「窓辺の花火大会」
夏の夜
八月の最後の土曜日。
病院の近くで毎年恒例の花火大会が開かれる日だった。
昼間の診察を終えたあと、私は窓辺をきれいに拭き、美咲は椅子やクッションを並べていった。
「ここからならちょうど花火が見えますね」
美咲がうれしそうに言う。
待合室がちょっとした特等席に変わっていった。
集まる仲間たち
夕方になると、常連の飼い主と動物たちが次々にやってきた。
ベルと女の子は浴衣姿で登場。
リクは落ち着いた足取りで、美咲に寄り添って座る。
チャイはわくわくしてリードを引っ張り、モカは仕方なくついてくる。
ユキはキャリーから出て、窓辺の一番いい場所に優雅に座った。
みんなで冷たい麦茶やジュースを分け合い、花火の始まりを待った。
大輪の花
夜八時、最初の大きな音とともに空に光が広がった。
「わあ!」と子どもたちが声を上げる。
ベルは最初少し驚いたが、すぐに尻尾を振って窓に鼻を押しつけた。
リクは耳を動かしながらも落ち着いて花火を見ている。
チャイは吠えながらも興奮気味に跳ね回り、モカが「静かにしろ」とにらむ。
ユキは瞬きを一つして、夜空に咲く光をじっと見つめていた。
次々に打ち上がる大輪の花。
赤、青、金、銀――窓越しでも胸に響くほどの美しさだった。
みんなの表情
女の子はベルを抱きしめながら「きれいだね」と笑顔。
リクの飼い主は「リクと一緒に花火を見るのは初めてだ」と目を細めていた。
チャイとモカの飼い主夫婦は、落ち着かない2匹をなだめながらも笑っている。
ユキの飼い主は「こういうのも悪くないね」とつぶやき、ユキの背中を撫でた。
それぞれが花火と動物と向き合いながら、夏の夜を分かち合っていた。
フィナーレ
クライマックス、夜空に一斉に花が咲く。
ドドン、ドドンと胸に響く音。
窓の外は光の雨が降るようで、みんな言葉を失った。
やがて音が遠のき、静けさが戻る。
ベルは大きなあくびをし、リクは静かに横になった。
チャイはまだ興奮気味で尻尾を振り、モカが疲れた顔をしていた。
ユキは涼しい顔で毛づくろいをしている。
夏の終わり
帰り際、美咲が小さくつぶやいた。
「夏も、もうすぐ終わりですね」
私は頷いた。
花火の余韻と動物たちのぬくもりが、静かに心に残っていた。




