「冬の朝市」
1 まだ暗いうちに
ある冬の早朝。
まだ空がうっすら青みを帯びたばかりのころ、美咲と女の子はマフラーを巻き、ベルたちと一緒に外へ出た。
「今日は朝市の日だよ」
美咲の言葉に、女の子は目を輝かせた。
吐く息が白く立ちのぼり、空気はしんと冷たい。
ベルは勢いよく歩き、チャイは雪の残る道を駆け回り、モカはそのあとを追う。
リクは落ち着いた足取りで歩き、ユキは屋根の上を渡るようにしてついてきた。
2 にぎわう通り
広場に着くと、冬の朝市が始まっていた。
まだ早い時間なのに、人々の声と笑いであふれている。
野菜や果物が並び、大根や白菜が白い息を吐くように霜をまとっている。
焼き芋の香ばしい匂いがあたりに漂い、女の子は思わずお腹を押さえた。
「いいにおい……!」
ベルも鼻をひくひくさせ、チャイとモカは尻尾を振り、リクは静かに目を細めた。
ユキは少し離れた場所から、香りを確かめるようにじっとしていた。
3 人との出会い
「おや、先生!」
顔なじみの八百屋さんが声をかけてきた。
「動物たちも一緒かい。ほら、白菜の葉っぱを少しおまけしてあげよう」
ベルはうれしそうに尾を振り、チャイとモカはぴょんぴょん跳ねる。
リクは静かに受け取り、ユキは少し距離を置いたまま、でも目はやさしく光っていた。
女の子も「ありがとうございます!」と頭を下げる。
人と動物たちが一緒に笑顔になる、そんな温かな時間が広がっていた。
4 焼き芋のひととき
広場の片隅で、美咲は女の子に焼き芋を一つ買ってやった。
熱々の芋を半分に割ると、湯気がふわっと立ちのぼる。
「わぁ……!」
女の子はふうふう吹きながら口に運び、目を細めた。
ベルはおすわりをしてじっと見つめ、チャイとモカは足元をくるくる回った。
リクは落ち着いたまま少しだけおすそわけをもらい、ユキは端のほうをそっと口にした。
冷たい空気の中で食べる焼き芋の甘さは、格別だった。
5 帰り道
朝市をひとまわりして帰るころには、太陽が高くなり、街も明るく照らされていた。
女の子は両手に荷物を抱えながら、にこにこと笑っていた。
「また来ようね!」
その声に、ベルが吠え、チャイとモカがはしゃぎ、リクが静かにうなずいた。
ユキは屋根の上からその様子を見守りながら、尻尾をゆっくり揺らした。
冬の朝市は、寒さを忘れるほど温かな思い出をみんなに残してくれた。




