほど夢中になっているようで、木を調べるのを止めません。そのうちに、Pは何を考えたのか木の幹をガリガリと手で削り出したのです。木は腐っているようで、ボロボロと幹が禿げて行きました。


「な、なにやってるんだよ!」


 私はこれ以上やったら確実に怒られると思い、Pの腕を掴みました。


「ひっ!」


 掴んだPの手は、爪が剥がれ、血が滴っていたのです。


「放せっ!」


 Pは私の手を振り払い、再び木を削り出しました。


私はその必死な姿に恐怖を感じて、Pから少し離れてPの行為をただ黙って見ていました。怖くて止めることもできなかったのですが、Pを残して逃げ帰ることもできずにただPの姿を見ていました。


ぶちっ


 そんな音が聞こえ、しめ縄がPによって千切られていました。もう無茶苦茶でした。木をボロボロにして、しめ縄まで切ってしまって。怒られるだけで済めばいい方でしょう。


 そんなことをぼんやり考えていた時です。木から黒い影がわさっと溢れてきました。それは液体が木から湧き出るように、出てきたのです。


 黒い影はPの体を覆い尽くしてワサワサと蠢いています。Pはどうしたのか棒立ちで、ピクリとも動きません。


夕日に照らされたその姿を見て、私は声をなくしました。その影の正体は、何千何万という数のゴキブリでした。


 私はどうしたらいいのか分からずに、その場で立ちつくしていると、木から白いものが一つ出てきました。


 それは真っ白いゴキブリです。


 そのゴキブリはPの体を這い上がっていくと、口の中に入って行きました。


 そしてPの目がギョロリと動き、私を見ました。


『助けてくれて、ありがとう』


 Pの口からPではない声でそう聞こえました。


 私は必至でその場から逃げました。



 次の日から数日、Pは学校に来ませんでした。先生の話では風邪とのことです。

 数日後、Pが学校に来たので、私はPに声をかけました。逃げてしまってごめんと謝りたかったのです。


 Pは私をみてニタリを嗤いました。


『出してくれてありがとう』


 私はそれから二度とPには話しかけませんでした。だってそれはもうPではない何かだったから。




800PV越えました。

ありがとうございます。


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