第9話 不死鳥と龍光
え~、こんにちは、氷訝です。
今回のタイトルは完全にタイトル詐欺です。
またまたグダグダ超展開になってますが楽しんでいただければ嬉しいです。
それでは"第9話 不死鳥と龍光"始まりです。
ーーエリュシオン魔術高校、闘技場選手控え室ーー
「本当によかったのか?」
「何がだ?」
俺達三人が控え室で準備をしていると、テンガロンハットを被った悪魔族の男、グランが急にそんな事を聞いてきた。
彼の今の格好はいつものテンガロンハットに丈の長い半袖の赤い上着を前を前回にして、その下に黒色のTシャツを着た戦いやすそうな格好だ。
「何って、お前ら、この戦いに参加したら確実に一部の先輩から目つけられるぞ」
「……なんだ、そんなことか」
「大丈夫、心配しなくていいよ、グランくん」
グランの言葉は思ってたよりとても平凡な内容だった。
その言葉に対して俺も琴音も特に気にしない様子で答えた。
ちなみに今の琴音の格好はクリーム色のTシャツ、紺色のスカート、とかなり涼しそうな格好だ。まだ暑くはないんだが。
「そんなこと、って……嫌じゃないのか?」
「別に、昔からそういったことには慣れてるしな……」
昔の記憶、琴音に救われるまで俺が過ごしてきた地獄の日々。
あれに比べればこの程度大した問題じゃない。
「昔……なにかあったのか?」
「あ~……グランくん、その話はまた今度ね」
よかった、琴音が止めてくれたようだ。
俺もあんな過去は出来るだけ話したくない。本当に琴音には助けてもらってばっかりだな。
「それより琴音、お前戦うの大丈夫なのか?」
「ん?大丈夫だよ、スパッツはいてるから!」
「そういう意味の大丈夫じゃないんだが……まぁ、そっちを気にしてられるくらいなら問題ないか」
俺が聞こうとしてたのはひさしぶりなのにいきなり先輩10人なんかと戦って大丈夫なのか?って意味だったんだがな
「フフッ、冗談だよ璃空、心配してくれてありがと」
なんだ、理解してたのか。
琴音の冗談は冗談に聞こえないから困る。
「……まぁ、無茶はするなよ?」
「わかってる。それに──」
「それに?」
琴音は少し間を空けると──
「──璃空が護ってくれるって信じてるから!」
──満面の笑みでそう言った。
琴音、めっちゃ恥ずかしい事言ってるの気づいてるのか?
「………………そうか」
ま、答える言葉は決まってる。
「そんだけ信頼されてるなら、それに答えなきゃな!」
「ありがと、璃空!」
「あれ?俺、空気じゃね?新キャラなのに」
グランの超絶的なメタ発言が響いた。
ーーエリュシオン魔術高校、闘技場メインホールーー
『まずは2年生組、そこそこ有名な不良集団!通称"デストロイ"の入場です!』
俺達が手に持っている剣を軽く見ながらスタンバイしているとあのアナウンスが聞こえてくる。
あの先輩達アナウンスにすら不良って言われてんのか。しかも人数多すぎて一人一人の名前とかの説明省かれてるし。
『そして1年組一人目、炎の神童と名高い期待の新星、"不死鳥"の二つ名を持つ悪魔、"グラン・エクシディス"の入場です!』
最初にグランが入場する。
てかあいつって二つ名あったんだな。戦ってないのにあるってことは中学時代についたのかな?
『続けて1年組二人目、2学年主席を倒した天才にして龍属性の使い手、"龍光"の二つ名を持つ人間、"如月璃空"の入場です!』
っと、俺の番か。
大歓声の中、闘技場に足を踏み入れる。
グランの横に並ぶと先輩達が恐れと驚きを合わせたような目をしていた。
もしかして俺達が二つ名持ちなの知らなかったのか?
『最後に1年組三人目、二つ名持ち2人と共に戦う少女、その実力は!?"柊琴音"の入場です!』
後ろから琴音が少し恥ずかしそうに出てくる。確かにあのアナウンスはプレッシャーかかるし恥ずかしいよな。
『ここで今回のVSのルールを説明します!本来なら人数差で1年組が一人につきHPポイントは30ptになりますが今回は1年組の提案で特別ルールを適用します!』
特別ルール、俺達が提案したやつだ。そのルールは──
『1年組は1人10ptに対して2年組は1人50ptになります!ダメージはチーム毎に蓄積するので30pt対500ptとなります!』
そう、本来なら俺らがポイント的にハンデを貰うはずだが断った。
代わりにあいつらにハンデを与えてやった。
それもかなりの。
『圧倒的すぎる差を自ら作った1年組!さて、この戦い、どうなるのでしょうか!?それではVS………スタート!!!』
開始と共に先輩達は散開し俺らを包囲するような陣形を作る。
そこそこ戦闘馴れはしているようだ。
当然こっちも無抵抗ではいない、それぞれが別の先輩に狙いを定め、先手必勝と言わんばかりに魔方陣を展開する。
「炎帝術式、【炎薙翼撃】!」
「雷将術式、【紫雷一閃】!」
「光将術式、【月輪輝光】!」
上からグラン、俺、琴音の順だ。
グランは背中から炎の翼を出し、容赦なく先輩3人を高威力のまま巻き込み、広範囲を薙ぎ払う。グランの十八番術式だ。
俺は手から紫の雷撃を放つ。適格に狙いを定めた一閃は見事に先輩の頭に直撃した。普通ならかわせるだろうが向こうも魔方陣を展開していたから反応が遅れたようだ。
琴音はキラキラと輝く光の粒を撒き散らしながら一直線に進む月明かりと同じ色をした光線を放つ。
大きさはそんなに大きくないが速度は速い。
その光線は一人の先輩の鳩尾に突き刺さるとそのまま闘技場の壁まで吹き飛ばした。
『1年組36pt。現在36対0』
一気に36ptも入ったか。
ん~、少し面倒になってきたな
「土魔術式、【土法魔撃】!」
「炎魔術式、【炎法魔撃】!」
「闇魔術式、【闇法魔撃】!」
「水魔術式、【氷法魔撃】!」
「雷魔術式、【雷法魔撃】!」
5人の先輩が同時に術を発動する。
○法魔撃(ブラスター ~ )とつくものはその属性の最も一般的な魔術だ。これらの術はただ単純にその属性の攻撃を放つ、それだけだが扱いやすいのでかなりの実力者でもよく使う術だ。龍、無、暁属性には無いのだが。
水はグラン、闇は琴音、そして炎、土、雷は俺に向かってきた。
法魔撃系3種くらいなら龍鱗之理で軽く押し返せるんだが………まだ龍属性は使わなくていい気がするな。
「はぁ……第一の"リミッター"、外すか」
リミッター、俺が自分にかけている能力制限だ。
制限とは言っても気持ち的なものだが。
俺は右手に魔方陣を展開する。色は雷の黄、その大きさは俺の身長と同じくらい大きい。
「雷霊術式──」
「霊級……だとぉ!?」
霊級、術位の中で三番目に高い術位だ。基本的に大人が帝級を使えれば魔術師として普通に活躍できると言われるこの世界。霊級術式が使える人なんて軍隊の幹部レベルなのだ。
「【天冥極雷】!!」
俺の魔方陣から溢れ出る赤黒い雷電の嵐。
紫雷一閃や雷法魔撃とは比べ物にならない
「ひいぃぃぃ!?ち、地将術式、【岸壁隆起】!」
怯えながらも地面から灰色の岩の壁を生やし、雷撃を防ごうとする先輩、なかなかいい対応だ──だが
ズガァァァァァン!!
岩壁は赤黒い雷を止めることは出来なかった。岩壁は雷に当たった瞬間砕け散り、消し飛んでいった。
威力を全く弱めず容赦なく先輩を呑み込む雷。
『1年組、42pt。現在76対0』
うわ、やり過ぎたかな……俺達が最初に3人で放ったときよりもポイント入ったよ。
砂ぼこりが晴れてきた。そこには……案の定まだビリビリと少し帯電している先輩がいた。
戦闘不能になった先輩は魔術で転送されていった。
「なんなんだ……あいつ!?」
「威力がおかしすぎるだろ!?」
こっちを凝視する先輩達、こっち見んな。
その視線が恐れなのか怒りなのかはわからないが、俺のかける言葉はただ一つ。
「はぁ、まぁいいや。とりあえず───
───消されたい奴からかかってきな」
璃空
「魔術紹介第2回目!」
琴音
「また始まったね、この誰得企画」
璃空
「だな、今回は作者抜きで二人で進めるぞ」
琴音
「それじゃ、今回はこれ!」
【連雷斬波】
属性:雷 術位:将
武器に魔方陣を当てることで武器を通して雷撃を放つ。使用中の武器によって形状が変化する。
璃空
「俺が2学年主席の戸神造成と戦ったときに使った術だな」
琴音
「あの時の璃空は刀を使ったから斬撃波になったけど他の武器を使うと攻撃の形状が変わるんだよね」
璃空
「弓を使うと10本くらいの雷の矢になったり斧で使うと衝撃波になったりしたな」
琴音
「確か投げナイフに使ってる人いたよね?」
璃空
「確か超電磁砲もどきになってたな……あれはビビった」
璃空
「それでは次回予告、今回は琴音頼む」
琴音
「うん!ついに第一のリミッター、【天冥極雷】を解放した璃空、続けて私、琴音の戦法と私たちの協力戦法が明らかに!次回、"第10話 光鏡"」