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心霊怪談百鬼夜行  作者: 八月季七日
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ケース7 赤い女

 これは私の友人の友人が体験したという話です。


 その日彼女は、深夜にコンビニに買い物に出かけました。普段は夜遅くに出歩くは怖いので深夜の外出は控えるようにしていたのですが、その日はなぜが無性にアイスが食べたくなり気がついたら家を出ていたそうです。


 コンビニへ行く途中、彼女はふとアパートの一室に目が止まりました。そこには真っ赤なコートを着た女性が立っていました。

 アパートの薄明りに照らされて、真っ赤なコートが一際映えていました。


 彼女は少し気になりつつも、そのままコンビニへと行きました。コンビニで買い物を済ませ、その帰り道です。


 赤いコートの女性はまだいました。


 しかし、今度はアパートから何件か先の別の家の玄関の前に佇んでいたのです。


何をしているんだろう。彼女は気になりました。こんな夜中に訪問販売でもなしに、点々と人の家を回るなどおかしなことです。


彼女は、好奇心から物陰に隠れて暫く様子を窺うことにしました。


 それから5分ほどたった頃でしょうか、赤いコートの女はゆっくりと歩き出し、また別の家の玄関の前に立ちました。それを何軒も何軒も繰り返しているのです。


 彼女も流石にその異常な行動に好奇心より恐怖が勝ってきました。


もう、帰ろう……そう彼女が思った時です。赤いコートを着た女がまた歩き出しました。道の角を曲がり、数件行った先の家の玄関の前に立っています。


 彼女は叫びそうになる口を手で必死に抑えて物陰に隠れました。


 私の家だ。


 そう、赤いコートの女は、彼女の家の玄関前に立っていたのです。言い知れない恐怖が彼女を襲いました。


 早く行け! どっか行け! 早く! 早く!


 彼女は必死に祈りました。


 どれだけ時間が経ったでしょう。彼女が物陰から顔を出して確認すると、もう既に赤いコートの女はいなくなっていました。周囲の家の玄関前を見ても、あの女の姿はありませんでした。


 よかったどこか別の家に行ったんだ。


 彼女は安堵しました。物陰から出て、自宅の玄関まで来ます。何をしていたんだろう。ふとそう思い、玄関のドアを見ます。玄関のドアには何か赤い色をした跡のようなものがついていました。


 早く家に入ろうと、鍵を取り出して慌てて鍵穴に刺そうとして落としてしまいました。鍵を拾おうと、手を伸ばすと、鍵の横に何かが落ちています。


 よく見ると、真っ赤な血でマニキュアのように色付いた、人の生爪でした。


 「ひっ」っと小さく悲鳴を上げ、鍵を掴むとドアを急いで開け、慌てて家へと飛び込みました。鍵を閉めようと、振り返ると……





 ゆっくりと閉まるドアの向こう側に赤いコートを着た女が立っていました。


『やっと――入れた』


 最後にそんな声を聞いた気がしたそうです。




 彼女は翌朝、玄関で倒れているところを御両親に発見されました。外傷などはなく、命にも別状はなかったそうですが、精神に異常をきたしてしまっており、今でも半笑いで泣きながら赤い女の話を繰り返しているそうです。


 この話は、そんな彼女の話を友人が聞きとり、まとめたものだそうです。



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