「冬の星空」
1 日暮れの支度
その日の午後、診察が終わるころにはすっかり空が赤く染まっていた。
冬の夕暮れは早く、病院の周りもあっという間に薄暗くなっていく。
「今日は空気が澄んでるから、きっと星がきれいに見えるよ」
美咲が窓をのぞきながら言った。
女の子は目を輝かせ、「じゃあ、夜になったらみんなで見よう!」とベルに抱きついた。
ベルは嬉しそうに尻尾を振り、チャイとモカもその輪に飛び込む。
リクは静かに瞬きをし、ユキは窓辺で外の空を見つめていた。
2 夜空の下へ
夕食を終え、病院の庭に出ると、そこには澄み渡った夜空が広がっていた。
冷たい空気の中、星々が凍りついた宝石のようにきらめいている。
「すごい……こんなにたくさん!」
女の子は思わず声を上げた。
ベルは雪の上を駆け回りながら時折空を見上げ、
チャイは「落ちてこないかな?」とばかりにぴょんぴょん跳ねる。
モカは「落ちてきたら困るでしょ!」とすぐ横で突っ込みを入れた。
リクは落ち着いて座り、まるで星を数えているかのように空を見上げていた。
ユキは屋根に登り、一番高い場所から冬の星空を見下ろしている。
3 星座を探して
「ほら、あれがオリオン座だよ」
美咲が空を指差すと、女の子も真似をして目を凝らした。
三つ並んだ星が冬の夜を鮮やかに飾っている。
「ほんとだ! リボンみたい!」
女の子の表現に美咲も思わず笑った。
ベルは飼い主の仕草を真似するように鼻を空に向け、
チャイとモカはその姿を見てまたじゃれ合う。
リクは静かに耳を動かしながら、遠くで響く風の音を聞いていた。
ユキは月明かりの中でシルエットになり、まるで夜空の一部のように佇んでいる。
4 願いごと
流れ星がひとすじ、夜空を駆け抜けた。
「見えた!」
女の子が声を上げ、ベルも吠えて賛同する。
「お願いごと、した?」
美咲が尋ねると、女の子は少し考えてから言った。
「みんながずっと元気でいられますように」
その言葉に、ベルは尻尾を振り、チャイとモカは顔を見合わせて頷くように鳴いた。
リクは女の子の足にそっと体を寄せ、ユキは屋根の上から小さく「にゃあ」と返した。
5 静かな時間
しばらく庭に座り込み、星空を見上げ続けた。
冷たい空気の中でも、不思議と心は温かい。
女の子はベルの背中に寄りかかり、チャイとモカは毛布にくるまって丸くなった。
リクはそのそばで静かに伏せ、ユキは高いところから仲間たちを見守っていた。
「こうして見ると、星ってまるでみんなの目みたいだね」
女の子の言葉に、美咲は「そうだね」とやさしく笑った。
6 病院に戻って
やがて冷え込みが強まり、美咲は「そろそろ中に戻ろうか」と声をかけた。
みんなで病院に戻ると、ストーブの火がパチパチと音を立てていた。
ベルは女の子の膝に頭をのせ、チャイとモカは寄り添って眠り、
リクは静かにまぶたを閉じ、ユキは窓辺で外の星を見続けていた。
外の世界ではまだ星々がきらめいている。
その光は、動物病院で過ごす一日の終わりをやさしく照らしていた。




