宣誓
去年、というよりも約4ヶ月ちょっと前の12月24日、クリスマスイブ。
大抵の男女が恋人と肩を並べている日だ。あくまで恋人同士だが。
そんな中、悪臭漂う嫌なにおいが充満している部屋の端から、カタカタとキーボードをたたく音がする。
部屋には、髪の毛がボサボサで度がキツソウな眼鏡をしている、少し肥満体型の男がいた。
男の名は桐島と言う。 年齢は15歳。 来年は高校生になる。
もちろん彼女いない歴イコール年齢である。
まだ中3なので恋人がどーやらこーやら言う年齢じゃない年と思うのだけれど、
クラスや巷ではその話題で持ちきりで、さすがの桐島でも、つい気になってしまう。
桐島は学校では、孤高の男。決して孤独ではない。ただ群れあうのが嫌いな、中二病から抜け出せない中三だ。
自分自身を見た目で判断するとしたら、純粋に『汚い』『キモイ』『臭い』のKKKだ。それに加え、アニオタ、アイドルオタ、ミリオタ、PCオタで、救いようがない。
唯一、誇れる所としたら無駄に身長が高いところくらいか。
だとしても、他人から言うならばボッチでネット内での二次元の嫁(58人)しかいないキモオタ。
風呂は三日に一回しか入らない。好物はピザ、ハンバーガー、キーマカレーだ。
それでいて学校も休みがち、引きこもり生活で性格も多少からず歪んでいる。
桐島は11歳でネットに没頭し始め、ここ数年クリスマスも家族とも、もちろん友達とも過ごせていなかった。
友達なんぞ、自分自身がピエロを演じれば自然とできる。
演じる際は、引き際が一番肝心で難しいが。
そんなわけで、
今日もネットで『桐島ボッチライフ』満喫していたのだ。
そして、今年もまた家にいるのは桐島一人。家でもボッチ。
両親は妹と一緒に出かけている。
外出は桐島が断っていた。
断った理由はネットをしたいというのもあったが、何よりこの醜い容姿を他人に見せたくないのと、恋人と共にクリスマスを過ごすことができないムナシサがあったからだ。
桐島はキーボードを叩く。 家で一人でキーボードを叩く。
――俺、辛ぇ
桐島の脳裏に突然その言葉が浮かんだ。
なぜ、浮かんだかは分からない。
浮かんだから、浮かんだ。としか言いようがない。
『桐島ボッチライフ』は楽しいが、それと同時に何かを失っている気がしてならない。
一体いつまでこんな生活を続けるのだろう。
もしかして一生このままなのだろうか。
その可能性も有りうる。
「………………………」
沸々と桐島の中で嫌のことばかりが浮かんでくる。
「ちっくしょう......」
人間はなにか行動を起こさない限り、変われやしない。
自分の今いる環境に不満があるなら、自分自身を変えるしかない。
人生の価値はどれだけその理不尽に足掻くかだ。
この思いは一瞬のことかもしれない。
だけど、桐島は一瞬でも変わりたいと願った。
足掻いてやるぜ
だって俺は、桐島だから。
桐島はここが自分の人生の分岐点だと思った。
PCを強制終了させ、メガネを外し、立ち上がって誓った。
「俺、ぜってぇ恋してやる!!」




