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第2話:同級生のあいつ

―あんたは私をどう思ってるの?からかってるだけ?―


「凛子っ!!おはよっ!」

私、井上凛子の最近の悩みはこいつ、佐々稔。

「稔〜!!名前で呼ばないでっていつも言ってんじゃん!!」

私のこと、何とも思ってないくせに…。

名前で呼んだりなんかして、期待させないでよ。


「凛子は凛子だろ?それにお前だって俺のこと名前で呼ぶじゃん。」

それは…多数の女子があんたのこと、名前で呼んでるからじゃん。

あたしのこと名前で呼ぶ男子はあんただけなんだよ。


「いいじゃん〜。毎日一緒に学校行ってる仲なんだし♪」

そう言って稔は自転車から降り、私の隣を歩きだした。

「勝手にあんたがついて来てるだけじゃん。」

「うわっ!!つめたいねぇ。」


なんで私にかまうの?

好きじゃないくせに。

ほっといてよ、あんたが隣にいるだけで苦しいの。


「お前ら…ホントに仲良いな。毎日一緒に登校して。」

後ろから声をかけてきたのは、同じクラスの藤沢陵。

「おはよー、陵。俺と凛子のラブラブ登校を邪魔しないでくれよ。」

「なっ…バカじゃないの!?私、先行くから!!」

私は走って学校へ向かった。


もうっ!!本当になんなの?

稔が考えてる事、わかんない…。


学校が近くなった所で私は走るのをやめた。


あれ…?未散?

ふと前を見ると同じクラスで仲の良い庄司未散が男子と一緒にいた。

未散、いつの間に彼氏できたのかな?

あ、車から守ってもらってる!!

いいな…未散。


私はさりげなく、未散の横を通り過ぎた。

「凛ちゃんっ!!待って!!」

私に気付いた未散が私に抱きついてきた。

「未散…彼氏と一緒に行かなくていいの?」

「彼氏じゃない。ただの幼なじみだもん。」

あ、そうなんだ。

でも幼なじみくん、悲しそうだけど…。


「あ、華ちゃんだ。」

前には暗い表情の華が歩いていた。

古林華も同じクラスで仲が良い。


「おはよ!!華。」

「おはよう、華ちゃん。」

「凛子…。未散…。おはよう…。」

暗っ!!顔も泣きすぎでヤバくなってる!!


華は今日のデートを年上の彼氏にキャンセルされたらしい。

かわいそうに…。

華、前から楽しみにしてたのに。


私は気分転換になると思い、今日の放課後の稔主催のクラスカラオケに華も誘った。



―放課後―

「皆さーん!!飲み物はお手元に行きましたか!?それでは、2年4組の不滅を誓って…かんぱーいっ!!」

「「「かんぱーい」」」

こうしてクラス会は始まった。

稔って、ホントに盛り上げるの上手いなぁ。

だからきっと、女子にモテるんだろうなぁ。


「それではまず最初に私、佐々稔が歌わせて頂きます!!凛子〜聞いててねぇ!!」

「はいはい…。」

もうやめてよ。

期待させないで。


「佐々くんって凛子のこと大好きだよねぇ。」

「なっ…」

「華ちゃんもそう思う?私は佐々くんと凛ちゃんは付き合ってるのかと思ったよー。」

「何言ってんの!?そんな訳ないじゃん!!」


稔が私を好きって言うのはありえない。

だって私は前に1回、稔にフラれてるんだもん…。



「り〜んこっ!!あ、古林さんも庄司さんもどうだった!?俺の歌!」

歌い終わって私達に寄ってきた稔に、私は無理矢理笑顔を作り、楽しそうなフリをしながらたくさん話をした。



11時過ぎに解散となり、私達は店から出た。


「危ないから、女子は家の近い男子に送ってもらってねー!!あ、凛子は俺が送るから!」

そう稔が言うと、クラスの皆が盛り上がる。

私は黙って下を向いた。

なんか、イライラする。


それから家までの道を私は何も喋らず、稔も黙ったままだった。


しばらくして、私の家の前に着いた。

「稔。」

「何?」

「…もう私を使って皆を盛り上げるのやめてよ。稔は私のこと、昔フッた都合の良い女って思ってるんだろうけど、私はもう嫌なの!!もうかかわらないで!!稔なんか、大っ嫌い!!」


そう言い残し私は家の中に入っていった。


稔、ビックリしてた…。

大嫌いは言いすぎたかな…。

もう前みたいに話す事はないんだ。

あんなこと言わなきゃ良かったかな。

でも辛いんだもん。

これでいいんだよね。


次の日、私はいつもより早く家を出て学校に向かった。

登校している生徒は少なく、もちろん稔にも会わなかった。


稔は遅刻ギリギリの時間に教室に入ってきて、目が合ったけど、私はすぐに反らした。


「井上。」

昼休み、廊下を歩いていた私は藤沢に呼び止められた。

「お前ら、ケンカでもしたの?喋ってないけど。」

「別に…。」

「本当にお前ら、不器用!!井上は稔が好きなんだろ?」

「好きじゃないってば!!」

「嘘つくなって。俺が協力してやるから。」

「…は?」

「今からお前は俺の事を名前で呼べ。俺もお前の事を名前で呼ぶから。」

「ちょっと!!意味わかんないんだけど!!」

「いいから。あいつはお子様だからな。これで上手くいくって!!じゃーな凛子。」

「ちょっと藤沢!!」

「陵だって。」

なんでこんなことに…。

私を名前で呼ぶ男子は稔だけだったのに。



次の日も私は家を早く出た。

「凛子。」

前には稔がいた。

「昨日の朝、凛子が来なかったから、今日は早く来てみたんだけど…」

私は稔の言葉を無視して通り過ぎた。

「おいっ!!凛子!待てよ!!」

私は稔に腕を掴まれた。

「離してっ!!」

「稔!!凛子!!」

藤沢っ!!

「え…。陵、今凛子って…。」

「陵、行こっ!!」

私は稔の手を振り払い、藤沢の腕を引っ張って学校へ向かって走りだした。


放課後、私と藤沢は担任に仕事を頼まれ、2人で教室に残っていた。

「井上、ちゃんと上手くいくって。だから心配すんなよ。」

「でも今日1日、学校で目も合ってないよ。」

なんか…悪い方に進んでいってる気がする。

「私さ、高校に入った時くらいに稔にフラれてるんだ…。だから…」

無理だよと続けようとしたけど、涙が溢れてきて言えなかった。

「井上…。」


ガラッ

急にドアが開き、稔が入ってきた。

「悪い、陵。ちょっとこいつ借りる。」

「どーぞ。」

「ちょ、ちょっと!!」

私は稔に手を引かれて、屋上に連れていかれた。



「何!?もうかかわらないでって言ったじゃん!!」

「凛子…。陵と付き合ってるのか?」

稔、いつもと違う…。

ちょっと怖い。

「この前…俺が凛子の事、都合の良い女って思ってるって言ってたけど、本当にそう思うか!?」

私は黙ったまま下を向いていた。

「なぁ、凛子。俺が女子で名前呼ぶのお前だけって気づいてる?」


え…?

たしかに、華の事も未散の事も名字で呼んでるかも。


「俺が、ああやって皆の前で凛子の名前を出すのは、盛り上げるためじゃなくて、他の男子が凛子の事を好きにならないようにだから。」


私は稔を見た。

「まだ気づかない?俺は、凛子が好きなんだけど。」


稔が…私を好き!?

「前に凛子が告白してくれた時は、凛子の事よく知らなかったからさ。でも同じクラスになって、凛子の事知っていくうちに好きになった。凛子が陵の事好きでも、俺は凛子が好き。」


その言葉、信じていいんだよね。

っていうか、稔誤解してる。

「藤沢の事は好きじゃないよ。私も…稔が好き。」

そう言うと、私は稔に抱きしめられた。

「…本当に?」

「うん。」

「もう1回好きって言って。」

「嫌だよ。恥ずかしい。」

「この前凛子に大嫌いって言われて、すげーショックだった。」

「ごめんね。」

「俺、不器用だからさ。凛子にフラれるの怖くて、なかなか告白できなかったんだ。でも…もっと早く言ってればよかった。」


稔…そんな事、思ってたんだ。

「あ、それから!!陵の事、名前で呼ばないで。あと陵から名前で呼ばれないで。」

「…やきもちやき。」

「うるせっ!!」



―井上凛子、17歳。

私達の恋は不器用すぎて、たくさん遠回りしたけど、辿り着いた先には、たくさんの幸せが溢れていたの―



       〜第2話 End〜

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