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座薬ポーション〜回復はお尻からするものです〜

作者: ニッカ
掲載日:2026/03/08

回復ポーション。冒険者にとってそれは必須アイテム。その赤い薬は傷ついた身体を瞬時に癒し、多くの人々を救ってきた。

 街でも、ダンジョンでも、戦場でも。回復ポーションの登場は世界を一変させた。

 そして、世界を救おうと奮闘する彼らもまた例外ではない。転生者とその仲間たち。

 彼らは最初の冒険、迷いの森へと旅立とうとしていた。


―――――――――――――――――――――――


「いいか、勇者。武器や防具はちゃんと装備をしないと効果はないぞ」

 逞しい巨躯の男、頼りになる戦士が勇者に装備の鎧を着せている。転生者である彼は恐るべき潜在能力を秘めているが、その表情は不安と期待が半々と言ったところだ。

「うむ、良い格好じゃないか」

「ありがとう戦士、サイズもぴったりだ!」


「それに、道具袋も欠かせません!」

 小柄な魔法使いの少女が手渡したのは道具袋。中には様々な役立つアイテムが入っているだろう。

「まだまだ駆け出しなので最低限ですが、ロープや毒消し草、それに大切なポーションです!」

「ありがとう、魔法使いちゃん。大切に使うよ」

「えへへ」


 朗らかに笑う彼女に見とれていると、シーフの女がこちらを伺っている。

「勇者さん、冒険の準備はすみましたっすか?」

「ああ、みんなのお陰でばっちりだ!」

 腰に吊るした剣の重みを感じながら、僕は朝日に照らされた門を見やる。


「行こう!魔王退治へ出発だ!」


―――――――――――――――――――――――


「勇者!後ろだ!」

「し、しまった!」

 油断をした。迷いの森に現れたオークとの戦い、その巨大な棍棒が今、勇者へと打ち付けられようとしている。

「クソッ!」

 戦士は叫ぶと同時にその棍棒を全身で受け止める。


 鈍い音。


「ぐああああ!!」


 戦士は吹き飛ばされ、巨木に叩きつけられる。流石は戦士、あれほどの攻撃を受けても生きているが、しかし脇腹を強く打ち付けられた彼の呼吸は短く浅い。


「勇者様!ここは私達で抑えます!戦士さんにポーションを!」

「こっちっすデカブツ!」

 シーフの身軽さと魔法使いの幻惑魔法でオークを惑わせている間に勇者は戦士に駆け寄る。

「戦士!大丈夫か!」

「ああ、この程度……。だが、すまない。ポーションを使ってくれないか?」

「ああ、すぐに」


 先程魔法使いから受け取った道具袋。この中にポーションが入っているはずだ。

 ゴソゴソと袋を探る。どこだ、どこにポーションがある、赤色の回復薬。

 緑色の薬草、これは毒消し草だ。これはロープ、これは金貨、この銀色の包みは……なんだろうか。

「勇者……それだ、それがポーションだ。早く……!」

「これ……この銀の包みがポーションで合ってるのか!?」

 勇者が想像していた形とは違う、手のひらに収まるような小さな包み。

「こ、これを飲ませればいいのか?」

 道具袋から顔を上げた勇者の眼の前には


戦士の――



 生尻であった。





 ガッチリと鍛えられた色黒の尻が、何故か目と鼻の先に現れた。

 ついさっきまですぐ近くで聞こえていた魔法の爆発音とオークの打撃音が急に遠のいていく。


 なぜ、今、尻。


「勇者様!長くは保ちません!早く!!」

 魔法使いの叫びが耳に届く。

「はっ!そうだ、ポーションを使わなきゃ!……ど、どうやって?」

 正気を取り戻すも、やはり混乱は終わらない。ポーションを飲ませなければ、しかし手元には銀の包み、そして戦士の尻。こんな迷いの森の真ん中で戦士がズボンを脱いで尻を丸出しにし、肛門をこちらに向けている。


「何をやっているんだ勇者!早く入れてくれ!!」

「だから何を言っているんだ!」

「なにって、ポーションを使ってくれ!」

「尻にか!?」

「尻以外にどこがあるっていうんだ!」

「むしろ尻以外にはないのか!?」

 目を白黒させながらも手元の銀の包みを開けると、そこには弾丸のような形の、赤い固形の物体が出てきた。


「つまり?コレを、戦士の肛門に押し込む……ってコト?」

「ああそうだ、早くしてくれ!」

 カチカチの尻が左右に揺れる。

「……薬渡すから自分で入れてよ」

「すまない、その余裕がない」

「なんで異世界転生までしてオッサンの尻に座薬入れなきゃいけないんだよ!!!」




「勇者様!早く!」

「もう、限界っす!!」

「勇者!早く尻に!!!」

「グオオオオオオオオオオ!!」

 オークはもうすぐそばまで迫っていた。

「クソ!!もうどうにでもなれ!!!」

 勇者は焦りながらも赤い座薬を戦士の肛門にあてがい……

「うっ……うぅ……」

 あてがい………




「うおおおおおおおおおお!!!!」




 人差し指の第一関節まで力強く押し込んだ。



―――――――――――――――――――――――



 その後なんとかオークを倒し、人差し指を念入りに、念入りに洗った後ようやく次の街に辿り着いた。

「ここで買い出しをしましょう!」

「ポーションもいくつか使ったしな」

「……うん」

「ほら、いくっすよ」

「……うん」

 人生で初めて成人男性の尻の穴に指を入れた勇者はすっかりとうなだれている。シーフに手を引かれてとぼとぼと道具屋に向かった。


「いらっしゃい!安くしとくよ!」

 道具屋の女将さんが活気よく出迎えてくれる。

「ポーションの補充にきました!」

「ああそうかい!ちょっと待ってな!」

 魔法使いが注文をすると女将さんは紙の箱をいくつか持ってくる。


『シリナオールA 座薬』


「これポーションのパッケージ!?」

 前世で見たことがあるような薬のパッケージ。しかもひどい名前だ。

「これが一番普通のポーションだよ。もっと効き目がいい奴もあるけど」

 そう言って取り出したのは一回り大きいサイズの箱。


『デカジリナオール 座薬』


「薬のサイズも倍くらいデカいけどね」

「じゃあ普通のでいいです!!」

「いえ勇者様、デカジリポーションは戦士用に買っていきます」

「戦士、こんなデカいの入るのか!?」

 パッケージには実物大の座薬が描かれている。このサイズ、少なくとも僕のには入る気がしない。


 勇者があんぐりと口を開けていると女将さんがそんな彼に声をかける。

「勇者、ってことはアンタ転生者かい?」

「え、はい、そうですが……」

「それじゃ知らないだろうが、戦士の強さってのはね、腕っぷしだけじゃないんだよ」

「は、はぁ」

「戦士ってのは真っ先に相手の攻撃を受けなきゃいけない。圧倒的なタフネスが必要なわけさ」

「それは確かに、そうですが」




「つまりどれだけケツにポーション突っ込めるかが重要なわけだ」




「そうなるのかぁ!?」

「そりゃそうだろ。尻にポーション突っ込める数が多ければ多いほど攻撃を受け止められるわけだし」

「俺はデカジリ5本入るぞ」

「誇ることなのか!?」

「誇ることだぞ。それだけタフに戦える尻ということだ」

「勇者様、前衛職が一番鍛えなければいけない場所はお尻ですよ!」

「勇者様もそのうち慣れるっす」

 シーフが優しく僕の手にポーションを持たせてくれた。デカジリだ。

「……えっ俺も?」

「はい!!!」




「デカジリポーション3つ、入れられるようになるまで、頑張りましょ♪」




 勇者は逃げ出した。


 しかし回り込まれてしまった。


 頑張れ勇者、いつの日が魔王を打ち倒すまで!



―――――――――――――――――――――――



 迷いの森を抜け、いくつものダンジョンを超え、勇者一行の旅は続いていた。そして勇者は悟る。


 この世界の戦いは、尻との戦いだ。



「勇者様、一度回復しておくほうが良いのでは?」

 魔法使いが冷静に言う。

「いや、まだ体力には余裕があるし大丈夫だよ」

「勇者さん、後でまとめて挿れると大変っすよ」

「挿れるって言うなよ!」

 だがその直後、物陰から忍び寄る影が音もなく勇者に忍び寄った。


 ゴン、と鈍い音、背後からゴブリンの奇襲だ!一番槍のゴブリンに続いて続々と群れが現れる!


「ぐああああ!」

「だーから言ったじゃないっすか!!」

 勇者はフラフラと岩陰に隠れた。

「ポーションを!」

 銀の包みを取り出し、慣れた手つきで破る。赤い座薬を人差し指に乗せ……。

「……」

 戦士は前線を抑え、シーフは木の上から弓でゴブリン達を狙う。魔法使いは詠唱中だ。


 大丈夫、見られていない。


 勇者はズボンを下ろした。下半身に冷えた風が吹き付ける。そのまま尻を突き出し中腰の姿勢に。


「なんで……なんで戦闘中にこんな事をしなきゃいけないんだっ!!」


 そう嘆きながら座薬を肛門の奥まで押し込む!


 薬が外に出ないように尻をキュッと引き締め、ズボンを上げようとしたその時!


「勇者!危ない!!」

 戦士の怒号が飛ぶ。前衛が打ち漏らしたゴブリンが勇者に追い打ちをかけようと飛び込んできていた!


 勇者はズボンを下ろしているため、上手く身動きが取れない。それにまだ回復が済んでいない。


 眼前に迫りくる棍棒。


「「「勇者!!!!」」」


「うおおおおおおおおお!!!!!」



 跳躍、一閃。



 ズボンが邪魔で駆けることは出来ない。だが、上に飛ぶことは出来る。

 勇者は剣を抜き、全身のバネで飛び上がった。空中でゴブリンを迎撃、叩き切った!


「はぁ……はぁ……」

 ズボンを下ろし下半身を丸出しにしながらも、どうにか危機を脱した。回復ポーションも挿れた、早く前線に復帰しなければ。

「勇者様!駄目です!足元を見て下さい!!」

 丸出しの勇者に魔法使いが声をかける。勇者は言われるがままに地面を見ると、




 コロコロと転がる赤い座薬。




「反撃で力んだせいで、座薬が出ちゃってます!」


「俺もう一回挿れるの!?」

「早く挿れるっす!!!!」

 急いで物陰に――

「隠れてる場合じゃないっす!早く!」

「見られながら!?」

 迫りくるゴブリン、戦士も抑えきれていない。早く、早くしなければ。


 しかし焦れば焦るほど手元が狂う。必死に押し込んでも中々入らない。

「かくなる上は仕方ありません!勇者様!お覚悟を!!!」

 魔法使いが叫ぶと手元にあった座薬が魔力を帯び、仄かに光り始める。

「な、何を覚悟すれば」

「念動魔法です!行きます!」

 すると座薬が勇者の手元から飛び出し、ものすごい速度で勇者の周りを飛び回る。その速度を維持したまま……

「えいっ」




 尻穴の奥にまで突き刺さった。


―――――――――――――――――――――――



数年後、勇者一行は遂に魔王城へと辿り着いた。


「勇者よ」


 玉座の上で魔王が笑う。


「お前の戦う姿、四天王たちの目を通してよく見せてもらった。素晴らしき尻の穴だ」


「魔王!まさか今までの戦いが見られていたなんて!」

「こちらの手の内はバレてるってワケっすか!」




「ああ、念動力で全員の尻穴にポーションをねじ込む魔法も」


「戦士の投げたポーションをそのまま尻で受け止めて回復する連携も」


「背後から忍び寄り真っ先に尻の穴をぐちゃぐちゃに切り刻むシーフ、貴様の隠密能力も」




「全て対策済だ!!」




「だが、そんなことで怯む俺達じゃない。そうだよな、勇者!」


「ああ、もちろんだ。俺達の尻の穴を信じろ!」


 巨大な魔力が周囲を満たす。




 激しい戦いが始まった。





 戦士が倒れる。

 シーフも倒れた。

 魔法使いが膝をつく。




 勇者もまた、満身創痍だった。



「くくく、勇者。悪くはなかったが、ほんの少し、私の魔力が貴様を上回った!」

 魔王もまた傷ついている。だが魔王の言う通り、ほんの少し奴が上回った。

「今、立ち上がる力さえあれば……」

 手持ちのポーションは使い切った。最早回復手段はない。


「ゆ、勇者様……」

 魔法使いが震える手で袋を探る。

「も、申し訳ありません。最後に、これだけ……」

 傷ついた手で差し出されたのは、一つの箱。




『ギガデカジリナオール 座薬』



「門番のギガンテスが落とした、巨人族用の座薬です」

「デカすぎんだろ!!!!!!」




 腕よりも太い極太巨大の座薬。回復量は凄まじいが、最早人間が受け入れられるサイズではない。


 魔王が笑う。

「くだらぬ。回復もできんか」


「……」

 勇者はその巨大な座薬を見る。恐ろしく、大きい。


「ゆ、勇者様……?」



「俺は……勇者だ」

 カチャカチャとベルトを外す。

「これまでの旅で多くの経験をしてきた」

 ズボンが落ちる。

「最初は無理だと思っていた。でも、それでも!!!」

 勇者はパッケージを破り、座薬を握りしめる。




「俺は……勇者なんだ!!!!!」




「勇者様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「馬鹿な……馬鹿なぁぁ!!!!!」


「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」





 その日、世界に光がもたらされた。




 そして、パッケージに一文が加えられる。


 ※用法用量は守りましょう

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