「イースターの白いうさぎ」
朝 小さな来訪者
四月の終わり。
春の光に包まれた朝、病院の玄関に小さなキャリーを抱えた親子がやってきた。
キャリーの中には、ふわふわの白いうさぎ。
赤い目をきょろきょろと動かし、耳をぴんと立てている。
「この子、昨日からごはんをあまり食べないんです」
母親が心配そうに話す。
子どもはキャリーをそっと撫でながら「大丈夫だよ」と声をかけていた。
「ちょうどイースターにやってきたんですね」
美咲が微笑む。
この季節に現れた白いうさぎは、まるでお祝いの使者のように見えた。
待合室のざわめき
待合室に入ると、常連たちが集まっていた。
ベルと女の子は「わあ、うさぎさんだ!」と大はしゃぎ。
ベルは興味津々でキャリーを覗き込み、女の子は「イースターのうさぎだね!」と声を上げた。
リクは静かに距離を取り、優しく見守るように座った。
チャイは大興奮で鼻を押しつけそうになり、モカが慌てて制止する。
ユキは凛としたまなざしで、白いうさぎをまるで歓迎するかのようにじっと見つめていた。
待合室は一気に華やいだ空気になった。
診察と安心
診察室でうさぎをキャリーから出すと、ふわふわの毛が光を受けて輝いた。
体重を測り、口やお腹の状態を確認する。
「少し胃腸の動きが弱っているだけですね。すぐに回復するでしょう」
薬と食事の指導を伝えると、母親はほっとした表情になった。
「ほら、大丈夫だって」
子どもが安心した声をかけると、うさぎは小さく鼻を動かして答えたように見えた。
イースターのお祝い
診察を終えたあと、待合室では自然に「イースター」の話題になった。
「卵に絵を描いて飾るんだよね」
女の子が得意げに言うと、他の子どもたちも自分の家の卵飾りを自慢し合った。
「イースターのうさぎは幸せを運んでくるんだって」
美咲が言うと、みんなの視線が白いうさぎに集まった。
ベルは鼻を近づけ、リクは静かに見守り、チャイは落ち着かず、モカが苦笑していた。
ユキは変わらずじっと見つめ、その姿がどこか神聖に見えた。
昼下がり 小さな奇跡
外に出ると、庭に春の花が咲き乱れていた。
子どもたちは卵型の紙を持ち寄り、色とりどりの絵を描き始める。
「ベルは青が似合うね」
「リクは緑かな」
「ユキは白だね」
誰かが「このうさぎにはピンクだ」と言って飾ると、うさぎが鼻をひくひくさせた。
その仕草に子どもたちが笑い、飼い主たちも笑顔になった。
まるで小さな奇跡が、病院の庭で起きているようだった。
夕方 帰り道の足音
母親と子どもが白いうさぎを抱えて帰るとき、ベルが吠え、リクが静かに見送り、チャイとモカが駆け回り、ユキが夕陽の中で静かに立っていた。
「また元気になって会いに来てね!」
女の子が手を振ると、うさぎは小さく耳を動かして答えたように見えた。
夜 イースターの余韻
祭りの喧騒が去った夜、病院には静けさが戻っていた。
美咲がイースターの卵を小さく描いて飾り、「なんだか幸せな気分ですね」と言った。
白いうさぎが運んできたのは、ただの診療だけではなく、人と動物が一緒に分かち合える小さな喜びだったのかもしれない。




