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夜明け前の青の色

掲載日:2026/01/26

朝の教室は、まだ世界が完全じゃない。

窓から入る光が薄くて、机や椅子の輪郭が少し曖昧に見える。


君が席に着く音で、教室が動き出す。

椅子が鳴って、ノートが開かれる。

それだけで、今日は大丈夫だと思えた。


目が合う瞬間は、いつも短い。

たぶん、0.3秒くらい。

その間に、頭の中で同じ言葉を何度も繰り返す。

声にはしない。

言葉にしてしまうと、形が変わってしまいそうだったから。


君のことを、調べなかった。

家も、好きなものも、何も。

知ろうとすることが、どこか越えてしまう気がした。

好きになるより先に、

嫌われる可能性のほうが思い浮かぶ時代に、

僕は生きている。


だから目で追ってしまう自分に気づくたび、

少しだけ怖くなる。

今の僕は、許されているだろうか。

何もしていないのに、

何かをしてしまったような気分になる。


君が笑った。

誰に向けたものかは見なかった。

見なくていいことも、きっとある。


夜明け前、眠れないまま君のことを考えていた。

カーテンの隙間から、空の色が変わっていくのを見ていた。


青い。

でも昼の青じゃない。

名前をつけるには、少し頼りない色だった。


あの日の青は、

何とも言い難くて、

君への想いと重なって見えた。

はっきりしないまま、

でも確かに、そこにあった。


空は次第に明るくなっていく。

朝は、ちゃんと来てしまう。

それなのに僕の想いは、

逆に夜へ帰っていく。


朝になれば君に会える。

それは嬉しいはずなのに、

気持ちは夜に置いてきたままだ。


あの青は、

すぐに別の色に上書きされてしまった。

でも、僕の中ではまだ残っている。


昇降口で、偶然、目が合った。

たぶん偶然だ。

それでも、その一瞬で、

今日を生き延びた気がした。

一日は、意外とそれだけで成立する。


君に名前を呼ばれたら、

それだけで世界が終わってもいいと思った。

もちろん、終わらなかった。


だから今日も言わない。

飲み込んだまま、青い空を見る。

苦しいけれど、

あの夜明け前の色を、

僕は綺麗なままにしておきたい。


こんな気持ちに、

名前をつけなかったことがある人は、

きっと一人じゃない。


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