「こいのぼりの空へ」
朝 青空とこいのぼり
五月のはじめ。
澄んだ青空に、いくつものこいのぼりが泳いでいた。
病院の近くの公園に掲げられた大きなこいのぼりが、風を受けて元気にたなびいている。
「先生、こいのぼり見えますよ!」
美咲が窓から外を指差した。
その姿を見ているだけで、こちらも心が晴れやかになる。
午前 子どもと動物たち
ベルと女の子がやってきた。
女の子は手に小さな紙のこいのぼりを持っていて、ベルの首輪にもミニこいのぼりがついていた。
「ベルと一緒に作ったんだよ!」
女の子の声に、待合室がぱっと明るくなる。
リクと加藤さんも来院。
「おお、今日はこいのぼり日和ですね」
リクは窓から見える空を眺め、風の匂いを深く吸い込んでいた。
チャイとモカは相変わらず元気いっぱい。
チャイは風に舞う紙のこいのぼりを追いかけそうになり、モカがあわてて制止した。
ユキと女性も到着。
ユキは静かに空を見上げ、白い毛が風に揺れていた。
その姿は、こいのぼりと同じように堂々としていた。
待合室での会話
「昔は家の庭にこいのぼりを立てたものです」
加藤さんが懐かしそうに話すと、女の子は「うちにはないけど、ベルと一緒に作ったよ!」と元気に答えた。
「子どもの日って、元気に大きくなりますようにって願いを込めるんですよね」
美咲が言うと、みんなが「そうそう」と頷いた。
動物たちの姿にも、どこか同じ願いが重なる。
病気をせず、毎日を元気に過ごしてほしい――飼い主たちの想いは、空に泳ぐこいのぼりのようにまっすぐだった。
昼下がり 公園へ
診療の合間に、みんなで少しだけ公園へ向かった。
風に揺れる大きなこいのぼりを、子どもも大人も、犬たちも見上げる。
ベルはしっぽを振りながらジャンプし、リクは穏やかに座って眺め、チャイは駆け回り、モカはその後をついて歩いた。
ユキはじっとこいのぼりを見つめ、その姿は凛とした風景の一部になっていた。
女の子はベルと並んで空を指差し、声をあげた。
「ベルも大きくなって、あのこいのぼりみたいに元気いっぱいになるんだよ!」
夕方 帰り道の余韻
病院に戻る途中、こいのぼりが夕陽を受けて赤や青に輝いていた。
「風に泳ぐ姿を見ると、なんだか勇気が湧きますね」
加藤さんがしみじみとつぶやいた。
チャイとモカの奥さんは「うちの子たちも元気に育ってほしいな」と笑顔を見せた。
ユキの女性は「願いは人も動物も同じなんですね」と静かに言った。
夜 空に残る想い
診療が終わったあと、窓を開けると、遠くにまだこいのぼりが見えていた。
夜風に揺れる姿は昼間ほど派手ではないが、どこか落ち着いた力強さがあった。
「みんな元気に、大きくなりますように」
美咲が手を合わせるように小さくつぶやいた。
その願いはきっと、こいのぼりとともに空へ、遠くまで届いていくのだろう。




