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金眼の探偵  作者: 音哉
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九卦島殺人事件 「連続」1

 それから15分後、時間は丁度9時になった。俺達はホテルに戻ってきてすぐに殺人事件があった陣内先輩の部屋へ向かう。


桑原さんと重元さん、箕輪先輩と信也もすでに起きており、見慣れない若い女性をみて最初は驚いた顔をしていたが、すぐに警察だと感じ取ったようだった。


 部屋から出てきた三上警視は、俺に発見したときの状況を事細かく聞いてくる。俺は桑原さんと箕輪先輩と共に状況を説明した。


「・・・なるほど。部屋に入った人たちは後で・・・。明日になるかもだけど、指紋をとらせてもらうからよろしくね」


 その後、三上警視を連れて今度は一階の矢野先輩の部屋へ行く。そこでは両隣の部屋だった光明先輩と重元先輩を中心に三上警視は聞き込んだ。


「あと・・・一人行方不明・・・っと」


 三上警視は屋敷中と、その周りを調べると言い出した。俺も手伝おうと申し出たが、断られ、柚子を見ていろと言われる。


その間、朝から何も食べてなかった俺達は、警視の許可を取って遅くなった朝食をとることにした。


夕食は村のおばさん達が作りに来てくれるが、朝食や昼食は自分達が用意したものを自炊しなければいけない。普段ならキャンプ気分で楽しい調理や食事も、暗い雰囲気の中で行われた。


重元さん、矢野さん、陣内さん、箕輪先輩の女子大学生達の中で、料理は現在行方不明の矢野さんが主に受け持っていたらしく、ぎこちない手つきの先輩達に俺は手を貸した。


メニューは持ち込んだ材料からすでに決まっており、目玉焼きかスクランブルエッグ、それにベーコン。一緒に簡単なサラダ、そしてパンだ。


 重苦しい空気の中で俺達が食事を終えた頃に、三上警視は食堂へ帰ってきた。


「まあ、それほど遠くまで見て回ったわけじゃないけど、二階まで届くような梯子は見つからなかったわ。あと、この屋敷には確かに不審者はいないし、いたような形跡も無い。そして、この屋敷の屋根に簡単に上るような方法も見当たらないわ・・・。とりあえず、亡くなった子の部屋は・・・限りなく密室に近いわね」


 三上警視はそういいながら、食堂のテーブル、王様の席の対面の椅子に腰掛けた。


「みんなそろっているみたいだから整理させてもらうわね」


 鋭い視線を全員に送りながら、警視は足を組み替えた。


「最初の誘拐。さらわれた矢野さんの両隣の部屋は光明さん、重元さんの二人、全員三年生ね。食事を終え、気分が悪くなった矢野さんは19時45分頃自分の部屋に入った。そのとき、各自お菓子など食べ物をとりに自分の部屋へ戻った。その数分後、ガラスの割れる音がして全員出てくる。音が聞こえた状況から、一階、三年生達の部屋のどれかだとみんな考え、出てこない矢野さんの部屋の鍵のかかった扉をこじ開けると、窓ガラスの割れた部屋には彼女はいなかった・・・。割れた音がしてから彼女がいないのを確認するまでは5分以内。・・・間違いないわね?」


「あっ・・・。今行方が分からなくなっている大野さんだけは、飲み物の用意をするために食堂か厨房にいました。飲み物を持って出てきたので、一緒にドアに体当たりをしましたえけど」


 俺が付け加える。


「厨房と食堂は繋がっているけど、ロビーへはドア一枚隔てているわね。そこに、窓ガラスの割れる音がしたとき、一人でいた・・・と」


 手帳に何かを書き込むと、警視は話の続きを始めた。


「高校生を屋敷に残し、大学生達ですぐに周辺を捜索するも、怪しい人物は見当たらなかった。一時間ほど探して、帰ってきてみると、大野さんが足りない。すぐに戻ってくると考えていたが・・・・12時間以上経った今も・・・行方がしれない」


 三上警視は手帳から顔を上げ、俺を見る。俺がうなずくのを確認すると、また手帳に視線を戻す。


「疲れもあり、全員は大体21時から22時の間に就寝。その後、陣内さんの部屋から物音が聞こえる。それがどうしても気になって、箕輪さんが陣内さんの部屋を訪ねたのが日の変わった2時。矢野さんの時と同じように返事は無く、ドアには鍵がかかっている。扉を破り、中に入ると・・・陣内さんは死んでいた」


 三上警視が顔を上げると、今度は全員がうなずいた。


「陣内さんの部屋の窓は開け放たれていた・・・。だけれども、特殊な装備がなければ屋根から下りてくることは難しく、隣の部屋から入るのもこれまた同様に困難。二階まで届く梯子があれば短時間で出入り出来るが・・発見されていない。・・・・そして、今に至る・・・ね」


 警視は手帳をパタンと閉じ、天井を見ながら一息ついている。


「・・・とにかく、大畑が村の調査と聞き込みを終えてからね。この島では携帯が使えないから・・・、いつ帰ってくるかまったくわからないけど・・・。村に犯人が隠れている気配が無かったら・・・もう島から逃げたかもしれないわね・・」


 俺は三上警視の言葉に口を挟んだ。


「それはおかしい。この天気だけど、昨日の晩からもう風は激しかった。波の高い真っ暗な海に乗り出していくなんて死にに行くようなものだ。朝になったらベテランの漁師さんでも尻込みするくらいの荒れた海。しかも小船だと到底不可能だから、漁船クラス以上の船を用意しなければいけない。そんな船でこの島へ乗り付けて、一晩明かして早朝逃げていくなんて村人や俺達の目に付く。そこまでして大学生を殺したりさらっていく動機は相当な物じゃないとおかしい。・・・無差別に狙うなら都内や多少人口の多い大島で行えば簡単だから」


「人目・・・につくからでしょ! 街だと。この島は人があまり住んでないから目撃者が出ない可能性が高くてやりやすい・・」


「そう、人が少ない。いつもは高齢者ばかりの50人ほどの島だ。外部の人間がいると余計目立つと俺は考える。だけれど・・・、俺達が来ているのはたまたま。・・・どうして俺たちのグループが狙われたのか・・・。偶然か・・・、それとも必然か・・・。俺はまだ犯人はこの島にいると思う」


「いるったって、大畑が帰ってくればわかるのよ。この島には村人の家かこの屋敷しか人が隠れるところは無いんだから。森の中に一晩中隠れているわけにはいかないでしょうし」


 いつの間にか立ち上がっていた三上警視は椅子に座り、手帳の他に手に持っていたパンを食べ始めた。俺は警視から視線を戻し、テーブルに両肘をつく。


(変なんだ。犯人は矢野さんの窓ガラスを叩き割ってさらっていくような大胆不敵な犯行。とても計画性を感じない。そんな奴が乗ってきた自分の船を見つからないように最初から隠しておくだろうか・・・? それに雑貨屋のお婆さんや料理を作りに来てくれていたおばさんが言うには、しばらくこの島へは旅行者は誰も来ていないらしいし。・・・犯人は幽霊のようにこの島に忍び込み、犯行後立ち去った? それともまだ俺達の知らない隠れ家に留まっている? または、怪物ドラキュラ・・・・)


 吸血鬼伝説の話はまだ三上警視にはしてない。したところで、鼻で笑い飛ばされるだけだ。


それに俺も本当にそんな怪物が犯行を行ったとは思っていない。そんな人外のものが俺達の隙を伺って人をさらったり、殺して逃げたりなんて絶対におかしいからだ。それこそ、食事中の俺達の前に姿を現し、皆殺しにするだけですむ。


(しかし・・・。それにしても不自然だ。相手が人間なら、どうして矢野さんの時や陣内さんの時のように、あえて『困難な状況』で人をさらったり、殺したりしたのだろう・・・。たまたま思いつきでやった結果、怪力が必要な状況になったり、密室になったりしたのか? それとも・・・全て計画通りだったとしたら・・・? 不自然になることを想定して吸血鬼の仕業にみせかけた・・・。いや・・・まさか、不自然になることをではなく、・・・・『アリバイ』を作るために・・・)


 考え込んでいた俺だったが、どうしてか現実に引き戻された。いや、何か・・・テーブルが振動しているような気がする。


周りに視線を向けると、俺の右隣、空席の陣内さんの場所を一つ空けた向こうの桑原さんが頭を抱え込んでいる。その手が小刻みに震えているようだった。


「どうしたんすか? 桑原さん?」


「えっ!」


 彼は驚いたように顔を跳ね上げた。その顔は真っ青だった。


「顔色・・・悪いっすよ・・・?」


「あ・・・ああ・・・」


 桑原さんは顔を俺に向けるわけでもなく、焦点の定まらない目で周りをキョロキョロと落ち着き無く見回している。そして、口を半開きにしたままうつむいたと思うと、そのまま力なく立ち上がった。


「ちょっと・・・気分が悪いから・・・部屋で休ませてもらう・・・」


 そう言うと、食堂から一人出て行った。


 俺は何気なく時計を見た。11時になっていた。



 桑原は自分の部屋に戻ると、ベッドに座った。


「ど・・・動機・・・。まさか・・・。矢野さん、陣内、大野、・・・そして・・・、俺。・・・ぐ・・偶然だよな。そんな・・・あの時の4人が・・・。こんな島に来て何か起こるはずがない・・・」


 桑原は食堂にいたときのように頭を抱え、「偶然・・・偶然・・・」と言葉を繰り返していた。




遅めに朝食を取ったのと、事件のせいもあっただろう、昼になっても食事の事を言い出す者はいなかった。


俺達はロビーのテレビを見ながらお菓子をつまんでいる。桑原さん以外は全員そろっていた。部屋で一人になるより、みんながいるロビーのほうが安心できるからであろう。テレビのニュースでは、明日の明け方まではこのような天気が続くと言うことだ。


何やら乱れたような足音が聞こえてきた。そして、慌しい様子で玄関の扉が開く。中に入ってきた男は180cm半ばほどの大男、大畑刑事だった。


「警視! ・・・・あっ! 三上警視!」


 ソファーに目的の人物を見つけると、ラグビーのタックルを思わせる勢いで突っ込んできた。


「思ったよりずっと早かったわね。どう? 何かわかった?」


 三上警視は涼しい顔で見ている。大畑刑事が騒々しいのはよくあることだからだろう。


「えっと・・・村には特に怪しい・・・。いやっ! それより・・・。し・・・死体がっ・・・!」


「死体?」


 三上警視はすぐに立ち上がる。


「このホテルに来るまでの道に・・」

「とにかく案内しなさいっ!」


 二人は扉を開けて出て行く。俺は立ち上がりながら隣の信也の肩を叩いた。


「柚子を頼むな」


「おっ・・・おお・・・」


 俺もホテルの外へ出、二人の背中を見ながら走った。光明さんも来たようですぐ後ろを走っている。


 村へ続く道に入ってすぐのところで三上警視達は足を止めていた。二人は道をそれた茂みの中に入っていく。


俺もその後に続こうとするも、鼻につんとくる嫌な匂いを感じた。隣にいる光明さんも顔をしかめている。俺達は手の平で自分の鼻と口を軽く覆うと、三上警視達が見ているものを覗き込む。


「っ! ・・・や・・・矢野・・・君・・・」


 光明さんは目をそらした。矢野さんは見るからに息絶えていた。まさか・・・今朝俺達が通ったこの道の、茂みを挟んだほんの1mほどのところに・・・いるなんて。


「死後・・・かなり経っているわね」


 三上警視と大畑刑事は俺達のいる道へ出てきた。


「おそらく、さらわれてすぐ殺されている。衣服に乱れはない。死因だけど、詳しくは分からないけど、おそらく陣内さんと同じね。首からの出血。彼女と同じように首に二つの穴があるわ」


 その話を聞き、光明さんは震えながら、


「吸血鬼・・・」


 と言った。


「吸血鬼? ・・・確かに、首の傷はそう見えないことも無いけど・・・。あなた何を言っているの? 大学生がそんな子供みたいなことを・・」


 三上警視は何やら眉を動かしながら不快な顔をしている。おそらく、事件など無かったら光明さんを小一時間ほど説教しただろう。


「三上警視、俺から一つ。矢野さんのポケットに何か入ってませんか?」


「んっ? ・・・そうね」


 三上警視は手袋をはめて矢野さんの衣服を探る。すぐに、ある物を取り出し俺に見せてくれた。


「・・・やはり。彼女が持っていたか・・・」


「・・・何のこと? 別にこれ、何もおかしいところないでしょ? 持っていて当たり前じゃない? ・・・ちょっとっ!」


 俺は警視に背を向けて歩き出す。彼女の部屋に無くてずっと不思議だったものが・・・ポケットに入っていた。一体どうして・・・? 


少し坂をあがると屋敷が見えた。こんな近いところで矢野さんは殺された。それならば、部屋で殺せばいいんじゃないだろうか? 俺達がすぐに気がついたから? ならなぜガラスを叩き割るような派手なことをするんだ?


 ・・・ガラス窓。待てよ・・・。ならどうして・・・陣内さんの時は・・・。・・・・・・・。そうか、一方通行か・・・。


 俺は入り口に向かわず、屋敷の周りを左回りに歩く。割れたガラス窓が見える矢野さんの部屋の外に立った。


「これは・・・。とても人間には無理だな・・・。こちらも一方通行」


 俺は確認を終えると、玄関に向かって歩く。


「どうしてこんな矛盾が起こる? 不自然だ。吸血鬼の気まぐれか? ・・・いや、相手はきっと人間だ。そのトリックのほころびや無理が出ているところを犯人が吸血鬼だと思わせてぼやかしているんだ。・・・しかし、外部の人間が犯人ならそんなことをする必要なく、外に出てくる人間をさらったり殺したりしたらいいはずだ。俺達の旅行は二泊三日、十分その機会はめぐってくるだろう。それに、俺達が吸血鬼伝説を知っていなければ成り立たない。・・・それをどこで知った? ・・・もしかして・・・。犯人は・・・・」


 俺は入り口の扉を開けた。光明さんはすでに戻ってきており、ソファーにいる全員におそらく矢野さんの状況についての話をしている。桑原さんも出てきていて、青い顔で話を聞いていた。


「犯人は・・・この中にいるのか・・・?」


 俺はそう呟くと、ソファーへと向かった。




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