「冬木立の散歩道」
1 朝の冷気
冬の朝、病院の庭には霜が降りていた。
昨日の雪はすっかり溶け、地面はまだ少し湿っている。
それでも空気は透き通るように澄んでいて、遠くの山並みまでくっきりと見えた。
「今日はいいお天気だね」
美咲が言うと、ベルが元気よく吠えて応えた。
女の子も笑顔で「お散歩行こう!」と手を伸ばした。
2 冬木立の道へ
病院の裏には、小さな林を抜ける散歩道がある。
葉を落とした木々が空に向かって枝を伸ばし、冬の光を細かく通している。
道の両側には落ち葉がまだ残り、踏みしめるたびにサクサクと心地よい音が響いた。
ベルは先頭を元気よく走り、チャイとモカは競争するように後を追う。
リクは落ち着いた足取りでその後ろを歩き、ユキは少し離れて静かに周囲を観察していた。
「わぁ、木の影が長い!」
女の子は雪のない地面に伸びる自分たちの影を見てはしゃいだ。
3 林の小さな発見
途中でチャイが立ち止まった。
枯れ枝の下から小さな芽が顔を出していたのだ。
「もう春の準備してるんだね」
美咲がそっと触れ、女の子も「すごい!」と目を輝かせた。
ベルは鼻をひくひくさせて周囲を探検し、モカは「もう行こうよ」とせかす。
リクは静かに芽を見守り、ユキは枝の上から仲間たちを見下ろしていた。
4 小川のせせらぎ
林を抜けると、小さな小川が流れていた。
雪解け水が加わったのか、いつもより少し勢いがある。
澄んだ水面には冬の青空が映り、鳥たちが時折水を飲みに降りてきた。
ベルは水際でじゃれ、チャイは前足を浸して冷たさにびっくり。
モカは「やめなさいってば!」と慌てて引っ張る。
リクは水の匂いを確かめてから、そっと飲んだ。
ユキは石の上で静かに座り、水の流れを目で追っていた。
5 ベンチでひと休み
小川のそばには古い木のベンチがある。
そこに腰かけると、冷たい空気とせせらぎの音が心地よく響いた。
女の子はベルを抱きしめて頬を寄せる。
チャイとモカは寄り添って丸まり、リクは足元で伏せていた。
ユキは少し離れた高い枝にとまり、周囲を見渡している。
「冬って静かだけど、すごくきれいだね」
女の子の言葉に、美咲は頷いた。
「うん。こうしてみんなと一緒にいると、寒さも悪くないなって思えるね」
6 帰り道
太陽が高くなると、林の中にも光が差し込んだ。
影が短くなり、落ち葉の色も少し鮮やかに見える。
ベルはまだ元気いっぱい、チャイとモカは遊び疲れて少し大人しくなった。
リクは最後まで落ち着いた足取りで歩き、ユキは風に乗るように枝から枝へと移っていた。
「また来ようね」
女の子がそう言うと、動物たちはそれぞれに応えるように動いた。
ベルは尻尾を大きく振り、チャイは前足を跳ねさせ、モカは小さく鳴いた。
リクはゆっくり瞬きをし、ユキは枝の上から一声「にゃあ」と響かせた。
7 病院へ戻って
病院に帰ると、ストーブの火が赤々と燃えていた。
冷えた体を温めながら、みんなは安心したように居場所に落ち着いた。
ベルは女の子の膝で丸まり、チャイとモカは一緒に毛づくろい。
リクは窓辺で静かに休み、ユキは高い棚から外を眺めていた。
外では木立が夕陽に染まり、冬の一日が静かに終わろうとしていた。




