「真夏のスイカ」
朝 夏の暑さのはじまり
七月のある日。
朝からじりじりとした日差しが病院の屋根を照らしていた。
「今日は真夏日になりそうですね……」
美咲が汗をぬぐいながら言った。
私は冷蔵庫を開け、中に冷やしておいた大玉のスイカを取り出す。
「午後にみんなで食べましょう。暑さを和らげるには、やっぱりスイカです」
美咲の顔がぱっと明るくなった。
待合室のざわめき
午前中の診察の合間、待合室には常連たちが集まっていた。
ベルと女の子は「今日はスイカ食べるんだって!」と元気いっぱい。
リクは静かに伏せているが、女の子の声に耳を動かした。
チャイは「食べる!」とばかりに鼻をひくひく、モカは落ち着いた表情で座っている。
ユキは涼しい顔で窓辺に座り、夏の日差しを眺めていた。
「動物たちの反応、楽しみですね」
美咲が笑った。
午後 庭でのスイカ割り
昼下がり、庭にブルーシートを広げ、大きなスイカを置いた。
子どもたちが「スイカ割りだ!」と目を輝かせる。
「じゃあ目隠しして……」
最初に挑戦したのは女の子。
ベルが横で興奮して吠え、リクはじっと見守る。
チャイは近づこうとしてモカに止められていた。
女の子が棒を振り下ろすと――
「ぱかん!」と見事にスイカが割れた。
歓声があがり、あたりに甘い香りが広がった。
犬たちとスイカ
切り分けたスイカをみんなに配ると、それぞれの反応が面白かった。
ベルはシャクシャクと勢いよく食べ、顔が果汁でべとべとに。
リクはゆっくりと噛みしめ、静かに味わっていた。
チャイはがっつきすぎて種まで食べそうになり、慌てて止められる。
モカは一口かじって「まあ悪くない」といった表情。
ユキはそっと口をつけ、甘い部分だけを上品に食べていた。
子どもたちも大人たちも、その様子に笑い声を上げた。
夕方 残り香と涼しさ
スイカを食べ終わったあと、庭には涼しい風が吹いていた。
ベルは満足そうに横になり、リクは木陰でうとうと。
チャイはまだ「もっと!」とねだり、モカが呆れていた。
ユキは夕陽の中で静かに座り、遠くを見ていた。
「夏の暑さも、こういう時間があれば乗り越えられますね」
美咲が笑顔で言った。
私はうなずいた。
スイカの甘さと笑顔が、暑さをやさしく和らげてくれた一日だった。




