「秋の味覚・ぶどうの時間」
ぶどうの差し入れ
ある秋晴れの日の午後。
常連の飼い主さんが、大きなかごいっぱいのぶどうを抱えて病院にやって来た。
「先生、畑で採れたんです。みんなでどうぞ!」
紫に輝く巨峰と、黄緑色のシャインマスカット。
待合室に広がる甘い香りに、思わず美咲が歓声を上げた。
「わあ……まるで宝石みたいですね!」
動物たちの反応
ベルは鼻をひくひくさせて「食べたい!」と目を輝かせる。
女の子が「でも犬はそのままは食べられないんだよ」と説明し、少し残念そう。
リクは落ち着いた表情で座り、匂いを確かめてから静かに横を向いた。
チャイは袋に顔を突っ込もうとし、モカにすぐ叱られる。
ユキは窓辺に座り、香りを楽しむように目を細めていた。
「動物たちにはブドウは危険だから、今日は飼い主さんと私たちで味わいましょう」
そう言って私はぶどうをきれいに洗い、みんなに配った。
味わう秋
子どもたちは巨峰を口に入れて「甘い!」と叫び、
美咲はマスカットを食べて「爽やかですね」と笑顔を見せた。
ベルは女の子の手元をじっと見つめ、リクはその様子を眺めている。
チャイは「ズルい!」と吠えて、モカに首根っこを押さえられた。
ユキはどこか誇らしげに、静かに毛づくろいをしていた。
ちょっとした工夫
動物たちには、ぶどうの代わりに特製おやつを用意した。
甘さを抑えたサツマイモのクッキーだ。
ベルは大喜びでかじり、リクはゆっくり噛みしめる。
チャイは一瞬で平らげ、モカがため息をついた。
ユキは少しずつ味わい、満足げに喉を鳴らした。
秋の夕暮れ
みんなでおやつを楽しんだあと、外を見ると夕陽が田んぼを染めていた。
黄金色に揺れる稲穂の上に、秋の風がすっと吹き抜ける。
「夏はにぎやかだったけど、秋は少し落ち着きますね」
美咲が微笑む。
私は頷きながら、動物たちと人の笑顔を眺めた。
小さな実が甘く実るように、この病院での日々も少しずつ色づいていくのだと思った。




