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動物病院日誌   作者: 匿名希望


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「ちいさな春祭り」

朝 準備のにぎわい


五月のやわらかな風が吹く日曜日。

今日は病院の庭で、地域の人たちと一緒に小さな春祭りを開くことになっていた。


「先生、飾りつけ終わりました!」

美咲が色とりどりの紙飾りを取り付けながら笑顔を見せる。

玄関には小さなちょうちんがぶら下がり、庭には手作りの屋台が並んでいた。


屋台といっても本格的なものではなく、地域のお母さんたちが持ち寄った焼き菓子や、子どもたちが作った工作品など。

それでも庭いっぱいに広がる光景は、まるで小さな縁日そのものだった。


午前 動物たちの登場


祭りが始まるころ、まずやってきたのはベルと女の子。

女の子は浴衣を着て、ベルにはかわいい花柄のバンダナ。

「お祭りだからおめかししたんだよ!」

その姿に周りの人たちが「かわいい!」と声を上げる。


リクと加藤さんはゆっくりと到着。

「こうしてにぎわうのはいいものですね」

リクは人混みの中でも落ち着いていて、子どもたちに優しくなでられていた。


チャイとモカも元気いっぱいで登場。

チャイは屋台を見て大興奮し、モカが落ち着かせるのに一苦労。

「食べ物は君のじゃないよ」と加藤さんに笑われていた。


ユキと女性もやってきた。

ユキは静かに歩き、まるで祭りの雰囲気を楽しんでいるように見えた。

その白い姿は、ちょうちんの下でひときわ映えていた。


子どもたちと遊ぶひととき


庭の片隅では、子どもたちが輪投げやヨーヨー釣りを楽しんでいた。

ベルは輪投げの輪をくわえて走り回り、女の子に追いかけられている。

チャイはヨーヨーにじゃれつき、モカが呆れたように見ていた。


リクは小さな子どもが怖がらないように、じっと座って優しく待っている。

「リクくんはさすがね」

加藤さんの言葉に周囲がうなずいた。


ユキは子どもたちが描いた絵の展示の前に座り込み、じっと見つめていた。

「まるで美術館のお客さんみたいだね」

美咲が笑った。


昼下がり 音楽と笑顔


地域の人が持ち込んだ小さな楽器で、即席の演奏が始まった。

笛や太鼓の音が響くと、子どもたちが自然に手拍子を打ち、犬たちも耳をぴくぴく動かしていた。


ベルは楽しそうに吠え、チャイは走り回り、モカはため息をつきながらも尻尾を振っていた。

リクは静かに音楽を聞き、ユキは風に揺れるように目を閉じていた。


音楽と笑顔が重なり合い、病院の庭がひとつの大きな家族のような空気に包まれた。


夕方 祭りの余韻


祭りが終わるころ、庭には夕陽が差し込んでいた。

「楽しかったね!」

女の子がベルを抱きしめる。


「また来年もできるといいですね」

加藤さんの言葉に、みんなが「そうだね」と頷いた。


チャイは最後まで走り回り、モカは疲れたように横になっていた。

ユキは夕陽に照らされながら、静かに立っていた。


夜 灯りが消えたあと


すべての後片付けが終わり、庭が静かになる。

風に揺れる紙飾りを見ながら、美咲が言った。

「お祭りって、人も動物も一緒に笑顔になれるんですね」


私は頷いた。

病院という場所が、治すためだけでなく、集まることで心を元気にできる場所になればいい。

今日の春祭りは、その小さな一歩のように思えた。

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