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驚くように瞬いた尾崎さんの目に、うっかり口を滑らせたことに気が付いた。今度は私の方がバツの悪い顔になる。
「そういえばさっきから、10年とか何とか」
そんな私を見て、尾崎さんはにやりと笑った。
ああ、もう、こういうところばかり鋭いんだから。
「もしかして俺って、由加里の初恋?」
「知りませえん」
ああ、なんだかすごく恥ずかしい。
ばさりと毛布をかぶった私に、そっと尾崎さんが声をかける。
「ゆーかーり?」
「もう寝ます。帰ってください」
「冗談」
少し乱暴にはぎ取られた毛布は、わざわざ絨毯の上に放りだされた。ベッドの上に残るのは、生まれたままの姿の二人(+ネックレス)。
尾崎さんの瞳に、また欲情の灯がともる。
「10年も待たせたお詫びは、きっちりしなけりゃね。明日の朝までは、まだたっぷりと時間があるから……」
「私だけですの?」
「ん?」
「待っていたのは、私だけですの?」
その言葉に、尾崎さんの瞳が少しだけ凪いだ。
「……まいったな」
「尾崎さん?」
「時々、由加里が俺より一回りも下だって忘れそうになる」
「生意気ってことですかあ?」
「かもな。やっぱり、お前意外に俺のパートナーにふさわしい女はいないよ」
くつくつと笑いながら、目を見開いた私に、また口づける。
「ん……」
……どうしよう。こういうことの知識がないわけじゃなかったのに、実際にやってみたらどうしたらいいのか、わからない。ただ、この人の指に、舌に、翻弄されて啼くだけ。
戸惑いとともに体が熱くなり、同時に、さっきの痛みがまた疼きだした。
えと、確かに気持ちよかったんだけど、でも、痛かったのも事実で……
「あの……私、初めてですからあ」
「うん。だから、今度はもっと優しくする」
「でもお……」
のしかかってくる尾崎さんから逃げるように身じろぐと、なぜか尾崎さんはしげしげと私を見つめた。
「10年も前から由加里を見てきたけど、そんなにうろたえる由加里は初めて見るな」
「見なくていいですう」
尾崎さんが、またくつくつ、と笑う。
「いいよ。見せろよ、お前の全部。あんな顔も……あんな甘い声も、俺だけのものだろう?」
妙に楽しそうな尾崎さんが何を言っているのかに気づいて、か、と頬が熱くなる。
「っ……! ……知りませんっ」
「由加里」
尾崎さんは、愛しげに私を見下ろす。
「誕生日、おめでとう。あらためて、これからもよろしく」
「…………こちらこそ。もう離しませんわよ、祐輔さん」
わずかに目を見開くと、かなわないな、とつぶやきながら、祐輔さんは深い口づけをくれた。
fin
思ったより長くなってしまいました。この内容・・・どうなんだろう。ざっくり削除とかされないかな。どきどき。
3人娘の中では、由加里ちゃんは一番大人です。逆に、一番幼いのは莉奈ですね。みちるさんは、そんなのけちらして体育会系を突き進んでます。何でもかんでも体当たり。
『星空の船』のイメージ壊しちゃったらゴメンナサイ。