「冬の朝もや」
1 白い朝
冬のある朝。
病院の外に出ると、一面に白いもやが立ちこめていた。
昨日の夜の冷え込みと朝の陽射しがつくり出した、淡い霧だった。
「わぁ……なんだか夢の中みたい」
女の子が小声でつぶやくと、ベルが首をかしげながら鼻をひくひくさせた。
チャイは落ち葉の上を駆け回り、霧の中に消えては現れる。
モカは心配そうに後を追いかけ、まるでかくれんぼをしているようだ。
リクは落ち着いた足取りで霧の中を歩き、静けさを楽しんでいる。
ユキは塀の上に飛び乗り、霧に包まれながら姿をぼんやりと浮かび上がらせた。
2 霧の散歩道
裏の小道に出ると、木立が霧に隠れて幻想的な姿になっていた。
普段と同じ道なのに、まるで知らない世界を歩いているようだ。
「すごい……なんだか冒険してるみたい!」
女の子の声が霧に吸い込まれ、少し響いて返ってくる。
ベルはその声を追いかけるように駆け出し、チャイは前へ前へと進もうとする。
モカは慎重に足元を確かめ、リクは静かに耳を立てて遠くの音を拾っていた。
ユキは霧の中で姿を消したかと思えば、また別の場所に現れる。
3 小さな出会い
霧の中で、小鳥の群れが木の枝にとまっていた。
羽に霧のしずくをまとい、光を浴びてきらりと輝いている。
「かわいい……」
女の子が息をのむと、ベルは吠えそうになったが、美咲に制されて静かに座った。
チャイは目を丸くして見上げ、モカは「驚かせちゃだめ」と小声でたしなめる。
リクはその光景を穏やかに見守り、ユキはしっぽをゆっくり揺らしていた。
小鳥たちはしばらく枝で羽を震わせたあと、一斉に霧の空へと飛び立っていった。
4 霧が晴れて
時間がたつと、少しずつ霧が薄れていった。
木々の間から光が差し込み、白い世界が少しずつ消えていく。
「さっきまで全然違う場所みたいだったのに……」
女の子は振り返り、同じ道がすっかり元の姿に戻っていることに驚いた。
ベルは尻尾を振り、チャイは「もう一回霧に会いたい!」とばかりに前足を跳ねさせる。
モカは苦笑し、リクは静かに頷いた。
ユキは高い枝から、霧の最後の名残をじっと眺めていた。
5 病院に戻って
病院に帰ると、窓から差し込む光で室内が明るくなっていた。
ベルは毛布の上に飛び込み、チャイとモカはまだ霧のことを話しているように鳴き合った。
リクはストーブのそばで伏せ、ユキは窓辺でしっぽを丸めた。
女の子は美咲のそばに座り、ぽつりとつぶやいた。
「霧って、ほんとに不思議だね。なくなっちゃうけど……すごくきれいだった」
美咲は「そうだね」と微笑み、動物たちの穏やかな姿を見守った。
冬の朝もやは消えてしまったけれど、その静かな余韻はみんなの心に残っていた。




