表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マイノリティ青春グラフィティ  作者: 水稀リョウ
第1話
5/35

第1話(5) 女だと、言えない

〘これが大阪のお姉さん――いや大学生? 年下かも? 兎にも角にも高まる期待……!〙


 スタスタ。

 

 スタスタ。


 と、亜希が浮かれながら駅の構内を歩いていると……

 ――目の前の人影がピタ、と足を止めて、亜希をくるりと振り返った。


「あの、なんでついてくるんですか?」

「えっ?」


 唐突に指摘され、亜希は狼狽(うろた)えた。

 振り返ったのは、先ほどの美人のお姉さんだった。

 気付かぬうちにお姉さんの後を歩いていたらしい。


「こっち女子トイレですけど!」

「ええっ?!」

 お姉さんは怪訝な顔をして女子トイレのプレートを指差した。

 

〘…って、わかってて女子トイレに来とるんじゃーい!〙


「いや、なんでって…」

 苦笑いを浮かべる亜希。が、お姉さんは騒ぎ出した。


「えっ、もしかして中に入ろうとしとった? えっ、もしかして、チカン?!」

「えっ?! いや、ちが…っ!」

 亜希は焦った。

 お姉さんはもはや、亜希を疑いの眼差しで睨み付けていた。


「じっ、自分は――!」

 言いかけて、口を(つぐ)む。「女」と言ってしまえば済む話、だが……



〘……い、言えん……!〙



「…!」

 亜希を睨み付けるお姉さん。その深い瞳に、亜希は口を縛り、呑み込んだ。


 べつに男になりたいわけではないが、かわいい子の前ではなんとなく男のフリをしていたい――それは多分いくらかの『期待』と、そして――


「駅員さん、この人です!」

「失礼、あなたがチカンですか? ちょっとこちらまで…」

「…クソ!」

 亜希が言い淀むうちに駅員がやってきてしまい、亜希は逃げるようにその場を去った。



〘クソ…〙

 亜希は自分のセクシャリティを呪った。

 男の格好をしている自分が、男と間違われてしまうのは仕方ない。

 だが、だからといって、女性らしい格好もしたくないし、気になる女性に簡単に女だと明かしたくもない――。

 

 

 それから亜希は別の女子トイレを探した。

 今度は男と間違われぬよう、不本意だが、肩をなよっとさせて、小指も無駄に立てた。

 「えっ…あの人、女、かなぁ…?」女性たちのそんな視線を感じながらも、問い詰める隙を与えぬようさも「私、女ですけど?」と言った顔で女子トイレの奥へと入り込んだ。

 

〘よし、これで…!〙


「キャーッ、男ーっ?!」

「お、女ですーっ!」

・2026.01.16 亜希のセクシャリティ問題について加筆しました(その他の微修正については記録を省略しています)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ