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金眼の探偵  作者: 音哉
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ファンシー姉さんとコンビニ強盗5


 病院では、たいした傷でもないのに大げさに縫い合わされ・・・と、格好つけて言いたいところだが、自分の傷口を見た俺はちょっと引いた。ぱっくりと開かれた深い裂け目を縫ってもらってほっとした。

 

診察室を出ると待合室では、コーラを買ってもらってご機嫌な柚子と、その頭を嬉しそうに撫でている三上警視がいた。・・・何があったんだ?


「直クン! 大丈夫?」


 俺が出てきたことに気が付いた柚子はすぐに心配顔で駆け寄ってくる。三上警視も俺の包帯でぐるぐる巻きにされている手をちらちらと見てくれている。


「いやぁ・・・。ちょっとしばらく料理作れないかも。治るまで弁当屋さんで我慢してくれよな!」


 自分で料理を作ると言う柚子に俺は何度も「弁当屋さんで」と繰り返す。・・・この手では何かあったとき対応できないからな・・・。


「ところで・・・。三上警視、さっき・・・、柚子のお母さんを知っているような感じで言っていましたけど・・・?」


 俺のその質問には柚子が答えた。


「うん。奈美さんは柚子のお母さんと高校が一緒だったんだって!」


「そう、私が一年生のときに君代先輩は三年生だった。ずいぶんお世話になったわ。と、言うよりも何度も助けてもらった。亡くなったなんて・・・残念だわ・・・」


 三上警視の目には涙が浮かんでいた。


「先輩は・・・私なんかよりもずっと頭がよくて・・・、でもそれよりもすごかったのは勘! 先輩の勘は外れたことが無かったくらい。柚子ちゃんにも遺伝したんだねー!」


 警視は自分の子供を見るような目をして柚子を見ている。俺は嫌われたっぽい感じだが、柚子とは仲が良くなってくれたのは良い事だ。


そんな二人の後ろに、吊り下げられた病院の時計がある。そろそろ2時間目の授業が始まる時間だ。


「それじゃ・・・授業もあまりサボるのはまずいし、柚子帰るか」


「パトカーで送るわよ」


 俺達は学校まで送ってもらい、残りの授業を受けた。

もちろん、欠席してしまった授業については不問。それどころか、校長先生からの表彰と、警察からの表彰を後で受けなければいけないとのことだ。そんなものいらないのに・・・。



 俺は、本日はバイクで帰ることを諦め、柚子と電車で帰る。そして、柚子のアパートでいつものようにくつろいでテレビを見ていたところ、玄関のチャイムがなった。


「柚子がでるぅー」


 トタトタと歩いていく音が聞こえ、ドアが開く音が聞こえる。


「柚子ちゃぁーん! 来たよぉー。これみてっ! プレゼント!」


「わぁぁ! かわいいぃ! うさちゃんだぁ!」


 またまた、ごく最近聞いた声がする。しかし、昼とは違って、昨日ペットショップで聞いたとおりのトーンだ。


「みてぇ直クン!」


 俺は振り返ると、柚子は自分よりも大きなウサギのぬいぐるみを抱えている。

・・・おいおい、実物のウサギでもそんな巨大な物はいないぜ。普通、クマさんだろ・・・?


「直・・・くん?」


「うわっ!」


 柚子の後ろから顔を出した人は、予想通り三上警視だった。しかし、俺が驚いたのはその服装だ。昨日ペットショップや今日の昼間見たようなスーツ姿ではなく、ひらひらとフリルの付いた服とスカートだった。靴下はピンクだ。


「なっ・・・何しているのよっ! 少年! 勝手に柚子ちゃんの部屋にあがりこんでっ!」


「え・・・。勝手にって・・・。いつも学校帰りに寄ってるんですけど・・・」


「いつもだってぇ!」


 三上警視は俺の胸倉を掴み、前後に揺さぶる。しかし、フリフリの洋服のせいでまったく迫力が無い。


「ちょっと! 今から本庁に来なさい! 別に罪状はなんでもいいわっ! 後で考えるからっ!」


「け・・・警視・・・。そんな事言ったらしゃれになりませんって・・・」


 三上警視は手を離すと、今度は俺に向って指をさす。


「とにかく! これ以後、あなたはこの部屋へ立ち入り禁止よっ! 私が気づいてよかった! ・・・それとも・・・」


 警視は眉間にしわを寄せて俺に顔を近づけてくる。


「柚子ちゃんにもう何かしたんじゃないでしょうね・・・。もしそうなら・・・今から戻って拳銃とってくるけど・・・」


「何かって・・・。してませんって・・・。いつもご飯を作って帰るだけですから・・・。泊まったことも無いし・・・」


 俺が首をぶんぶんと振っても、警視の眉間のしわは消えない。


「とりあえずあなたはもう帰りなさい。私は柚子ちゃんといっぱい話があるし」


 三上警視はそばにおいてあった俺のかばんを掴むと、俺に無理やり持たせて玄関へ向って押していく。


「えー・・・。直クン帰っちゃうのぉ・・・・」


 柚子は残念そうな顔をする。三上警視は人差し指を立てて見せながら、柚子に言う。


「柚子ちゃん、こんなのはダメよ。私がもっといいのを選んであげる。大体ね、こんな頭が悪そうな男は・・・」


「直クンは学年で一位だよぉ」


「うっ・・・。そ・・・そう? でも・・・こんな亭主関白っぽい男は・・・」


「直クンはいつも料理作ってくれて、お洗濯と掃除もほとんどやってくれるんだよぅ」


「ううっ・・・。そ・・・そう? ・・・なかなか良い男ね・・・じゃなくて! ・・・そうっ! 男は強くなきゃ! 柚子ちゃんを守ってくれるくらいっ!」


「あのぉ・・・。俺は柚子を守れるようにボクシングと総合格闘技のジムに通っていますけど・・・一応」


 俺が口を挟むと、三上警視は柚子に向けている菩薩のような顔から一転、鬼のような形相で俺を見る。


「そんなもの役に立つものですか! それじゃあ、今、ここで私を倒してみなさい! 言っておくけど私は空手四段よ! 手を抜けば骨を砕くわよ!」


 そういって三上警視は俺に向って構える。


「待ってくださいよ・・・。こんな狭いところで・・・。それに・・・三上警視はスカートだし・・・」


「それがどうしたのよ!」


「だって・・・。昼間も見えてましたよ・・・」


「何がよ!」


「あの・・・。言っていいのかな・・・。足を振り上げたときに・・・。えっと・・・。パンツがモロに・・・」


「なっ・・・なっ・・・・」


 警視の顔は真っ赤になり、蒸気が噴き出した。


「この変態!」


 問答無用の警視のこぶしが俺の胸を捕らえ、俺は靴箱に体をぶつけながら転んだ。


「い・・・いてて・・・。そんな・・・。パンツくらいでそんなに怒るなんて・・・」


「パンツくらいって何よ! その辺のパンツを見せて歩いているような女と一緒にしないで! 私のはまだ誰にも・・・じゃなくて! そっ・・・そう簡単には見れないものなのよっ!」


 警視はまだ蒸気を噴出している顔を柚子に向けた。


「ダメよ! こんな男は! いやらしい・・・ひゃっ!」


 三上警視は突然悲鳴を上げ、わなわなと振り返って俺を見た。その頬は引きつっている。


「どこ触ってるのよ!」


「へっ?」


「とぼけるんじゃないわよ! 私のお尻触ったでしょ!」


「えっ・・・触ってないっすよ・・・」


 三上警視は俺の怪我していない右の手首を掴んだ。


「警察をなめるんじゃないわよ! この右手に付着している繊維が私のスカートのものと一致すれば終わりよ!」


「せ・・・繊維? そんなものまで今はわかるんですか?」


「あたりまえよっ!」


「でも・・・。ひょっとして・・・お尻に当たったのって・・・それじゃあ?」


 俺が靴箱の横を指差すと、三上警視もそれを見た。そこには、傘たてに立ててあった傘が俺がぶつかった拍子にこちら側に倒れてきて、ちょうど柄の部分が三上警視の腰の位置にあった。


「ま・・・まあ、今日は事件解決したからこんな時間に来れたけど、明日からは遅くなったりで厳しいわ。もし、この少年に何かされたらすぐにお姉さんに言うのよ。国家権力で日の当たる場所を歩けないようにしてやるから」


 謝罪は無かったが、どうやら俺の容疑は晴れたようだった。


これからはたまに柚子の家を訪れる『みーみー警視』に怯えなければならないようだ・・・・。




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