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金眼の探偵  作者: 音哉
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ファンシー姉さんとコンビニ強盗3


 靴を履き替える事無く中庭を歩き、部室の数十m手前に立つ。さすがに刃物を持った相手なので俺は用心していた。


「柚子はちょっとここで待っていろ。様子をみてくるだけだから」


 そう言って俺は部室に近づき、その周りを歩きながら用心深く観察をする。一応窓は全部閉まっているようだが・・・。


俺は窓に軽く手を当て、一つ一つ本当に鍵まで閉まっているかどうかを確認する。まあ、犯人が開いている窓を開けて入ったとして、鍵を閉めて中に篭っているだろうから無駄だとは分かっているが、プレッシャーをかけることで何かしらのアクションが起きるかもしれない。


「・・・・・っ? ・・・どうした柚子?」


 俺がある窓に触れた時、柚子が後ろから抱き着いてきた。そして、俺を部室から遠ざけようと後ろに引っ張る。


「窓に誰かの影でも映ったか?」


 俺が先ほどの窓に視線を向ける。柚子はそんな俺と窓の間に立ち、背中を向けながらじっと部室をみているようだった。


「直クン・・・。誰かいるよ。すごく魂が揺れている。怯えている人が中にいるよ」


 まだ柚子は俺を部室から遠ざけようと、背中でぐいぐいと押してくる。


「・・・たましい? ・・・ってなんだ?」

「おーい。直樹ぃ」


 そのとき気の抜けた声がした。振り返らなくても分かる、信也だ。


「どこのどいつよ。高校生のくせに私に指示をするのはっ! 大畑もしっかりしなさいっ!」


「でも・・・、あの少年の言った事は正しくて、落ちた少女の右の靴からでた指紋が前科者と一致しまして・・」


「わっ・・・わかっているわよ! 第一、そんな簡単なこと私にだってすぐわかったわよっ! 職員室へ言って・・・生徒の・・・様子を聞いてからあなた達に伝えようとしただけよ! 最初からわかっていたんだからっ! なにその顔! 東央大出身の私をバカにしてんのっ!」


 ・・・何か聞き覚えのある声がする。ごく最近聞いた事があるような・・・、しかし、何かそれと声質は近いが声のトーンがかなり違う気がする。もう一人の自信の無さそうな声の主は先ほどの大柄の刑事だろう。


 俺は振り返ってみる。


そこには信也と、今、大畑と呼ばれた先ほどのでかい刑事。


そしてもう一人。身長165cmほどのややきつい感じのする女性がヒールの音を響かせて歩いてくる。


その人は、昨日ペットショップで会った女性だと俺は気が付いた。


「・・・・あれ。えっと・・・確か・・・。えっと・・・。みー・・・。みーみーさん?」


「はぁ? ・・・・・・。あっ! ・・・きっ・・・君は・・・・」


 一瞬表情が和らいだみーみーさんだったが、俺にくっついている柚子を見るとまた鋭い目をする。


「きっ・・・君が・・・、ここに強盗犯がいるとか言っている・・・少年ねっ! そんなものいやしないわよっ! 警察を手間取らせないでっ!」


「ああ・・・。そうか。忙しい仕事って・・・。みーみーさんは刑事さんだったのか・・・」


「みーみー? ・・・って?」


 大畑刑事が俺の言葉に反応をして、口を半開きにしながら彼女を見ている。


「少年っ! わけわかんない呼び方するんじゃないわよっ! 私は三上よ! 階級は警視!」


「はぁ・・・。三上警視・・・?」


「そうっ! これからはそう呼びなさい!」


 警視は話の流れとは関係なく携帯をポケットから取り出して、それを握り締めながら俺を指差す。


驚いたことに、昨日と同じ携帯だがストラップが違う。少女が好きそうなキャラクター物ではなく、無骨な感じの革のストラップがついていた。


「・・・わかりました」


 なんとなく彼女の言いたいことを理解した。職場では部下に軽んじて見られないように、少女趣味な部分は見せていない。・・・と言っているように思える。


「まったくっ! 最近の高校生は勉強もせずに女の子とふらふらと・・・。ませてるわねぇ。私なんて毎日勉強漬けだったってのに・・」


 三上警視はぶつぶつ言いながらも柚子から目を離さない。しかし、突然表情から剣が取れたかと思うと、かがんで小柄な柚子に目線を合わせると首をかしげた。


「あなた・・・。どこかで会ったことなぁい?」


 柚子はすぐに俺の背中に隠れた。警視はそれを見ると真っ直ぐに立ち、あたりを見回す。


「それで、怪しい人間なんていないんでしょ? 大畑! 戻るわよ!」


 大柄の刑事はぺこぺこと意味も無く頭を下げて、去ろうとする三上警視についていこうとする。それを俺は呼び止めた。


「ちょっと待ってくれませんか。そっちの大きな刑事に手伝ってもらいたいんですよ。怪しい人がいる気がして・・・。警視さんは戻ってもらっても構わないんで・・・」


 俺が言い終わらないうちに三上警視は顔を赤くしながら振り返った。


「ちょっと! まるで私が役に立たないような言い方ねっ!」


「いや・・・そんなわけじゃ・・・。警視さんは忙しいかと思って・・・」


「忙しいわよっ! だからさっさとやるわよっ!」


 何やらイライラした様子だが、三上警視も手伝ってくれるようだ。正直、大畑刑事の助けは助かる。


 部室は平屋のアパートといった感じで、正面にいくつも扉が並ぶ。扉から一部屋ごとの縦割りで、左右の部屋へは内部では移動できない。建物の中に入ろうとするなら、ドアと裏の窓の二つだけだ。


この部室の中の一部屋に怪しい男が息を潜めていると柚子は言う。裏側の窓の外に大畑刑事に待機してもらい、俺達は表の扉側に回る。


「1・2・3・4・・・ここか」


 うなずく柚子の顔を見ながら、俺は右端から5番目の部室の扉に手をかけた。・・・鍵はかかっている。


「信也、悪いけど鍵を職員室から・・」


「へーきへーき。俺運動部の奴から聞いてるからさ。この部室ってもう古くて・・・」


 信也はノブを持って上下左右に扉を揺する。かなりガタがきているようで、扉は冗談のように揺れ動く。


[カチャ]


 小さな音と共に、扉が手前に開く。信也は扉の影に隠れて俺に「行け」とばかりに偉そうに合図してくる。中に入ろうとした俺の背中に柚子がぴったりとしがみついた。


「危ないから下がってろ、柚子」


「中にいるよぅ・・・・」


 そんな俺達をあきれた顔で三上警視は見ている。


「ほんと・・・最近の高校生はべたべたしちゃって・・・。それに彼女さん、どうして中にいるのがわかるのよ? 自信ありげね」


「だっているもん・・・」


 柚子は三上警視の顔を見る事無く、彼女の足元を見ながらつぶやいた。


「何よそれ。勘? ずいぶん勘に自信があるの・・・ね? ・・・ん・・・?」


 そこで三上警視は慌てて先ほどのようにかがんで柚子に目線を合わせる。


「そうだ・・・。あなた・・・、君代先輩に良く似てるわね・・・。先輩も勘が良かった・・・。こんなに小柄じゃなかったけど・・・」


「・・・柚子も君代って苗字ですけどね? 訳あって母親の姓を名乗っているんですけど」


 俺はそういいながら部室の中の様子をドアの隙間から伺う。


「まさか・・・、お母さんは初夏って名前じゃないでしょうね・・・? ・・・えっ! 本当にっ?」


 三上警視はうなずく柚子の顔を見て驚いている。どうやら柚子の母親と知り合いだったみたいだ・・・。


「んじゃ、俺ちょっと見てきますんで・・・」


 警視は柚子に何やらいろいろ話しかけている。まあいい。女性二人、出来るだけ犯人に近寄らせないほうが安全だ。



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