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マイノリティ青春グラフィティ  作者: 水稀リョウ
第1話
3/35

第1話(3) 転機

 亜希はもちろんただ手をこまねいているわけではなかった。

 出会いを得るべく日々、努力していたのだ。


 その日の夜も、亜希は自室でノートパソコンを開き、こっそりとあるサイトを見ていた。

 女性の同性愛者のための、『女性専用の出会い掲示板』――



 かちっ、かちっ。


「大阪、兵庫、難波、天王寺、梅田……も~~、いつ見ても大阪ばっかやん!」



 亜希は日々この掲示板を覗いては、自分と希望の合う相手がいないかと検索していた。……が、自分の住んでいる田舎県での募集はほとんど無く、今日も嘆くだけだった。


「まーべつに普段の生活でも、キレイなお姉さんとは出会えるけどさ」


 と、居酒屋で見かけたキレイなお姉さんを思い浮かべる。


 だがノンケ――異性愛者との恋は不毛だ。

 中学の時も、高校の時も、結局打ち明ける勇気が無く、時間を無駄にするだけだった。

 いまは同性愛者専用の出会い掲示板で、一刻も早く失われた青春を埋め合わせたいのだ。


 亜希は「それやのになぁー」と頭の後ろで手を組むと、椅子にもたれかかって溜め息を吐いた。

 

「田舎じゃ出会いのチャンスが無さ過ぎる。あーあ、こんなんやったらあのまま、大阪の大学行っとけばよかったなぁ」


 と、亜希がぼやいた、その時――



「でっ、出会い掲示板?!」



 突如横から父がぬっと覗き込み、画面の文字を読み上げた。

 

「おっ、お父さん?!」

 慌ててノートパソコンを閉じる亜希。

「もう、ノックしてーよ!」


「お前……いくら年頃でも、不健全な出会いはいかんぞ」

「そそ、そんなんとちゃうよ!」


 父に白い目を向けられるも、どうやら同性愛者同士の……とまでは気付かれていないらしい。


 が、ほっとしたところで、亜希ははたと気付いた。

 父親がわざわざ部屋に来るなんて、いい話なワケがない!


「こら、どこ行くんやっ!」がしっ!

「うげっ!」

 案の定、逃げ出そうとするも父に襟首を引っ掴まれ、椅子に座らされたのだった。


「お前も高校卒業してもう2年……いつまでもフラフラしとるわけにもイカンやろ。春から専門学校へ行ってこい」


 父はそう言うと、亜希に1冊のパンフレットを突き出した。


「ええか亜希! お前がどんなに嫌がろうとも――あっ!」


 亜希は父の手からパンフレットを奪い取った。

 その表紙を、食い入るように覗き込む――


 亜希の目に、『KYO-KARA会計専門学校』と題されたその下の、『大阪校』の文字が輝いていた。

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