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金眼の探偵  作者: 音哉
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九卦島殺人事件 「連続」2

 午後6時。夕食を作りに村のおばさんが何人か来てくれ、昨日と同じく夕食を振舞ってくれた。三上警視と大畑刑事も村の人たちのご好意で一緒に食事をした。


食事も終えようとした頃、光明さんが三上警視に尋ねた。


「あの、仲間が殺されて不謹慎かもしれませんが、僕達は二泊三日の予定で来ていまして、明日の昼の船で帰る予定でした。つまり・・・予定通りに明日帰ってもいいんでしょうか?」


「んー。そうね。天気予報通りなら明け方頃には天気も回復して、明日は船が来るでしょうね。あなた達が乗って帰る船が来るってことは、私達の応援の警官も来られる。なら、大丈夫だと思うわ」


 そう言われてもみんなの表情は回復しない。刑事達と違って、犯人は吸血鬼だと思っているからだ。村に怪しいものが無かった今、より一層その考えを強めているのだろう。吸血鬼ならば、刑事達も歯が立たない。今晩も襲ってくるかもしれない。


「そういえば、光明さん、昼間おかしなことを言っていたわね。吸血鬼? 確かに不思議な傷跡が矢野さんと陣内さんにあったけど、どうしてそう思ったの?」


 三上警視は一向に明るくならない食堂の空気に違和感を持ち、もしかしてと思って聞いたようだ。


「あ・・あの。僕達民俗学のサークル活動でこの島へ遊びをかねて来たって言いましたけど・・・。その目的が、この島に存在する吸血鬼伝説なんですよ・・・」


 光明さんは昨日のこの時間、この場所で俺達に聞かせた話をそっくりそのまま三上警視達に聞かせた。



「ふーん。よくある話ね」

「えぇぇぇぇぇぇ」


 眉一つ動かさない三上警視とは対照的に、大畑刑事は口を三角形にして震えている。


「み・・・三上警視・・・。僕達、拳銃持ってませんよ・・・。いや、あったとしても銀の弾なんて申請すれば支給されるんですかね・・・」


「なにそんな非科学的な迷信を信じているの。誰か実際に見た人もいるわけでもなし。それに、銀の弾は狼男よ。吸血鬼は心臓に木の杭」


あまり喋らない重元さんが口を開く。


「そう言えば、吸血鬼に噛まれた人は吸血鬼になる・・・。矢野さんと陣内さんは・・大丈夫なのですかね・・・」


 それを聞くと、大畑刑事は青い顔で立ち上がった。


「あぁぁぁっ! 三上警視! ちゃんと心臓に木の杭を打ち込んでおかないとっ!」


「バカっ! そんな事したら死体損壊で下手したらあんたが刑務所行きよ! 下手しなくても免職は確実よっ!」


「く・・・首・・・」


 警察官らしからぬ事を言った大畑刑事は、口を半開きにしたまま力なく座った。


「それに、犯人のめぼしはついているわ」

「えぇぇ! さすが警視!」


 口角を上げて俺達を見る三上警視。大畑刑事はまた立ち上がって目をキラキラさせて警視を見ている。忙しい人だ。


「三上警視、あえて『めぼし』なんて言うって事は・・・通り魔とかの犯行じゃないって言っているんですよね?」


 俺が聞いても三上警視は首を縦に振らない。あくまでも今のところ参考人と言ったところで、証拠は無いのだろう。


「大畑、あなたは食堂にいなさい」


 三上警視はそう言った後、あごを動かし俺に来いとばかりに合図をする。俺と三上警視は食堂を出て、まず最初の事件、矢野さんの部屋へ向かった。


 部屋の扉を開けると、俺達が窓に立てかけたベッドが見える。窓の周りにはガラスが散らばっている。


「鍵は閉まっていた。ドアをかぎ無しでぶち破り、中に入ると矢野さんはいなかったって事よね」


 三上警視は独り言のように言いながら部屋の真ん中に立った。テーブルなどの備品の他にある特別なものと言えば、矢野さんの荷物だけだ。


「犯人はガラスを破り、5分以内に矢野さんを連れ去ったのよね。窓枠の高さは1m。これを女の子一人で担いで外へ飛び出たんだから・・・かなりの力よね。ところで、行方不明になっている大野さんは・・・体格のいい人だったんだってね?」


 三上警視の口元が少し緩んでいる。


「・・・大野さんを疑っているんですか?」


「陣内って子が殺された密室の謎ももう解けているわ。あんなもの私の前では密室では無い。子供だましだわ」


「・・・しかし、矢野さんの時、大野さんは食堂にいましたよ。窓が割れた音の後、すぐ食堂から出てきましたから・・・5分どころじゃない、3分ほどです。大野さんと一緒に扉をこじ開けたんですから」


「3分ね・・・。窓ガラスを叩き割り、部屋に入って矢野さんを連れ出す。気絶させて屋敷の周りの茂みに隠し、食堂に窓があったわよね、そこから入って何事も無かったように顔を出す。不可能では無いと思うわ」


「矢野さんをさらってそのまま逃げ出した赤の他人って考えたほうが早くないっすか?」


「村の人たちはここ数日、知らない人達はあなた達学生だけだって証言しているわ。人口が少なく、人目が少ないこの島だから見つからないじゃないかって思い勝ちだけど、だからこそ一目見られれば村人外だと分かる」


「え・・・。三上警視、昼間言ってた事とそれって逆じゃ・・・?」


「う・・・うるさいわね! 別にあなたの影響じゃないわよっ! 実は最初からそう思っていたんだから! 警察は人前では知っていても知らないふりしちゃうんだからねっ!」 


警視は上ずっていた自分の声に気がついたのか、深呼吸を一回し、ゆっくりと話す。


「まあそれより、私は刑事の勘で・・・、犯人は・・・あなた達仲間の誰かじゃないかって思っているの。どちらの殺人も物取りでもいたずら目的でも無かったし、特に陣内さんの方は、2階にいる特定の女の子だけを殺して忽然と姿を消すなんておかしいもの。姿を見られたわけでもなしに・・・」


「しかし、大野さんだとしたら、今どこに? 村にはいなかったわけでしょ?」


「それは明日になればわかる。大量の警官でこの島をくまなく探すわ。おそらく、誰も知らない地下室だか、洞窟だかがあるのかもしれないわね」


「・・・それじゃ、大野さんが犯人だとして、陣内さんの時の殺人はどうやったって言うんですか?」


「ついてきなさい」



 俺と警視は二階へ上がり、陣内さんの部屋の前まで来た。


「現場を荒らすわけにはいかないから、隣の部屋でやりましょう」


 俺達はすぐ右となりのドアの前に立つ。ここは矢野さんの騒ぎの後、大野さんが入る予定だった部屋だ。


二人で中に入ると、テーブルの上に部屋の鍵が置いてあった。空き部屋の全てにこうして置いてある。スペアキーは村人が持ち、ここでは一本物の鍵だ。それを三上警視は手に取った。


「古典的なトリックよ。まず、この部屋にノックをして迎え入れてもらう。同じサークルで同学年である大野さんなら簡単よね。そして、隙をみてガツンとやって気絶させる」


 三上警視は陣内さんが横たわっていたあたりに向かって殴るまねをした。


「次に何かしらの武器を使って首を切り裂く。詳しい死因や凶器は解剖待ちね。そして、息絶えた陣内さん。ここから、密室の作成ね」


 三上警視は窓を開け放った。


「あなた達は程度がどうであれ、吸血鬼伝説を聞いて少しは恐れていた。大野さんはそれを利用して、少しでも自分に容疑がかかるのを逸らしたかったの。アリバイ作りや証拠隠滅の時間稼ぎ。その他に自分に有利な証言をさせるためとかもあったかもしれない。そのために、不可能かと思われるこの窓から出入りできる物が犯人だというように密室を作る。陣内さんや矢野さんの首の傷もそれの演出ね。そして、ここでは鍵をかけてこの部屋から出る」


「鍵は・・・テーブルの上にありましたよ。ここにいた全員がそのとき確認している」


「さて、取り出し足るはソーイングセット」


 三上警視は胸ポケットから小さなプラスチックの箱を取り出した。その中から裁縫に使う糸を取り出した。


「・・・いつもそれ持ち歩いているんですか?」


「っ! 別にっ・・・縫い物が趣味って訳じゃないわよっ! け・・・刑事にはいろいろ必要な時があるのよっ! 犯人との格闘でボタンが取れたり! 雑然とした現場を走って服を引っ掛けたり! 他にはねっ・・・他には・・・」


 みーみー警視は顔を真っ赤にして俺に向かって口を尖らしている。


「忙しい職業ですもんね。それで・・・密室は?」

「・・・・そっ・・・そうだったわね」


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