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18 初、魔族退治

登場人物が簡単すぎて必要ないと思ったので、編集しなおして18話に。

今回魔族退治なので、ちょっとそういったシーンが入ります。

 みんなのところに戻って、ディリアさんが浄化が終えたことを報告した。

 ディリアさんは自分の手柄にするのが気になったのか、私が手伝ったからできたのだと言った。そのせいで周りに奇妙な目で見られる。

 レーレンだけが、力のことを知っていたので納得した顔だったけど。

 村の人からはものすごいお礼の言葉と、そして遅くなったので村の宿に無料で泊らせてくれることになった。

 ディリアさんが目覚めるまでだいぶ時間がかかって、そのあと話をしてたからみんなのところに戻ったのは夕方近かった。ディリアさんの力が回復してないのと、この先泊れるようなところがないということで、村の人たちの好意を受けたのだった。

 そして夜はベッドの上でゆっくり休んで、次の日を迎えた。



 ***



 なるべく何事もなかったかのように、ディリアさんともほとんど話をしなかった。他の人に対しても同じだった。

 レーレンだけが別で、普通に話しかけてくる。昨日のことも特に詮索することもなく、他愛無い世間話と、そして元の世界でこちらにとって商売になりそうなものがないかという、隙あらば美味しいところを持っていきたいという感じが見え隠れしていた。

 まあ、別に向こうの世界の特秘事項など持っていないからいいやということで、いろんな話をした。


 そんな時、今度は魔族の襲撃があった。

 遠くで悲鳴が聞こえたのに気づいて、慌てて蒼井くん、大野くん、ヴァイスさんの四人で向かう。もし馬車のほうに襲撃があっても、防御くらいはできるということで、護衛に誰かを残すことはなかった。


 行ってみると、襲われている人たちは商人たちだったのか、大きな荷馬車から出て逃げようとしていた。護衛の人たちは魔族と奮闘しているも、あまり芳しくない。荷物より人命を(というか、魔族は人の荷物に興味がない)優先ということで、先にたって逃げる商人の後ろを守りつつ後退している状態だった。

 魔族はというと、一言で表すなら獣人。といっても、茶色い長毛に覆われた体には服など身につけていないし、武器もない。ただ、その鋭い牙と爪のみで人を襲っていた。

 大型犬でも十分怖いのに、二足歩行で理性のない獣に襲われたら堪ったものじゃない。ヴァイスさんは半ば錯乱している商人の人を後ろに追いやり、蒼井くん、大野くん、あと私はは今戦っている護衛の人の援護に入った。


「大丈夫か!?」


 切り裂いた場所から魔族の血――少し透明で、黄色というかオレンジというか色――が噴き出す。人の赤い血とは違う。

 けど、魔族の叫び声と飛び散る血を見て、ほんの少し動揺の表情を見せた。稽古だと実際に傷つけるまでしないし、こんな悲鳴を聞いたのは初めてだろう。魔族といえ、動物を傷つけたという罪悪感からか……。

 それは自分にも、見に覚えがある感覚だった。深く息を吸い込み、余計なことを考えないようにする。そして剣を抜き放ち――


「行くよ、アインス」


 剣の名を呟くと同時に、近くにいた魔族に切りかかった。

 細身の剣は“断つ”というより“斬る”ほうがあっている。けど、この剣は硬度もあるから“断つ”こともできる。腕力は力を使って補って。剣に自分を委ねて、力の解放だけを意識すると、剣は私にあった速度と力で敵――魔族を斬る。

 二匹片付けている間に、蒼井くんは立ち直ったのか次の魔族に立ち向かっていた。

 大野くんといえば、剣に慣れていないこともあって苦戦している。魔族の爪が横から伸びて大野くんの脇を狙おうとしたのを見て、きびすを返してその魔族を斬りつけ、こちらへと意識を向けさせた。


 この剣のこういうところは変わらない。“敵を斬る剣”なのに、必ず私の意志のほうを優先してくれる。最初の説明では物騒な剣と思ってしまったけど、剣の名を呼んだ時点で、剣はすんなり私の意志を尊重するようになった。やっぱり私用に作ったものだからだろうか。

 戦闘には必要のないことなのにあれこれ考えてしまうのは、私も、魔族といえど、生き物を殺しているという事実から目を逸らしたいからなのかもしれない。

 剣で切り裂いたときの感触、断末魔の悲鳴は、何度聞いても慣れるものではない。また、慣れたくもない。





 なんだかんだいいながらも、ある程度の時間で魔族はすべて片付けた。

 とはいえ、魔族といっても赤い血と、残る亡骸を見ると、なんともいえない気持ちになるが。

 蒼井くんと大野くんもそう思ったのか、怪我もなく魔族を屠れた安堵より、罪悪感とも後悔とも取れるような表情をしていた.。

 そんなところに、助けてもらった商人は。


「いやー助かりました、ありがとうございます!」


 と、にこやかな笑みとともに明るい声で礼を言った。

 そのお礼に少しばかり心が軽くなったのか、蒼井くんが「……いえ、間に合って何よりです」と答えた。こういったときはお礼を言われたほうが心が軽くなるものね。二人はさっきより表情がよくなって、やっと人を救ったというのを感じはじめたようだった。

 初めて魔族と戦ったことで、ほんの少しだけど前進した気がした。



 その後は残った魔族の骸の処理と、浄化が必要になる。

 けど、浄化しているところを見られたくないんだけど……ディリアさんに任してしまってもいいだろうか。前回の『忌み地』ほど範囲は広くないし、瘴気も少ないし。

 などと思っていると、ディリアさんは助けた商人たちをはじめ、蒼井くんたちも目に見えない程度の距離まで遠ざけた。


「デ、ディリアさん?」

「これならカリンさんも遠慮する必要がないでしょう? 今後このような形でやっていきたいと思っています」

「えと……本気ですか、ディリアさん?」


 これじゃあ、前線で戦うのと浄化の二つの作業をこなすことになるんですが……私一人だけ超過勤務ですか!?


「カリンさんの力はとても便利ですもの。知ったからには存分に働いてもらいます。それに、カリンさんがもう少し協力的でしたら、みんなとの連携だってもう少し楽になりますのに」


 マイナスの分を帳消しにするよう、頑張ってくださいね、と笑みとともに言われて、私は口元を引きつらせた。

 どうやらディリアさんは使えるものは何でも使う主義らしい。話す人を間違った――と思ったのは仕方ない。とはいえ、後悔先に立たずで、いまさらどうにも――ん、いっそ殴って記憶消去とか、などと物騒なことを考えていると、ディリアさんに。


「カリンさんは思ったより表情が出る方だったんですね。今なにを考えているか分かるような気がします。これからは背後には気をつけることにしますね」


 と、さらりと言いやがりました。

 この巫女さん、瘴気がなくなったら別人じゃん! ってなほど頭が回るようになって厄介だったらありゃしない。

 でも、最初からなにコイツ!? と思うような態度と口調で大嫌いだと思ったのに、今はその気持ちも薄れて、少々嫌味を含んでいるものの、相手を認めての会話になっている。

 あ、そっか。私はディリアさんが嫌いだったんじゃなくて、前のディリアさんのように上にいて自分より下だと思う人を見下していた人だったんだ。でも今のディリアさんにはそれがなくなったから、普通に話せるようになったんだ。

 自分の人間不信も治さなきゃな……と思いつつ、ブレスレットを手にして浄化を始めた。



 こんな感じで、進むと魔族にあって退治して浄化して、それを繰り返しながら、十日くらい過ぎた。

 といっても、魔族退治と浄化でほとんどみんな疲れちゃうので、思ったよりその歩みは遅かったのだけど。

 それでも前よりは早くつきそうだ、と心の中で思っていた。

これくらいなら、別に『残酷描写有り』という仰々しい注意書きは要らないかな。

自分の筆力ではこのくらいがせいぜいです;

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