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金眼の探偵  作者: 音哉
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ファンシー姉さんとコンビニ強盗4

俺は一気に部室の中へ飛び込んで左右を探った。すぐそばには誰もいない。


 部屋の中は雑然としており、スパイクやユニフォームがそこら中に置いてある。中央には細長い木製テーブルと椅子があり、その奥はロッカーだ。ドアと同じく中も古いもので、埃っぽく、基本的にロッカー以外は木で出来ているようだ。


毎日部員が入って着替えたり休憩したりしているせいか、人がいた形跡がありすぎて、先ほどまで誰かいたようにもいなかったようにも見える。


しかし、今俺の目から隠れるには・・・あのロッカーの陰しかないだろう。


「あのー、そこにいるのはどちらさま? 野球部の部室に部外者が入ったら困るんっすけどー」


 刃物を持っているかもしれない相手。いきなりロッカーに近づくのは危険だ。俺はこの部室を使っている野球部部員を装い、そして見えもしない相手にかまをかけてそう言った。


[ガタッ]


 大当たり。出てきたのは上下ともに黒い服を着た俺より少し大きな男。身長は180cmジャストくらいだろうか。しかし、体格がゴリラを思わすほどの筋肉質な人間だ。おそらくこいつが警察に手配されているコンビニ強盗だろう。


しかし、そんな凶悪犯を目の前にしても、俺はどうして柚子はこいつがここにいるのがわかったのか、そっちの方が気になっていた。魂が・・・? とかなんとか言っていたが・・・。


柚子も女だ。これが『女の直感』と言う物なのだろうか?


「あんたがコンビニ強盗? ・・・自首をすすめたいなぁ・・・なんて」


 俺の言葉に男の目つきが変わり、懐から刃物を取り出した。強盗をたくらむような奴だし、高校生を2階から突き落とした奴でもある。話の通じる相手じゃないのかもしれない。


 男は刃物を右手にじりじりと俺に近づいてくる。素手なら勝てるかもしれないが、接近されると危険だ。


俺はそばにあった椅子を強く蹴った。木製の椅子は床を滑り、男の膝にぶち当たった。


顔をしかめて膝を押さえた男の顔に、俺は渾身の右ストレートを叩き込む。だが、男はぐらつきながらもすぐに刃物を振り回す。


・・・この狭い部室と刃物に焦って、俺は少し急所をはずしてしまったようだ。俺は後ろに下がりながらも、もうひとつの椅子を蹴り飛ばした。それは男の足を払って転ばせた。


しかし、男は寝転びながらも刃物を振る。俺は近づこうとしたものの、慌てて飛び下がった。


(厄介だな刃物は・・・。素手ならボクシングと総合格闘技で習った技であっという間に倒して締め上げてやれるのに・・・)


 犯人の目には俺しか映っていない。勝負がつくまでやる気だ、そう考えていると思った。


しかし、俺の一瞬の隙を付いて男は立ち上がったと思うと、一直線に扉に走った。



「しまったっ!」


[バタンッ]


「ぐえっ」


 扉は男によって強く開け放たれ、まだドアの陰にいた信也は壁との間に挟まれたようだ。


俺はすぐさま男の後を追う。


「待ちなさいっ! 警察よっ!」


 俺が部室を出ると、三上警視が男の前に立ちふさがっていた。俺はドラマや映画のようなシーンを目撃できて、やっと彼女や大畑刑事が本物の刑事であったと実感した。


 男は警視に向かっても刃物を振り回した。刑事と言うのは制服警官とは違い、拳銃も警棒も持っていない。三上警視はひるんで後ろに下がる。


 しかし、俺はそのわずかな間に、男の次の行動を予測して先回りをした。


 男は予想通り刃物を手に柚子へと走る。


妙に格闘経験がありそうな高校生。警察だという女性。扉の陰で挟まって見えないモンゴル系高校生。そして小柄な女子高生の柚子。


このメンバーだと犯人は柚子に向っていくのは不思議ではない。俺はそんな犯人のすぐ横に迫っていた。狙いは奴の持つ刃物、これさえ取り上げれば終わりだ。


 犯人は柚子を捕まえようとすると考えていた俺だったが、男は刃物を振り上げて、それを柚子に向って振り下ろしてきた。まさかの行動だったが、俺はとっさに左腕を伸ばす。


「直クンっ!」


 俺の手のひらから血が流れ出た。男も瞬間的に、本能だろうか、俺の手から滴り落ちる赤い血を見ている。チャンスだ。


 俺はその血が流れる手を握り、こぶしを作ると間髪いれずに男の鼻に叩き込む。男はまさか怪我をした手の方で殴ってくるとは考えていなかったようで、鼻血を出しながら体をのけ反らせた。


「しゃがみなさい! 少年っ!」


 後ろからの三上警視の声だった。とっさに振り返ると、彼女は俺に向って足を振り上げてくる。かがんだ俺の頭の上を三上警視の細い足が旋回をする。


俺が犯人を見ると、男は立ったまま白目をむいていた。そして、垂直に崩れ、膝を突くと地面に伏した。


「空手?」


 俺がそう言うと、三上警視は微笑んだ。彼女のウェイトでは重量級の男を蹴り倒すことは難しい。


おそらく、足先で男のあごをかすめたのだ。脳を揺らされた男は気を失い倒れる。ボクシングでもパンチであごを狙う事があるが、それを足でやるとは・・・、かなり高度な技だ。


「大畑ぁ! 来なさいっ!」


 警視は叫びながら倒れた男の手から刃物を取り上げ、手錠で両手をつないだ。そして、ハンカチを取り出すと俺の腕を掴み、肘の少し上でそれを使って縛る。止血だ。


 すぐにどたどたと足音を響かせて大畑刑事が現れた。


「大畑! ハンカチ出しなさい!」


 差し出された物を見て三上警視は顔をしかめる。


「これいつ洗ったの?」


「ええっと・・・。いつだったかな・・・」


「バカっ!」


 警視はすぐさま自分のハンカチをほどき、大畑刑事の物で俺の腕を縛る。そして、彼女のハンカチで今度は俺の手の傷口を塞ぐ。


「パトカーを回して来なさい! それで病院まで連れて行くわよ!」


 大畑刑事が無線で何かを伝えると、ものの数分で制服姿の警官が現れた。その人たちに犯人を引き渡すと、三上警視は大畑刑事が運転するパトカーに俺を連れてきて、乗せようとする。


「いやぁ。大丈夫ですって。保健室にでも行って絆創膏でも貼ってもらいますから・・・」


「バカな事いわないの! そんな傷じゃないでしょ!」


 遠慮をしてみたが、警視にパトカーに放り込まれた。


ああ・・・校舎のそばでこんなことされたら・・・おかしな噂が立つだろうな・・・、なんて俺は思ったりした。


「柚子もいく!」


 三上警視の前をすり抜けて柚子も後部座席に乗ってきた。しかし、警視はなぜか何も言わずにその横に座る。


 パトカーはサイレンを鳴らしながら近くの病院へ向った。正直、一般の車がよけてくれるのは爽快だった。 




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