「雪待ちの空」
1 曇り空の朝
ある朝、病院の窓から外を見ると、空はどんよりとした灰色に覆われていた。
冷たい風が頬を刺し、今にも雪が降りそうな気配が漂っている。
「先生、今日降ると思いますか?」
美咲がマフラーを直しながら訊ねる。
「どうだろうな。けど、この空は……雪を待ってるみたいだな」
女の子は耳当てをつけて外に飛び出し、ベルと一緒に空を見上げた。
2 動物たちの反応
リクは落ち着いた様子で庭を一巡し、空気の匂いを確かめるように鼻をひくつかせる。
「雪の匂いがするのかな?」と女の子が尋ねると、リクは小さく尻尾を振った。
チャイは走り回って風に煽られ、耳をパタパタさせて大はしゃぎ。
モカはすぐに帰ろうと促すが、結局引きずられる形で庭をもう一周する羽目になった。
ユキは縁側に座り、じっと空を眺めている。灰色の雲と、その隙間から覗くわずかな光。
まるで雪が降る瞬間を待ち構えているようだった。
3 病院の中の時間
外の寒さに比べて、病院の待合室は薪ストーブのおかげで温かい。
ストーブの前ではベルが丸まり、女の子が膝掛けをかけてあげていた。
リクは静かに横になり、チャイとモカは毛布を取り合いして遊んでいる。
美咲はその様子を笑いながら見つつ、診察の準備を進めていた。
「雪が降ったら、外で遊べるね」
女の子がそう言うと、ベルは耳をぴくりと動かして尻尾を振る。
まだ降っていない雪にまで、もう心が弾んでいるようだった。
4 雪を待ちながら
昼過ぎになっても空は灰色のまま。
外を歩く人々も「そろそろだね」と話しながら足早に通り過ぎていく。
動物たちも落ち着かない様子で窓辺に集まり、外の空を見つめていた。
「ほんとにみんな、雪を待ってるみたいだな」
そう言うと、美咲も「なんだかそわそわしてきますね」と微笑んだ。
5 夜の静けさ
夕方になり、ついに小さな白い粒がひとつ、窓ガラスに舞い落ちた。
女の子が「雪だ!」と声を上げると、ベルもチャイもモカも一斉に外を見上げる。
だが、それきり雪は続かず、また灰色の空に戻ってしまった。
「ちょっとだけ、挨拶に来たのかもしれないな」
そう言って笑うと、女の子も「また明日かな」と頷いた。
夜が更け、病院は静けさに包まれる。
雪を待ち望む気持ちが、動物も人も同じように胸の中に広がっていた。




