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金眼の探偵  作者: 音哉
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九卦島殺人事件 「目前」2


 俺はふらふらと脱衣所を出て行く。この状態のことをなんていうんだっけ? 湯冷めだったかな・・・湯あたりだったかな・・・。頭が働かない。ああ・・・気分が悪い・・・。


 ロビーに出ると、ソファーには三上警視と大畑刑事が何やら話をしていた。他のみんなはおそらく風呂に入ったり歯を磨いたりと、寝る準備に忙しいのだろう。


「どもっす。大畑刑事、風呂空きましたよ。入ってきたらどうですかぁ?」


 俺は二人の前で、ドスンとソファーに座った。


「うん、ありがとう。今日は村を駆け回ったし汗や泥まみれで・・・。さっぱりしてこよっと!」


 大畑刑事は鼻歌を歌いながら風呂に向かった。


「どうしたの? あなた・・・」


 三上警視は、ソファーにもたれてぐったりしている俺に心配顔で話しかけてきた。


「風呂が・・・熱くて・・・。多分大畑刑事も入った瞬間飛び上がりますよ・・・。ははは・・・」


「大丈夫なの? 顔真っ赤よ・・・。何か飲む?」


「えっ? ・・・じゃあそれもらっていいですか?」


「どれ? ・・・ちょっ・・・ちょっと・・・!」


 俺はテーブルの上に一つ置いてあったミネラルウォーターが入ったペットボトルを手にとって飲んだ。まだ開けたばかりのそれを半分ほど一気に飲んでからふーっとばかりに元のところに置いた。


「生き返ります!」


「こらっ! それ私のよっ!」


「え・・・そうなんですか? じゃあ後で返します。俺も食堂の冷蔵庫にミネラルウォーター冷やしてますんで」


「い・・・いいわよ。高校生相手に細かく請求しやしないわよ! それに、これ・・・まだ残ってるし!」


「へっ?」


「何よその顔! ま・・・まさか私が・・・か・・・関節キッスとか思って・・の・・飲めないとか思っているんじゃないでしょうねっ! 私は大人、そんな子供みたいなこと・・・かっ・・・考えないんだからっ!」


「はぁ・・・?」


「み・・みてなさいっ!」


 三上警視は何やら口をペットボトルにつけるのを三度ほどためらってから、顔を真っ赤にして一気に口をつけ、一口飲んだ。


「ど・・・どう? ・・・って、見てたの? あなたっ!」


「・・・・え?」


 見ていたと思うが、どうも頭痛がして気分が悪い。俺は目をつぶり、ソファーに背中をべったりつけるとずるずると体を下げる。


「そう言えば、柚子はどうしました?」


「今はお風呂入ってるわ」


「誰と?」


「ええっ・・・と、重・・元さんだったかな? 三年生のメガネかけている子。最初私と一緒に入ってたんだけど、あの子お風呂長いでしょ? 彼女にまかせてきちゃった」


「重元さんね・・・。なら安心だ・・・」


 俺の意識は遠くなった。



「ん・・・・」


 額につめたいものを感じ、俺は目を開ける。三上警視の顔が見えるが・・・どうも角度が変だ。上から覗き込まれているような・・・。


「あれっ・・・」


 俺は上体を起こした。ロビーのソファーの上だ。とっさに時計を見る。22時前、俺が風呂から出て10分ほど経ったようだ。


「俺・・・寝てました?」


 三上警視を見ると、うつむき加減で自分のスーツを直しながら、手に持っていたペットボトルをテーブルの上に置いている。


「あれ・・俺、今警視にもたれかかっていました?」


「別にっ! 大したこと無いわよっ! 男を膝の上で寝かすことなんてしょっちゅうなんだからっ! ふははははははは」


 警視はどうしてか腰に手を当てて笑っている。


「膝? ・・・なんかすんません。でも、おかげで目が覚めました」


 俺はにぃっと笑うと、三上警視に顔を寄せて小声で言う。


「陣内さんの部屋の密室の謎、とりあえず解けました」

「・・・えっ!」


 三上警視は顔を真っ赤にして驚いた。・・・あれ? なんで顔を真っ赤にしているんだ・・・?


「だけど、矢野さんのほうがさっぱり・・・。早く解かないと、証拠を消されてしまうかもしれない・・・」


 俺はソファーにもたれかかり、思いっきり体をのけぞらせた。すると、向こうから上下さかさまになった柚子が歩いてくるのが見えた。俺は普通に座りなおし、横に顔を向けると笑顔の柚子が俺のすぐ隣に座った。


「はぁ・・・」


 何やら三上警視は小さなため息をついたと思うと、立ち上がって正面にある黒い電話のそばへ行った。


「あっ・・・そう言えば」


 警視は振り返って俺と柚子に向かって言った。


「これ、電話壊れているって聞いたけど、電話線が抜けているだけだったわよ」

「・・・えっ?」


「電化製品にも詳しい出来る女! 参ったか!」


 三上警視は胸を張ってふんぞり返っている。電源を必要としない電話機も電化製品に含まれるのか・・・という問題よりも、『電話線が・・・抜けていた』だって? 


確か、光明さんが使えなかったと言っていた数時間前にはこの電話は使えていた。電話を使用したのは彼の一回だけだ。そのときに・・・電話線が抜けたいうのか?


「わぁー。柚子なら絶対わからなかったぁ。奈美さんすごーい!」


「この小僧はわからなかったんだよ! 柚子ちゃん、こんな男はやめときなさい! あなたに相応しい男は私が見つけてあげるわ! あなたのお母さん、初夏先輩に申し訳が立たないもの!」


 三上警視は俺を力強く何度も指差してくる。


「えー・・。直クンもすごいんだよー」


「どうだかねぇ」


 警視は俺を指していた指でぐりぐりと俺の額を押してくる。どうやらいつもの調子を取り戻したようだ。


 しかし、どうして電話線が抜けていた・・・。電話を使われたくなかったから・・・。なら矢野さんの時から・・・。いや、島に電話は他にもある。・・・そうか。他にも電話があるからこそ・・・。そして、陣内さんの時は次の桑原さんを殺すことを考えて・・・。と、するとやはり犯人はあの人・・・・。


「なるほど・・・」


 俺が笑うと、目の前の三上警視は何やら顔をしかめる。


「何あなた・・・。いじめられる事に快感を覚え始めたの? やっぱり柚子ちゃん、これはダメだわ・・・」


 まだ俺は警視にぐりぐりとされていた。


「違いますよ。三上警視のおかげでなぜ電話が使えなくなっていたのかわかりました。でも、どうして電話を治そうと思ったんですか? ・・・彼氏に電話でもしようと思ったとか?」


「なっ! ・・・そっ・・・そっ・・・そんなもの! い・・・い・・・いない! ・・・いるわよ!」


(・・・どっちなんだ)


 俺の横で柚子は嬉しそうに手を叩いている。


「わー。奈美さん彼氏いるんだぁ。どんな人ぉ? 今度見せて!」


「い・・・いいわよ。今度ね、柚子ちゃん・・・」


「それより柚子、今彼氏に電話かけてもらえばいいんじゃないのか?」


「あっ! そうかぁ。奈美さんかけてー」


「えぇっ! ・・・・・・・だ・・・ダメよ・・・。彼は・・・シャイだから・・・。知らない人といきなり話すなんて照れると思うわ。直接会って話をしてあげてっ! ねっ!」


「そっかぁ。柚子もそういうの苦手だもん・・・。そっかぁ・・・」


「柚子は人見知りだからな」


 俺は柚子の頭を撫でてあげる。その手に引っ張られるように柚子は頭をぐるんぐるんと動かしている。


「でも、三上警視いいんすか? この島は携帯使えないでしょ。今日分のラブコール彼氏にしておかないと、心配するんじゃないかなぁ。圏外ってのも伝えなきゃだし」


「えっ・・・。そ・・う・・だけど・・・」


「俺たちに構わずどうぞどうぞ。なんなら席を離れますけど・・・?」


「いっ・・・いいわよ!」


 俺が腰を上げようとするそぶりを見せると、三上警視は両手を激しく左右に振った。


「こんなところで電話できるわけ無いでしょ! 恥ずかしい! あなた達がいなくなっても、誰かが通りがかるかも知れない。それにホールは音が通るのよ! みんなの部屋に聞こえちゃったら・・・照れちゃうじゃない! わ・・・私と彼氏の関係は一日電話をしなかったくらいで壊れたりしないわよ! もし、どうしても声が聞きたくなったら、公衆電話からするわよっ! あまーい会話しちゃうんだからっ! 聞かれたくないしっ!」


「はは・・・。そんなもんですか。俺、彼女いないからその辺よくわかんなくて・・・。・・・・えっ!」


 俺は椅子から立ち上がった。柚子と三上警視はそんな俺を見ている。


「聞かれたく・・・ない?」


 俺がそう口に出すと、三上警視は「ホントよ。嘘じゃないわよ。彼氏・・・いるんだから・・」とぶつぶつ言っている。


「柚子! 最初の日にした食事のときの百物語! 一つ仲間はずれの話があるって言っていたよな? それってどういうことだっけ?」


 俺はソファーに座っている柚子の前にかがんでそう聞いた。


「えっとね、あれは・・・・」


 柚子はそのときの内容を他の話と対比させて話してくれた。


「なるほど・・・。それで、気分が悪くなったって矢野さんが言い出す直前、その話をしたのって・・・誰だっけ?」


「話をしたのはね・・・・」


 柚子は今この館にいる人間の名前を口に出した。


「やっぱり・・・・」


 俺は確信をした。


「化け物なんていない。これは人間のしたことだ。謎は・・・大体とけた」

「だ・・・大体?」


 三上警視が俺に向かって首を傾げた。



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