第3話(1) 新クラス
「みんな、簿記試験お疲れ様でした。この情報SEクラスを受け持つ上田弘樹です」
教壇で、前髪を上げてはつらつとしたスーツ姿の、若い男性教員が挨拶をした。
6月の上旬――簿記試験の終わった亜希の学校では、履修コースを基にクラスが再編され、亜希も新たな教室で見知らぬクラスメートたちに囲まれていた。
「いよいよ皆さんの専攻である『情報処理』の勉強が始まります。10月の情報処理試験に向けて頑張りましょう」
《簿記の先生とくらべてえらい落ち着いた先生やな。やる気あるんか?》
亜希は無難な挨拶をした担任に頬杖を付いた。
簿記クラス時代の強烈な教員陣にすっかり慣らされた亜希は、もはや普通のテンションの教員では満足できない身体となっていた。
「じゃー廊下側から自己紹介しよかー」
「えっと…」
キーンコーン。
「なーなー」
自己紹介を終えた後の休み時間。
亜希が後ろからぽんぽん、と叩かれて振り返ると、金髪でぱっちりとした吊り目のかわいい女の子が、亜希にニコっと人懐っこい笑顔を向けていた。
「えっと……『宮西さん』?」
亜希は先ほど自己紹介で聞いた名前を思い出した。
タンクトップの上に肩の開いたカットソーをゆるっと着て、アンティークゴールドの装飾の付いた革紐のネックレスをぶら下げている。ちょっとギャルっぽい感じの女の子だ。
「『アヤカ』でええよー。『亜希』って呼んでいい?」
「…うん」
亜希は彼女の、甘えたようなのんびりしたイントネーションの関西弁を聞きながら、また自分にぽんぽんと触れる手に視線を落とした。…スキンシップの多い子らしい。
「仲良うしよなぁー。でも女子ってうちらしかおらんねー。やっぱコンピューターコースって感じ」
残念そうにクラスを見回すアヤカに、亜希もぐるっと教室に目をやった。
メガネ、
チェック、
チェック、
メガネ……
ギャルっぽいアヤカだけでなく、前髪を簡単に分けて白Tに黒パンツを合わせただけの自分ですらちょっと浮きそうなほど、見事にテレビや漫画でよく見る理系男子ばかりだ。
《うお、みんな真面目そう……でも、そんなクラスに似つかわん――》
亜希は二人の男子にチラっと目をやった。
他のクラスメートと楽しそうに談笑するチャラ男風の茶髪イケメンと、腕を椅子の背にだらりと掛けて一人退屈そうに座るしょうゆ顔のイケメン――二人のイケメンが、クラスの中で目立っていた。
「…」
「どしたん亜希、気になる男子でもおったぁ?」
二人のイケメンを見つめる亜希を見て、アヤカが何か勘違いしていた。




