「初霜の朝」
1 冷たい気配
朝、病院の玄関を開けると、空気が一段と冷たくなっていた。
吐く息は白く、地面はうっすらと白く光っている。
「先生! 見てください!」
美咲の声に振り向くと、庭の草の上に霜が降りていた。
霜柱が土を持ち上げ、きらきらと光っている。
「初霜か……もう冬が近いな」
2 動物たちの驚き
ベルが庭に飛び出し、霜柱を踏んでカリカリと音を立てた。
「なんだこれ?」と言わんばかりに首をかしげ、前足で何度も踏んでいる。
女の子も「サクサクしてる!」と大喜びで飛び跳ねた。
リクは霜柱の道をゆっくり歩き、感触を確かめるように足を運ぶ。
その落ち着いた姿に、ベルが真似をしようとするが、結局はしゃぎすぎて転がってしまった。
チャイは冷たい霜に足をつけて「ひゃっ」と鳴き、すぐにモカの背中に隠れる。
モカは「仕方ない子ね」という顔をしつつ、自分も慎重に足を運んでいた。
ユキは草の上に座り、冷たい地面をしばらく眺めたあと、前足で霜を掻き分け、何か面白いものが出てこないか探していた。
3 霜の中の発見
美咲がしゃがんで、霜に覆われた落ち葉を手に取った。
「ほら、葉っぱの形がくっきり残ってますよ」
透けるような氷の縁取りが、紅葉した葉を飾っている。
女の子はそれを大事そうに両手で受け取り、ベルに見せた。
ベルは興味津々で匂いを嗅ぎ、くしゃみをして葉を落としてしまった。
「もう!」と女の子は笑い、落ち葉を拾い直す。
チャイは霜柱を掘って遊び始め、モカが必死に止める。
「足が冷たくなるわよ!」
それでもチャイはやめず、鼻先まで白くして遊んでいた。
4 温かな朝食
冷え込む庭から戻り、病院のキッチンで温かい朝食を囲んだ。
テーブルには湯気の立つスープと焼きたてのパン。
ベルは女の子の隣でパンのかけらをもらい、リクは静かにスープの具を味わった。
チャイとモカは器の中のフードに夢中で、ユキは窓辺に座りながら外を眺めている。
霜で白くなった庭が、少しずつ朝陽に溶かされていくのをじっと見ていた。
「冬が来るんですね」
美咲がそうつぶやくと、部屋の中の空気が一層あたたかく感じられた。
5 冬の始まり
診察が始まる頃には、庭の霜もすっかり消えていた。
だが、ひんやりと澄んだ空気はそのまま残り、季節の移ろいを告げている。
「これからもっと寒くなるね」
女の子がベルを抱きしめながら言う。
ベルは幸せそうに尻尾を振り、リクは静かに目を細めた。
チャイとモカは寄り添い、ユキは一人日向に座っていた。
こうして動物病院の冬は、初霜とともに静かに始まった。




