「凍った朝の散歩」
1 氷のきらめき
冬の朝。
病院の庭に出ると、地面は霜で真っ白に覆われていた。
昨夜の冷え込みで水たまりは薄い氷に変わり、朝日を受けてガラス細工のように光っている。
「わぁ……キラキラしてる!」
女の子がしゃがみ込み、氷をそっと指で触れた。
パリッと音を立てて割れると、ベルが驚いたように首をかしげる。
チャイは興味津々で前足を突っ込み、モカは「こら、濡れるでしょ!」と慌てて止めた。
リクは氷の割れた破片を眺めながら、鼻先で軽く押して音を確かめていた。
ユキは木の枝の上から静かにその様子を見下ろし、冷たい空気を胸いっぱいに吸い込んでいた。
2 凍った小道を歩く
美咲がリードを持ち、みんなで裏の小道を歩き出した。
道の両端には霜柱が立ち、踏みしめるとザクザクと音が響く。
「面白い音!」
女の子は嬉しそうにわざと踏んで歩いた。
ベルも真似をして駆け回り、チャイとモカも競うように足元を鳴らした。
リクは一歩ずつ確かめるように歩き、ユキは石垣の上をすいすいと進んでいく。
3 冬の畑
散歩道の途中、冬野菜の畑が広がっていた。
霜をまとった葉っぱが朝日に照らされ、白銀の模様を描いている。
「ブロッコリーもキャベツも、寒さに負けないんだね」
美咲がつぶやくと、女の子は「がんばってるんだ!」と元気に答えた。
ベルはキャベツの葉の匂いを嗅ぎ、チャイは霜のついた葉をかじろうとしてモカに止められる。
リクは遠くの畑を見渡し、ユキは畦道に座り込んでひなたぼっこを楽しんでいた。
4 凍った川辺
さらに歩くと、小さな川に着いた。
水面の端は氷で覆われ、流れる水と凍った部分が不思議な模様を描いている。
ベルは氷の上に足をのせそうになり、慌てて美咲に引き戻された。
チャイは氷をつつこうとして滑り、モカは必死にしっぽをつかんだ。
リクは安全な岸辺でじっと水の音を聞き、ユキは高い枝から川全体を眺めていた。
女の子はその光景に目を輝かせ、
「冬の川って、生きてるみたいに見えるね」とつぶやいた。
美咲は「ほんとだね」と笑い、しばらく流れを一緒に眺めた。
5 太陽のぬくもり
時間が経つにつれ、太陽が高くなり、凍った景色が少しずつ溶け始めた。
霜柱はしずくとなって土に染み込み、氷の川面もきらめきながら崩れていく。
「朝と全然違うね」
女の子が振り返ると、ベルも尻尾を振って賛同した。
チャイとモカはまだ遊び足りず、落ちてきた氷の破片を追いかける。
リクは穏やかなまなざしで日差しを浴び、ユキは目を細めて木の上でうとうとし始めた。
6 帰り道と病院のぬくもり
帰り道、みんなの吐く息が白く並び、笑い声と一緒に空に消えていった。
病院に戻ると、ストーブの火が赤々と燃えていた。
ベルは毛布の上に飛び込み、チャイとモカは寄り添って丸くなった。
リクは窓辺に落ち着き、ユキは高い棚に登ってしっぽを丸めた。
女の子は小さな声でつぶやいた。
「氷も霜もきれいだったけど……やっぱりみんなといるともっとあったかいね」
その言葉に、美咲も微笑んだ。
冬の朝の冷たさと、病院の中のぬくもり。
その対比が、今日の一日をいっそう特別なものにしていた。




