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動物病院日誌   作者: 匿名希望


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「小さな来訪者」

午前 突然の羽音


冬の朝、待合室で診察をしていると、窓の外から「コンコン」という音が聞こえた。

美咲が窓を少し開けた瞬間、小さな茶色い影がひらりと舞い込み、待合室をぐるぐると飛び回った。


「わっ、小鳥!」

驚く美咲の声に、待合室にいた飼い主たちが顔を上げる。

ベルは目を輝かせてしっぽを振り、リクは首をかしげ、ユキは静かにその姿を追っていた。


小鳥の休憩場所


小鳥はしばらく飛び回ったあと、受付の上にちょこんと止まった。

茶色い羽に白い模様。どうやらスズメのようだ。


「寒さを避けて入ってきたのかも」

私は小声で言いながら、そっと水皿を置いた。

小鳥は警戒しつつも、やがて水をちょんちょんとついばんだ。


待合室には、思わぬ訪問者を見守るやさしい空気が流れていた。


動物たちの反応


ベルは興奮して前足をバタバタさせ、女の子が必死に抱きしめて「静かにして!」と制していた。

リクは落ち着いて「まあ、珍しいな」という顔。

チャイはキャリーの中から鼻を突き出して騒ぎ、モカは「また始まった…」とあきれたように目を細めていた。


「ユキは平気なんですね」

美咲がつぶやくと、ユキはただしずかに小鳥を見つめ、まるで守っているように見えた。


ひとときの交流


待合室の人々は自然と会話を始めた。


「スズメって、こんなに間近で見ること少ないですよね」

「羽毛がふわふわで、かわいい」

「寒さの中で、よくここにたどり着いたものね」


小鳥は水を飲んだあと、ベルの方へ飛んでいき、女の子の肩にひょいと止まった。

女の子は驚きつつも、うれしそうに笑った。


「ありがとうって言ってるのかも」

美咲がそっとつぶやいた。


夕方 別れの時


夕方になると、小鳥は窓際に飛んでいき、外の雪景色を見つめた。

「帰りたいのかな」

女の子が名残惜しそうに言った。


私は窓を少し開けた。

冷たい風が流れ込むと、小鳥は一度こちらを振り返り、それからふわりと飛び立った。


外の白い空へ、小さな羽音を残して消えていった。


夜 心に残る羽音


診療が終わったあと、美咲が受付の上を見つめて言った。

「ほんの少しの時間でしたけど、あの子のおかげでみんなが笑顔になりましたね」


私は頷いた。

「動物はもちろん、人と人をもつないでくれる。小鳥もその仲間なんだな」


外は静かな夜。

でも心の中では、あの小さな羽音がまだ響いているような気がした。

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