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Survivors War  作者: ノイジー
第二部
5/23

初めてのフレンド

「ぜぇ~はぁ~ぜぇ~」

 何とか夜になる寸前で町まで辿り着いた俺は生きてきた中で1番盛大に息を整えている。町に着く最後の最後でモンスターがポップしまくるもんだから脱兎のごとく逃げ去ったのは多分死ぬまで忘れられないと思う。

 町の明りに夜だというのにノイを負ぶさる俺の影が薄く映っている。

「カナメさん大丈夫ですか?」

「しん……ぱい、す……るなら……ぜぇ……お、りろ」

「了解で~す」

 軽快な言葉と共にノイは俺の背中から飛び退いた。足腰がガクガクと笑いっぱなしの俺にとってはたったこれくらいの衝撃でも身体を地面に倒させるには十分だった。

「だらしがないですね~」

 こいつは後で絶対シメてやる。

「はぁ~よっこらせっと」

 大分身体の疲れが取れてきた。Survivors Warではこういった激しい運動を長く続けれるために体力値なるものがある。これを上げれば戦闘中に激しい運動を長く続けれることが出来たりと自然と上げなくてはならないものになる。

「あら、もう回復しちゃーーいたたたたほっへふねらふぁいふぇ~!!」

「何言ってるのか分からない。よってこのまま続けます」

 こいつ途中で絶対治ってたもんな。足をバタバタさせながらキャッキャッはしゃいでたし。

 暫く抓ってるとごめんなさいらしき言葉が聞えてきたので話してやった。頬っぺた柔らかかったです。

「う~女の子に何するんですか!」

「黙らっしゃい」

 追加ででこピンしてやるとノイの瞳にまた大きな涙が溜まり始める。なんだろう……俺の中に眠ってるSの本性が表に出そう。

「さて、俺はクエストでも受けてくるかな」

「あっ、クエストって何ですか?」

 あくまで俺の中限定でだが打たれ強さと立ち直りが早いノイが歩き出した俺の隣に来て肩を並べた。

「クエストってのは簡単に言えば依頼だ。攻略のついでにアイテム回収とか討伐をしてお金やレアアイテムを受け取ることが出来るんだ」

 広場に大きな存在感でどっしり構えているギルドハウス。ここでクエストの受注が出来て、完了後ここに報酬をもらいにくる。

 酒場にあるような観音扉を開けると年季が入っているのか扉が軋む音が鳴りそれを聞いた皆の視線が俺とノイに注がれた。

 ノイは少し怖いのか俺の背中に隠れてしまったがノイの姿を見たプレイヤーの目つきと視線が変わったのを俺は見逃さなかった。

「ノイ、俺から離れるなよ?」

「大丈夫です。こんな怖いところで離れるほど私はバカじゃありません」

 強がってはいるがノイの手は俺の裾口を強く握り締めていて若干震えていた。 一刻も早くここを出てやろうとやや速足でNPCが座っているカウンターへ向かう。

「いらっしゃませ本日はどのようなご要件ですか?」

「クエストを受けたい」

「かしこまりました。今あなたが受けられるクエストはこちらになります」

 目の前にウィンドウが出て3つのクエストが説明文と一緒に書かれてある。上からゴブリン5体の討伐、ゴブリンの牙を3つ納入、ペインスパイダー3体の討伐。ゴブリンは最初に倒したしペインスパイダーは多分ノイが苦戦してた蜘蛛さんのことだろう。

 同時に受けられるクエストは3つまで、多くクエストを成功させるとランクが上がってそれに伴い増えていく。

「ねぇ彼女~」

 俺がクエスト受注を終わらせると同時にいかにも女で遊んでる雰囲気をプンプン臭わす20歳くらいの若い男がノイをナンパしにきた。ノイは完全に怯えきっていて俺をチャラ男の壁にして隠れる。

「あ? 何お前、その子の何なの?」

「教育役として付き合ってる者だけど?」

「あっそ、じゃあお前もう用済みな。今から俺がその子の教育係だから」

 俺を退けようとチャラ男の手が肩に伸びてくる。だが俺はその手を裏拳で弾いて阻止する。その行為に1番驚いていたのはチャラ男でもノイでも周りにいた傍観者でもない、この俺だ。

 本当は穏便に済ませようと思って手を止めるつもりだったのに、気が付いたら裏拳を放っていた。

 えっ、どうしたの俺の右手、いつの間に脳の命令無視出来るようになったんだよ。お母さんそんな右手に育てた覚えありませんよ!?

「あっ」

 我に返ってみるとチャラ男は目を血走らせて俺を睨んでいた。

「お前、俺に喧嘩売ってんの?」

「い、いやそのこれは手がかーー」

「上等だこら! 表出ろPvPで格の違いを見せてやる!」

 お願いだから俺にセリフを最後まで言わせてくれ~!!

 首根っこを掴まれてズルズルとギルドハウスから広場に出されてゴミのように投げ捨てられる。尻餅を付いた俺の目の前にウィンドウが開かれる。

『タクミからPvPを申し込まれました決闘を受けますか?』

《YES》《NO》

「……はぁ」

 面倒だがこれを受けないと今以上に面倒なことになりそうな予感がしたので俺はしかたなく《YES》のボタンを押ーー

「えいっ」

『PvPを拒否しました』

「は?」

「よしっ」

「いやよしじゃねぇよ! 何してるんですかノイさんや!」

 後ろからにょいっと伸びてきたのはノイの手。そして迷うことなく《NO》を押していた。てか他の人でも操作できるのかよ。

「私はカナメさんじゃないと嫌です。特にあなたのようなチャラチャラした人なんかには死んでも教わりたくありません!」

 ビシッとチャラ男に指を指して堂々としているように見えるがよく見ると足が密かに震えていた。

 俺のためか自分のためか、その真意を知る手段を持っていないが、少なくともノイが恐怖を押し殺してまで意見しているのだ。こんな強い子を見捨てるのは……男が廃るってもんだろ。

「このあま、人が優しくしてりゃいい気になーー」

 チャラ男の言葉をPvPを申し込むことによって強制的に切る。

「ほら受けろよ。それとも俺が怖いか?」

 安い安い、スーパーのタイムセールより安い挑発。だけど頭に血が昇っている今のチャラ男改めタクミには十分過ぎる着火剤となってくれた。

「俺を怒らせたこと……後悔させてやる」

 タクミは余程自信があるのかニンマリと笑ってから《YES》のボタンを押した。すると数M上に30と表示された電子タイマーが現れてカウントダウンを始め、半透明なバリアが俺とタクミの真ん中辺りからドーム状に広がった。

「ほら、ノイは危ねぇから離れとーー」

「何であんなバカな人の決闘なんて受けたんですか!」

 俺の目を見つめながらノイは怒鳴った。その瞳に宿っているのは怒りと不安の色、この時さっきのは俺を心配しての発言だったことなのだと知る。

「お前が頑張ったのに、俺が頑張らなかったら駄目だろ?」

「だからって!」

「あ~もう、文句なら後でちゃんと聞くから今は勝負に集中させてくれ」

 カウントは既に10秒を切っている。それを確認したノイは渋々ながらドームの外に出てくれた。

「ルール確認はいらねぇよな?」

「安心しろ。直ぐにお前のHPが0になるからルールなんざ関係ねぇよ」

 カウントは残り5秒。

 シンっと静まりかえる中決闘開始を知らせるブザーの音がけたたましく鳴り響く。

「食らえ!」

 タクミの装備は近距離も遠距離も対処出来る鉤爪付きのボウガン、相性は正直あまり良いとは言えない。俺も魔法で遠距離攻撃が出来ると言ってもMPには限りがあるし、使用直後の硬直を考えると本職には到底敵わない。

 放たれた矢をかわしながら俺は作戦を練る。

「ほれほれほれ!」

 腕にはめられたボウガンは腕を振ると次の矢が自動装填されるらしく攻撃間隔が狭くてとてもじゃないけど突っ込む余裕はない。それに俺はレベルが7だが得たスキルポイントを振り分けてないので実質レベルは1のままだ。

 矢をかわし、かわしきれないものはブレードで弾きながら何とかノーダメージを続ける。

 防戦一方な状態が数分ほど続いた頃、とうとうタクミは痺れを切らしたのか矢を放ちながらこちらへダッシュしてくる。

 鉤爪が振り下ろされそれをブレードでガード。間髪入れずに足払いが飛んでくるが腰を落としてただの蹴りに降格させる。

 接近戦ではまだ俺に分があるらしくジリジリとタクミを押し返していく。

「ちぃ!」

 再び自分の有利な流れに変えようと小さくジャンプしてドロップキックを放つ。鉤爪からの圧力がなくなり余裕が出来たブレードで何とかガードするが勢いが強く、態勢を崩しながら2歩3歩と後ずさるのを余儀なくされる。

「ーーッ!?」

「カナメさん!!」

 後ずさっている最中、俺は胸に衝撃を感じ見てみると俺の胸に深々と矢が刺さっていた。矢を打った人物など決まっている。タクミは俺が態勢を立て直すより早く受け身をとって俺にボウガンを放っていたのだ。

「ぐぅ……」

 モンスターへの致命傷攻撃は一発でHPを0にしてしまうがプレイヤーへのそれはHPを半分にまで減らすだけとなっている。そのお陰でゲームオーバーにはならなかったが胸に強烈な痛みが走り片膝を着く。

「カナメさん! カナメさん!」

 バリアの外からノイの声が聞こえる。

「はははっ、無様だな!」

 タクミがゆっくり歩み寄ってきて俺の頭にボウガンを押し当てる。

「よくもまぁ俺をコケにしてくれたなぁ……」

 更に押し付けられるボウガンには動いたら打つと無言の圧力が掛かっていて俺は身動き出来ずにいる。

「カナメさん!!」

「うるせぇぞ女! お前は後でゆっくり味わってやるから覚悟しとけ!」

 俯いている俺にはタクミの顔は見えないが下衆のような笑みを浮べているのは容易に想像出来た。

「おっと、姑息にも制限時間なんか付けてるじゃねぇか。もうちょっと遊びたかったんだけど残念だ」

 スキルの差があるのは分かっていたので5minutes制度にしたのがバレてしまったようだ。

「ははは」

「どうした、ゲームオーバーになるのがそんなに嬉しいか?」

「あぁ嬉しいねぇ。笑いが止まらねぇよ」

 顔を上げて俺は笑い続ける。だがもう勝ちを確信しているタクミは焦らずボウガンを眉間に押し当て直す。

「イカれた野郎だ。10秒を切ったしカウントダウンしてやるよ。7、6、5」

 口にする数字が小さくなるにつれてタクミの口角は上がり笑みを作っていく。

「4、3、2」

 握りに違和感を覚えたのかタクミはボウガンを握り直し、鉄がこすれる甲高い音を鳴らす。

「1!」

「おらぁ!」

 矢が放たれるまさにその瞬間、俺はブレードで円を描くように大きく振りボウガンを握るタクミの右腕を切断。落ちた腕が無機質な音を鳴らし、心の奥底からゲームとはいえ人の腕を切り落としたことによる嫌悪感を抱かずにはいられなかった。

 それと同時にPvPの終わりを告げるブザーがはやりけたたましく鳴る。

 立ち上がる俺、腕を切られたタクミはというと切り口に手を当てながら呻き声を上げて俺を睨み付けている。

 残念なことに俺は恐怖も畏怖も感じない、今心を支配しているのは無事にPvPを終えられた安堵感だけだった。

「ちっ、最後の悪足掻きってか? だが俺の勝ちは覆らないぞ!」

「ん~あれ見たら結果ぐらいバカなお前でも分かるだろ」

 俺が指さす方を向くタクミ、その表情には自信が満ち溢れている。

「ーーなっ!?」

 しかしその表情は驚きの形で凍り付いてしまう。

 《WINNER Kaname》

 凍り付くといっても数秒だけ、自分が見た光景に納得していないタクミは再生した右手で俺の胸ぐらを掴んで、頭突きするのかと錯覚するほどの勢いで顔を接近させる。

「お前イカサマしやがったな!」

「はぁ?」

 何を言い出すかと思えばこれだけのギャラリーがいると分かっていてのいちゃもんだった。

「お前らも見たよなぁ! こいつは致命傷攻撃を受けた、それに対し俺は腕を切り落とされただけだ! ダメージが少なくないとはいえ俺が負けるなんておかしいだろ!」

 周りに同意を求めるタクミだが、ギャラリーから賛同の声は一言も上がる気配はない。それどころか皆の視線には嫌悪と拒絶の色が滲み出ていた。

「な、何なんだよてめぇら!」

「諦めろ」

 まだ足掻こうとするタクミに嫌気が挿した俺は冷めた声で言う。

「皆お前の本性を知って理解したんだよ。お前を擁護したって何も徳をしないってな」

 その言葉に我慢の限界を超えたタクミは俺の頬に拳をめり込ませた。俺は敢えてそれを受けて吹っ飛ばされた。

「カナメさん!」

 今まで静かだったノイが慌てて俺の下に走り寄ってきた。 そして勢いそのままに倒れてる俺に抱き着いてきた。よけることも出来ずに俺はしかたなくノイを受け止める。

「バカ! バカですよカナメさんは!」

 頑張ったやつに対してバカとは中々キツイ言葉だが今回は俺が突っ走り過ぎたので何も言い返せない。

「カナメさんがやられたら誰が私の教育係してくれるんですか!」

「はいはい、ごめんなさい」

 わざとふざけた言い方で謝る。そうしないとノイは間違いなく泣いてしまう。泣いたって良いことなんて起こりやしない、死んだ母さんから嫌と言うほど学んだ。だから俺はもちろんせめて俺の目が届く人の涙くらいは流さないように努めている。

「人が心配してるっていうのに!」

「はっはっは~」

 そう、そうやって明るくしてろ。そうすりゃ嫌なことなんて直ぐに忘れちまうさ。

「おい」

 と、折角ノイとバカ騒ぎしている中に水を指す人がって言わなくても分かるか。

「俺ともう1回PvPしろ。てめぇのイカサマを今度こそ見破ってやる」

 諦めの悪いやつだ。そんなんじゃ女の子にモテないって誰かが言ってたぞ。誰かは知らないけど。

「そうだなぁ、してやらなくもないんだけど」

 腕の中のノイがものすんごい睨んでいるようだけどスルーする。

「それはお前がまたログイン出来るようになってからな」

 タクミの身体が少しだが薄くなり始めている。町の中、もうちょっと詳しく言えばHPバーが表示されない場所で人に殴る蹴るなどの暴力を振るうとそのプレイヤーは強制ログアウトと1週間のログイン不可、更に手持ちと預けているアイテムが被害者に強制譲渡のペナルティが課せられる。

「くそっ、カナメだったな。お前の名前と顔は覚えたからな! お前がどれだけレベルを上げてどんな場所に行ったって必ず俺が殺してやる!!」

 その言葉を最後にタクミの姿は消滅した。

「……はぁ」

 緊張の糸がほどけた俺は目を瞑りながらその場に大の字になって寝転ぶ。

 まさかあいつがあそこまでプライドが高いとは、これはあいつのいない内にレベルアップしまくるか?

「カナメさん、カナメさんってば!」

「だぁ~~何だよ! 俺はこれからのことを考えてるん……だ、よ?」

 あ、あの皆様なんで俺を中心に囲んでいらっしゃるのでしょうか? 目が凄いキラキラしていらっしゃいますが?

 俺を中心に人の壁が出来ている。逃げようにも前も左右も後ろまで人で一杯だ。

「なぁ、あんたはこのゲーム初めてなのか?」

「いや当たり前だろ、サービス開始は21時からだったんだーー」

「じゃあ初めてであの動きをしたのか!?」

「ま、まぁそうなるけーー」

「頼む俺に色々教えてくれ!」

「何言ってる俺が先に決まってるだろ!」

「バカ言え俺だ!」

 うるさすぎて全てを聞き取ることは出来ないが、まとめると俺に戦闘のテクニックを教えてくれと言っているようだ。

 別に教えること自体はやぶさかでもないのだが、いかんせん人数が多すぎる軽く2,30人はいるだろう。これだけの人に一々教えてたんじゃ俺が出遅れちまう。それだけはゲーマーの意地が許さない。

「おいノイ」

 こそこそと皆に聞こえないくらいの声量でノイに話し掛ける。

「何ですか?」

「今からお前を抱いてホテルの部屋まで行くから暴れるなよ?」

「へっ? 何言っきゃぁぁ!」

 悲鳴を上げてはしまったが言い付け通り暴れはしないノイをお姫様抱っこしながら人の上を飛び越えてホテルにダッシュする。

「あっ、待ってくれ!」

「逃がすな追え!」

 俺を追いかけてくる人達、だが俺の方が一歩早かったようでホテルの扉を開けて一目散にノイが借りている部屋に駆け込んだ。

 部屋と外部は完全に視覚的きにも聴覚的にも遮断されているので聞こえはしないが、多分ドアの前にはまだ人が残っていると思われる。

「ふふっ、人気者ですね」

「止めてくれ、人前がどうこうってわけじゃないけど人気者になるつもりは毛頭ない」

 ノイをベッドに座らせてベッドの上に寝転んだ。やっぱり安物なのか木が軋む音が鳴った。

「そう言えば、何であの時自分から決闘を申し込んだんですか?」

「何でってそりゃ」

 純粋に疑問だと瞳で語りながら俺の顔を覗き込むノイ、俺は自分の行動理由が恥ずかしくなってソッポを向いた。

「何となくだよ……」

「え~本当ですか~?」

 嘘だと完全にバレているようなのでもう正直に話して楽になろうと再び口を開く。

「お前が、嫌がるだろうと思って……だから、あんなやつに引き渡すくらいなら俺が教えてやろうって思った」

「……………」

 だぁ何で黙るんだ! そこはキモいとかでもいいからリアクションしてくれないとただ単に俺が恥ずかしい思いしただけになっちまうだろうが!

「あの、ノイさんんぐっ!?」

「黙ってください見ないでください息しないでください」

 ノイの小さな手が俺の口と目を覆う。目の前は真っ暗だけど感覚でノイが馬乗りしているのが分かる。と言うか口どころか鼻も軽く封鎖されてるんだよね! おまけにノイのお尻が丁度鳩尾辺りに乗っかってるから普通に苦しい。

「んん~! んん~!」

 ※ノイ~! 死ぬ~!

「う、うるさいです!」

 いやホントそんなこと言ってる場合じゃないんだよ!!

「うがぁ~!!」

「きゃあ!」

 三途の川が見えて向こう岸に母さんの姿を確認した俺は慌ててもう全力疾走でこの世に走り、馬乗りになっているノイがベッドから落ちないよう抱きながら右に回転した。

「お前俺を殺す気か! もうちょっとであの世行きの船に乗るとこ……ろ」

「うぅ」

 覆いかぶさる形になってしまった俺。だけど今はそれ以上の問題がある詳しく言うと俺に覆い被さられてるノイだ。

「お前」

「み、見ないでください!」

 ノイの頬はリンゴにも負けないくらい紅く染まっている。息は若干荒く必死に顔を隠し始めるのだが耳まで紅いのであんまり意味はない。

「照れてるのか?」

「…………」

「だんまりは肯定と取るぞ?」

「だってぇ、あんな漫画みたいなセリフいざ自分が言われてみると息が出来なくなるくらい緊張しちゃって、もぉ、恥ずかしいから言わせないでください」

 ノイと出会ってからまだ数時間の関係だけど今目の前にいるノイは多分これから一生見るどんなノイより女として見てしまうほどの破壊力を持っていた。

「……さて、スキルの分配でもするか」

「ってちょぉぉぉい! このタイミングですることですか!?」

 ノイの言葉を無視して背を向けながらメニューウィンドウを開く。今は絶対にノイの顔を覗けない、覗いたら多分、そのまま自分を抑えきれなくなる。

 メニューウィンドウを開くまではいいがそこから全く指は動かない。それもそうだ、スキルなんて分配するほどまだ溜まってない。ノイに背を向けるための口実に過ぎないのだから。

「カナメさ~ん、手が動いてないですよ~?」

「い、今からするんだよ」

 取り敢えず誤魔化すために適当にボタンを押す。すると後ろからピコーンと機械音が聞こえた。

「ふぇ? フレンド申請されました?」

「何ぃ!?」

 慌てて自分のメニューウィンドウに目を遣るとノイにフレンド申請をしていた。をい俺の右手、お前はいつ親離れならぬ脳離れして自立してしまったんだ?

「カナメさん、フレンドに登録するとどんなことがあるんですか?」

「え、えっと、フレンドがいる場所が分かったりメッセージを送れたりってくらーー」

「迷いなくYES」

「って何度も言うけど最後まで言わせろよ!」

「何がですか、それだけあれば十分でしょ。それともなんですかカナメさんは自分から申請しといて私とフレンドになるのが嫌なんですか?」

「うぐ」

 そう言われるとこちらとしてはぐうの音も出ない。

「あ~もう勝手にしてくれ!」

「へへぇ~言われなくても勝手にしますよぉ~だ」

 盛大な溜息を吐くとメッセージの知らせる音が鳴る。

『これからもよろしくお願いしますね。カナメさん』

「はいはい、よろしくねぇ~」

「ちょっと! そこはメッセージで送るもんでしょ!?」

 ノイが猿のごとく「キー!」と喚いている。7月24日。いや、日付は変わってるから25日かーー

 うるさくてとっても可愛いフレンドが出来ました。

今日から夏休みの宿題を終わらせなきゃ行けないので更新が止まります。

20からは学校が始まってしまうので更新が遅れがちになってしまいますが早いめの更新を目指すので見放さないでくれたら嬉しいです。

引き続きコメント待ってま~す(^^ノシ

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